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豪ドル高への強いけん制はみられず

(写真=PIXTA)
(写真=PIXTA)

 豪州の中央銀行である豪州準備銀行(RBA)は4月の金融政策理事会で、市場が予想した通り、政策金利を2.00%に据え置きました。RBAは声明で「追加緩和余地がある」と述べる一方、国内経済に対して前向きな見方を維持しています。当分の間は金利据え置きを続ける可能性が高そうです。

 前回の会合よりも通貨高に対する警戒感が示されたものの、一部で予想されたほどに強いけん制ではありませんでした。2月に開催された上海G20(主要20カ国・地域財務相・中央銀行総裁会議)で「通貨安競争回避で一致」したこともあり、政治的配慮が働いた可能性があると見られます。

 豪ドルの対ドル相場は1月安値からの大幅上昇もあり、戻り売りが上値を抑制するとみられます。しかし、国内要因で売り圧力が下がっており、底堅い展開が続くでしょう。 

RBAは政策金利を据え置き、国内経済に対する前向きな見方を維持

 豪州準備銀行(RBA)は4月の金融政策理事会で、予想通り政策金利を 2.00%に据え置くことを決めました。据え置きは2015年6月以来、10会合連続のことです。RBAは理事会後の声明で、「豪州経済は鉱業投資ブーム一巡後の(資源セクターから住宅・観光等の非資源セクターへの)経済のリバランスが継続している」としました。経済成長のけん引役が鉱業など資源関連の分野から、住宅・観光など資源関連以外に移っているという指摘です。

 また「労働市場の改善をともなって、2015年の豪州経済は上向いた」と 国内経済に前向きな見方を維持しています。実際、最新の雇用統計では失業率は改善しています。

 そのうえで、「理事会は今回の会合で、目標に近いインフレ率を維持しつつ、経済成長が持続すると予想することが合理的と判断した」と述べ、政策金利の据え置きの理由としています。 

インフレや雇用情勢を注視する姿勢を示す

 先行きの金融政策に関しては、「インフレ率に落ち着きがみられるなかで、景気下支えに必要であれば、金融緩和余地がある」と述べ、緩和の方向性であることを維持しています(緩和バイアス)。

 そして、「今後、新しい情報に基づいて、インフレの先行きや労働市場の改善が継続するかどうかを判断していく」と指摘しています。

 前回会合から「インフレの先行き」との文言が加えられています。4/27に2016年1-3月期消費者物価指数の発表が予定されており、この結果を見極めたいという考えがあるのでしょう。 

豪ドル高へ 図1

通貨高への強い懸念は表明せず

 今会合では、前回会合以降に豪ドルが対ドルで6%程度上昇したことから、市場の一部では、「RBAが足元の豪ドル高に対するけん制姿勢を強めてくるのでは」との見方もあり、RBAの為替相場への認識に注目が集まりました。

 この点に関して、RBAは「現在の環境下では、通貨高は進行中の経済の調整(リバランス)を複雑にする可能性がある」と指摘しています。これに対して、前回会合の時は「為替相場は経済見通しの進展に合わせて調整(下落)を続けている」としていました。これらを比べると、今回のほうが豪ドル高への警戒感をいくらか高めていることがうかがえます。

 もっとも、2015年夏ごろにみられた「豪ドルはさらなる下落が必要になる」という直接的な通貨高けん制発言はみられませんでした。

 2月下旬の上海G20で、為替の競争的な切り下げを回避するというスタンスが改めて確認されたことを受けて、政治的な配慮が働いた可能性があるでしょう。今後は、現在の豪ドルの水準がインフレや輸出など、実体経済の向かい風になるかどうかを経済指標等から見極めつつ、追加緩和が必要かどうかを判断するものと思われます。