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「証券界に身を投じたわけ」― 兜町カタリスト櫻井英明のここだけの株話

「なぜ証券に」

そういえば、なぜ私が証券界に棲息するようになったのかと思い返してみました。
きっかけは大学のクラブの1年先輩からの1本の電話。
それも会社訪問解禁日を数日過ぎてからのことでした。
「まだ内定がなかったら、うちの会社受けに来てくれないか」。
体育会系の哀しさで、たとえ1年でも上なら神様。
証券業など全く頭にもなかったのですが、指定された時間に丸の内の本社に面接に行くと、いかにも怖い顔をした役員さんが取って付けたような質問を2つ3つ。
5分後には「では、上の階で健康診断を受けるように」。
瞬間内定みたいなものでした。
振り返ってみれば、この先輩氏は大学1年のときの北海道合宿で同班。
合宿中、時間のあるときに清水一行氏の「小説兜町(しま)」を読んでいました。
小説の舞台は先輩氏が入社し、当方も内定をもらった証券会社。
不思議な縁みたいなものです。
もっとも、入社式の当日の社長訓話。
業界でもモーレツで有名な方でしたが、「君たち新入社員のうちの半分はすぐに辞めるだろう。残りの半分になれるように頑張ってほしい」。強烈な訓示でした。
配属されたのは京都支店。
新人として国債を売りに町を歩き回りました。
あるお宅で、インターホン越しに「国債?そんなもの戦争で負けたら紙くずになる」。
格好良い証券マン生活への夢は一気に崩れ、確かに3日で辞めたくなりました。
しかし、「せめて3ヵ月」と思って頑張り、「せめて3年」と思って続け、最後には結構居心地が良くなって20年あまり。育ててくれた場所になりました。
ちなみに、この先輩氏、営業マンとして全国の支店を回っていましたが、あるとき監査部へ。
「狼がシェリフになりましたね」。
「狼でなければ狼の気持ちはわからないよ」。
そんな会話があったような、なかったような。
つい先日まで、この先輩氏、この証券会社の監査役を務められていました。
清水一行氏の「小説兜町」とか「兜町物語」は今でも逸品だと思います。
古くは獅子文六氏の「大番」なんかも代表的な兜町小説。
松本清張氏は「空の城」で商社を描きましたが、証券が舞台の小説というのも結構面白いものです。

「怖さと寂しさ」

株は買った瞬間に怖くなり、売った瞬間にさびしくなるもの。
買った瞬間に夢が拡大し、売った瞬間に楽になるものではありません。
この投資心理の綾に乗じたシナリオが百鬼夜行するからややこしくなります。
上がれば下がるし、下がれば上がる。
月だって満ちれば欠けるのですから、この自然の節理やリズムを会得しなければなりません。
といっても、そんなに難しいことではありません。
一つは、枝葉を取り除くこと。
日々の移ろいに惑わされないこと。
今日だけを考えるから、ものは見えなくなります。
ゴルフだって手元だけを見ていれば、ティーショットは曲がるし、パターは入りません。
遠くの風景を目標にすることが必要です。
パッティングのときに、カップからボールに視線を移すとラインが見えるような気がします。
フツーはボールからカップへの視線。
それを逆にすることで、見えないものが見えたように思えるから不思議なもの。
株だって同じでしょう。
着地から今へと視点を移せばいいのだと思います。
今から明日への視線ばかりで市場を見るから、見えなくなる気がするもの。
そして、フツーに考えて芯を探すこと。
地球だって太陽を中心に回転しています。
相場だって何か一つの芯を中心に回っている筈。
でも、月が気になるから太陽の動きが見えなくなるのでしょう。
複雑に考えずに単純に考える方が良いでしょう。

株価が上がり始めるまで、市場参加者は見向きもしません。
商いの薄さや、業績の不満足感を漂わせるコメントばかり。
しかし、上がり始めるとマーケットはその銘柄に気がつき始めます。
あちらもこちらも、一気にそのテーマや材料を囃したて、多くの場合は過熱感満載。
そして信用規制が入り、一旦、相場は終焉。
でも、本物はここで押しても信用規制などお構いなし。
「我こそは、テンバガー」と糸の切れた凧のように上がり続けます。
でもこうなると、最初に付けた人たちはもう株価についていけません。
だから、さらに株価は上昇。
手替わりが何度か行われると、さすがに過熱に気がつき、ようやく相場も沈静化。
これがフツーの相場展開です。
買って売って、さらに上がるとまた買うことはできない投資心理。
つまり、銘柄の成長は一幕のドラマであり、売ったあとはいつもエピローグ。
多くの人に気がつかれるまで我慢できるか、あるいは恐怖の絶頂の高値で持ち続けられるか。
究極の選択ですが、どちらかに参加しないことには、市場に乗ることはできないでしょう。

「素直な心」

株は銘柄を知らないとやってはいけません。
名前を聞いたこともない株を売買して、勝った、負けたと騒いでも、後に残るのは単なるプラスマイナスだけ。
それでよしとするならば構いませんが、時間とお金を費やした結果のわりに、残るのがそれだけでは寂しいでしょう。
経験則という財産と、知識と推理力という財産。
これこそが、未来への資産として積みあがるような投資こそ望ましい筈。
企業は呼吸をしている存在。
ヒトの呼吸の産物である企業活動をウォッチすることが重要です。
企業の持つ無言の「訴えたいメッセージ」を聞くこと。
そして、昨日までではなく明日以降を推理すること。
この継続こそが株式投資の本質。
明けの明星を眺めながら今日の展開を読み、宵の明星を眺めながら今日の反省。
この反復も忘れてはいけません。
見えない事柄に驚いたり、騒いだりしないことは相場の永遠の真理。
敵の狙いの術中に嵌まり込んだ自縄自縛の世界では、敵の思うがまま。
シナリオを作るとすれば、そういう仕組みで挑んでくるのが敵のシナリオ。
他人のシナリオに乗らないためには、予防するしかありません。
そして、理路整然とした相場観測で皆が一致したときに相場は反転するもの。
本来、相場は素直な心で対峙するべきもの。
お人よしでは相場に置いて行かれる可能性があります。
最後の最後の究極の場面で役立つのは、きっと「素直な気持ち」。
「人の声でなく相場の発する声を聞く」ことができれば、負けは少なくなるでしょう。

 

櫻井 英明(さくらい えいめい)
ストックウェザー「兜町カタリスト」編集長

日興証券での機関投資家の運用トレーダー、「株式新聞Weekly編集長」などを経て、2008年7月からストックウェザー「兜町カタリスト」編集長。
幅広い情報チャネルとマーケット分析、最新経済動向を株式市場の観点から分析した独特の未来予測に定評があり、個人投資家からの人気も高い。

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