「2007年以降に日本で生まれた子どもは、107歳まで生きる確率が50%ある」――長くなる人生の戦略的な過ごし方を説いたリンダ・グラットン/アンドリュー・スコット著/池村千秋訳『LIFE SHIFT-100年時代の人生戦略-』東洋経済新報社が話題になったことで、人生100年時代の処方箋への関心が高まっています。これまでのように「教育→仕事→引退」という定型的な3ステップの人生が変わりつつある今、より良い人生を送るために「学び直し」「自分磨き」がキーポイントに。「学び」といっても何から始めれば良いのか、どのような「学び」があるのか、シリーズでお伝えします。
今、注目される社会人の学び場、リカレント教育
人生100年時代が目前に迫っている今、社会に出てからの学び直し(再教育)が不可欠となっています。平均寿命が延び、現役で働ける期間がこれまでより長くなること、AI(人工知能)の活用など私たちを取り巻く環境は著しく変化しています。10代や20代で社会に出るための教育を終え、一つのキャリアやスキルだけで生涯、安心して生きることができるという時代は終焉を迎えつつあるようです。
世の中の働き方や生き方が変わりゆくなか、政府も2017年、「人づくり革命」の一環として「人生100年時代構想会議」を設置、改革の柱のひとつとしてリカレント教育=学び直しを議論しています。
再就職を見据え、リカレント教育を受講する
そんな今、注目されている学び場の一つが日本女子大学(東京都文京区)のリカレント教育課程です。これは育児や進路変更などで離職した女性の再就職支援プログラム。2007年9月に、文部科学省「社会人の学び直しニーズ対応教育推進事業委託」に採択され、「リカレント教育・再就職システム」として開講しました。
対象となるのは4年制大学卒業者で、就業経験がある女性。
「当初は応募された方ほぼ全員を受け入れておりましたが、年々志願者が増え、今年度は募集40名に対し、倍以上の方が出願されました。英語筆記試験、PCテストなどの入学試験を設けています。」と説明するのは、同大学の生涯学習センター所長の坂本清恵氏。

「受講者の多くが大学卒業後、就職したものの結婚や育児、夫の転勤など家庭の事情で離職し、再就職を目指す女性です。年齢は主に20代後半から50代で、直近まで働いていたという方から、20年くらい社会から離れていたという方もいます。全体の1/3が独身・未婚者で、そのほかは既婚者です。」(坂本所長)
教育訓練給付制度(専門実践教育訓練)を活用できる点も人気の理由の一つです。
現場経験のある外部講師による独自カリキュラム
講師群は主に現場経験のある外部講師が担当、ビジネスの場ですぐに実践できる独自のカリキュラムで構成しています。必修科目は一番の目玉であるキャリアマネジメントのほか、英語、ITリテラシー、日本語コミュニケーション論など7科目あり、内部監査やマーケティングなど選択必須科目を提供。スキルの差や得意不得意の違いなど、受講生の学習レベルも考慮した履修科目設定になっています。
図表1 主なカリキュラム
科目名 | 目指せるスキル・資格 |
---|---|
総合英語 | 総合的な英語力 |
ITリテラシー | Excel、Wordによる文書作成・編集 Microsoft Office Specialist・Expert Excel・Access・Webデザイン |
キャリアマネジメント | 実践的な求職スキル 業務におけるコミュニケーション能力 |
日本語コミュニケーション論 | 正しいメール、手紙、ビジネス文書の書き方 |
企業会計入門・初級簿記 | 企業の財務内容を読む力 経理の実務についての知識 |
国際物流・貿易実務 | 貿易実務検定C・B級 |
TOEIC 830 | TOEIC 830点 |
社会保険労務士準備講座 | 社会保険労務士 |
記録情報管理者資格準備講座 | 記録情報管理者2・3級 |
「受講生の多くが既婚者で、子育て中の人も少なくありません。しかし、本課程は再就職を見据えた訓練機関ですので、曜日によって1時限目から必須科目を設けています。それは、就職したときの1日のシミュレーションとして、家族の方にも慣れてもらうため。女性の再就職は家族の協力も大切です」(坂本所長)と女子大ならではの、きめ細かな配慮もうかがえます。
修了要件は1年間で14科目28単位(294時間)が必要。決して、安易ではないがゆえに、“本気度”が高い女性が受講しているのも特徴。「なかには鳥取県や富山県、宮城県・・・と地方から上京し、学びに来ている人達も多くいらっしゃいます。就職決定率は、ほぼ100%。2月に開かれる合同企業説明会の参加企業も、年々増加傾向にあります。」(坂本所長)
次回は、実際に日本女子大学のリカレント教育を受けている受講生にインタビュー。入学したきっかけや動機、感想などをお聞きして、今、学び直しが必要な理由をひもときます。
日経BPコンサルティング 金融コンテンツLab.
吉田明乎
日経BPコンサルティング「金融コンテンツLab.」(https://consult.nikkeibp.co.jp/financial-contents-lab/)は、難しくなりがちなお金の話題を、わかりやすいコンテンツに仕上げることをテーマとして取材・情報発信にあたっている制作研究機関。月刊誌『日経マネー』編集部の在籍経験の長いベテランスタッフが中心となり、マネー系コンテンツを提供している。 |
【学びシリーズの続きはこちら】
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