「志」
相場は「捨てる勇気と拾う勇気」が問われる場所。
見えない影に怯えることばかりの日々。
重要なのは、「自分で確認し、自分で考え、体でリズムを感じること」。
これが2019年のテーマでしょう。
「人真似でなく、独自の視点で磨くと少しは感動に出会える」と書いたことがあります。
驚きがあるからこそ、株式市場は人とマネーを惹き付けてきました。
株式市場は欲望のぶつかりあいの場、欲望の血圧計です。
それよりも、投資家さんが重要視されるのは、「相場で常に主人公、主役であること」。
そして、「株式投資は生き様」。
ココだけは変わらない、永遠の真理でしょう。
相場には、酷寒の日も酷暑の日もあります。
でも、小春日和や春眠だって巡ってくるもの。
厳しい気候を嘆かず、明るい日を待てば良いだけのこと。
この時間軸も必要です。
驚きと感動を求めて方向し咆哮し芳香を探ろうとするのが株式投資。
まさに「相場は変わり、世界が変わる」です。
そして・・・。
相場は人生の縮図。
晴れの日も雨風の日もあります。
晴れ続けないし、降り続けません。
僅かな進歩を反復しながら、それでも成長し老いていくもの。
後退は滅多にしないものです。
そういう視点で相場を見れば、たとえ一歩前進二歩後退でも進んでいるということ。
だから騒がない、慌てない。
そして諦めない。
一日一日の積み重ねの集大成が人生であるならば、相場もまた同じ。
一日一日を頭に刻みながら、年月を振り返り年月の先を類推。
重要なのは、負けないマインドと志。
それが大切です。
「マグロ」
不発に終わった大発会の、停滞モードを吹き飛ばしてくれたのは豊洲(市場)。
「マグロ3億3360万円。豊洲(市場)で初競り史上最高値」
これまでの最高値は、2013年の1億5540万円。(222キロ)。
キロあたり70万円でした。
通常のセリは、キロ当たり1万円からスタートだそうですが、今年はキロ10万円からスタートしたそうです。
結局、今年はキロ当たり120万円。
「自分で調べる、確認する」というテーマに則って調べてみました。
以下はそのデータ。
↓
2000年450万円(196キロ、キロ2.2万円)
2001年2020万円(202キロ、キロ10万円)
2002年280万円(215キロ、キロ1.3万円)
2003年638万円(228キロ、キロ2.8万円)
2004年393万円(151キロ、キロ2.6万円)
2005年585万円(234キロ、キロ2.5万円)
2006年469万円(293キロ、キロ1.6万円)
2007年413万円(207キロ、キロ2万円)
2008年607万円(276キロ、キロ2.2万円)
2009年960万円(128キロ、キロ7.5万円)
2010年1628万円(233キロ、キロ7万円)
2011年3249万円(342キロ、キロ9.5万円)
2012年5649万円(269キロ、キロ21万円)
2013年1億5540万円(222キロ、キロ70万円)
2014年736万円(230キロ、キロ3.2万円)
2015年435万円(180キロ、キロ2.4万円)
2016年1400万円(200キロ、キロ7万円)
2017年7420万円(212キロ、キロ35万円)
2018年3645万円(405キロ、キロ9万円)
2019年3億3360万円(222キロ、キロ120万円)
これまでの最高値はキロ70万円。
よく見るとアベノミクス以降の上昇が目立っているようにも思えます。
また、見方を変えれば株安の年よりも、株高の年の方が高いようにも見えます。
マグロの価格と株価の関係はほぼないと思いますが、それでも微妙にリンクしているような印象。
となると、株式市場にとっては明るい話題です。
「あえて1929年の大恐慌」
有名な恐慌は、歴史の勉強でも学んだ1929年の大恐慌でしょうか。
ニューヨーク市場の株価が大きく下落し、失業者はあふれ、世界も同様の動きとなったとされます。
日付で言えば、1929年10月24日。
その前5年間に、ニューヨークダウ平均株価指数は5倍に膨れ上がっていました。
この日を境に株価は下落の道をたどり始めたことになります。
450ドル台だったニューヨークダウ平均株価は、1932年10月にはわずか58ドルまで下落。
ほぼ、ピークの10分の1の水準。
個別の株価では、鉄鋼のUSスチールが262ドルから1932年7月に22ドルまで下落。
通信のATTは、304ドルから72ドルまで下落。
自動車のGMは、73ドルから8ドルまで下落しました。
景気の面から見てみると、株価の大暴落から8年後の1933年、アメリカの国民総生産(GNP)は、1929年の3分の2に落ち込みました。
それが回復したのは1941年のこと。
要した時間は12年。
実に長い歳月でした。
これだけの株価の下落に見舞われれば、投資家はパニックになります。
株の損失を埋めるため、不動産など他の分野の資金を売るから余計に景気は悪化。
誰もが資金回収や借金の返済に躍起になります。
投資意欲などは全く見られません。
因みに、10月24日は「暗黒の木曜日」と呼ばれて有名ですが、10月28日に株価は12%下落、29日には13%下落しました。
この29日は、「悲劇の火曜日」と呼ばれています。
この1週間で株式の価値は、300億ドル減少したそうですが、この300億ドルと言う数字は、当時のアメリカの国家予算の約10倍の水準。
この10倍という数字を現在の日本に当てはめてみると、一般会計予算が約100兆円として1週間で1000兆円が消えたということ。
想像もできませんし、そもそも東京証券取引所1部上場の株式時価総額(2018年)は最大で700兆円足らずです。
いかに強烈だったということが分かります。
当時の著名経済学者、アービング・フィッシャー教授のコメントというのは結構記憶に残っています。
それぞれの時点での発言が、結果的には強烈な皮肉のようなものでした。
例えば、暗黒の木曜日の直後に株価が一時的に反発したときは、「相場は浮ついた連中をふるい落としたに過ぎない」。
しかも、「すべてはパニック心理が原因である。群集心理が働いたのであって、決して株価が健全な水準を超えたのではない」。
こういうコメントは現在の株式市場でもよくお目にかかります。
「ふるい落とし」で済んだならば、株価は半分にはなりはしないでしょう。
一番賢そうな逸話を残しているのはケネディ元大統領の父の逸話。
ウォール街の靴磨きの少年に「株式投資は儲かるんだってさ」と言われたことから、不況が近いと予測したといいます。
どこにヒントがあるかわからないものです。
櫻井 英明(さくらい えいめい)
ストックウェザー「兜町カタリスト」編集長
日興証券での機関投資家の運用トレーダー、「株式新聞Weekly編集長」などを経て、2008年7月からストックウェザー「兜町カタリスト」編集長。
幅広い情報チャネルとマーケット分析、最新経済動向を株式市場の観点から分析した独特の未来予測に定評があり、個人投資家からの人気も高い。
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