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ドル円、波乱の幕開け。今後の動きは?

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(写真=Phongphan/Shutterstock.com)

年明け早々フラッシュ・クラッシュ

2019年、ドル円相場は波乱の幕開けとなりました。
日本の金融市場は2018/12/28に年末を迎え、2019/1/4に新年が始まったが、この間、為替市場では土日と1/1を除く、12/31(月)、1/2(水)、1/3(木)も相場が動いていました。日本が休場だった1/3早朝、ドル円は108円台後半から104円台前半まで10分ほどで大幅に下落するフラッシュ・クラッシュ的な急落を演じました。

急落の経緯

そこに至るまでの経緯を簡単に振り返ると、18年12月に入り、米中の貿易摩擦やそれによる景気減速懸念を背景に米株式市場が下落基調をたどり、リスクオフムードが強まっていたこと、加えて、12月終盤にはトランプ大統領がメキシコ国境の壁建設費用を巡って議会と対立し、米政府機関の一部が閉鎖に追い込まれたこと、さらには年末年始の中国経済指標が悪化したことや米電子機器大手が業績見通しの下方修正を行ったこと、などによりリスクオフが加速、ドル円は上記の通り19年入り早々に104円台に急落する動きとなりました。

さすがにやりすぎ?

ドル円の2018年の年間上下値幅は9円台でしたが、12/28から1/3の1週間の値幅は111円台から104円台まで7円近くに達しました。前述の通り、1/3の急落場面では108円台後半から104円台前半まで約4円半の下落を10分ほどで示現しており、さすがにこの値動きは異常と思われます。下落によって外国為替証拠金取引などのストップロスを発動し、損失確定のドル売り円買いが発生したものの、市場参加者が少なく流動性に乏しい相場のなかで、値が飛ぶ展開となったようです。特にトルコリラや豪ドルなどで対円の下落幅が大きくなっている状況をみると、外国為替証拠金取引のストップロスを狙った投機マネーの仕掛け的な動きもあったとみられます。その他、「アルゴリズム取引によるフラッシュ・クラッシュ的なもの」等の解説もきかれますが、少なくとも日米ファンダメンタルズを反映した正常な値動きとはいえない状況となりました。

年序盤の注目は?

さすがに異常な値動きだっただけに、目先は一定の反発が想定されます。ただ、ドル円急落の背景が、世界経済の先行きに対する警戒感であることをふまえれば、世界経済の減速をもたらす可能性が高いイベントの行方を注視する必要があります。特に3月にかけては米中貿易交渉と英国の合意なき欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)に注意したいところです。

年序盤のリスクがその後の動きを大きく左右

実際のところ、4月以降の相場はこれらのリスク次第という部分がかなり大きく、最悪の場合、英国が無秩序離脱に至り欧州経済が大幅に悪化、米国と中国の対立も先鋭化し、両国および世界経済への減速懸念が強まるとともに、世界の株価や資源価格が急落というシナリオもあり得るかもしれません。この場合、米連邦準備理事会(FRB)が緩和に転じる可能性がある反面、日銀の追加緩和余地は小さい。同様に、すでにゼロである本邦金利に比べて米金利の低下余地は大きく、ドル円はさらなるドル安円高を試しに行く可能性が高いと考えられます。

しかし、そこまで悲観的にはみる必要はないでしょう。英下院は離脱協定を可決し、アイルランド国境問題の継続協議を選択すると考えています。米中の摩擦はハイテクや軍事面での対立が続く一方で、貿易面では景気や株価への配慮もあって、ある程度の合意に達することは可能とみています。

1-3月期はもみ合いつつも上値重い動きを想定

ただ、1-3月期にはこれらリスクの動向を見極めようとする動きが強まると予想されます。その結果、為替市場ではリスクが深刻化する場面では安全通貨が買われ、逆に緩和する場面では安全通貨売りとなりやすい。為替市場で安全通貨といえば円やドル、スイスフランなどが代表的です。つまり、リスクが主語となるとドルと円は安全通貨として同じ方向に動きやすく、結果としてドルと円のペアであるドル円は方向感に乏しい展開となるとみられます。現実的には、もみ合いつつもリスクが意識される場面では若干円高が勝る、といった状況になるのではないでしょうか。

年末年始の急激な動きは、日本の休場という特殊要因から起こったものであり、長続きはしないとみています。ドル円の1-3月期の予想レンジとしては、1/3につけた104円を安値として上値は18年12月に抑えられた113円程度をそれぞれ想定しています。

その後、上記のシナリオ通り米中貿易摩擦やブレグジットリスクが後退すれば、夏から秋にかけてドル円は115円水準を目指すような上昇場面をメインシナリオとしています。

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