みずほ証券 公式チャンネル 今月のマーケット動向は?
Home / 経済を知る / マカオのカジノ業界に回復の兆し

マカオのカジノ業界に回復の兆し

Macau
(写真=PIXTA)

マカオ旅行客数は底打ちか

世界最大のカジノの街として知られるマカオへの旅行客数は2015年が14年比▲3%の3,071万人。そのうち、中国本土からの旅行客数は2,041万人と全体の約7割を占めました。中国の反腐敗運動にともない2013年に発表された節約令等を受けて、中国本土からの旅行客数は減少が続き、マカオのカジノ産業に大きな打撃となっていました。しかし、月次ベースでみると、マカオへの旅行客数は2015年3月の前年同月比▲18%を底にマイナス幅は縮小傾向にあります。まだ波はありますが、徐々に底打ち感が出てきているようです。

2015年マカオカジノ市場シェアは、サンズ・チャイナが首位

2016年9月末時点で、マカオのカジノ施設は38軒と、2015年末の36軒から増加しました。2015年末時点のテーブル数は2014年末比+4%の5,957台、スロットマシーンは同+12%の1万4,578台。売上高ベースの市場シェアは、ラスベガス・サンズの傘下であるサンズ・チャイナ(以下、サンズ)やギャラクシー・エンターテインメント(以下、ギャラクシー)、SJMホールディングス(以下、SJM)などが上位を占めています。一般向けカジノ収入で強みをもつサンズやギャラクシーが堅調に推移する一方、2014年までシェア最大でVIP向けカジノ収入の割合が大きいSJMホールディングスがシェアを落とす傾向がみられています。

図1
出所:各種公表資料より作成

マカオのカジノ収入は、2ヵ月連続のプラス成長

習近平体制となった中国では2013年11月、節約令が発表され汚職・腐敗の摘発が強化されました。これにともないそれまで好況を享受してきたマカオのカジノ業界では、カジノ収入が急減速し、富裕層を対象としたVIP向けカジノ収入や一般向けカジノ収入が2015年1月から足元まで減少傾向となっていました。しかし、ここにきて節約令の影響が一巡したとみられ、2016年7月には一般向けカジノ収入が、8月にはVIP向けカジノ収入が前年同月比で増加に転じる等、徐々に落ち着きを取り戻しています。カジノ収入全体は8月に27ヵ月ぶりに前年同月比でプラスに転じたのに続き、9月は同+7%と2ヵ月連続でプラス成長となりました。

図2
出所:各種公表資料より作成

統合型リゾートの開業でカジノ以外の収入に期待

2016年後半には、マカオの中心であるマカオ半島に加え、埋立地に新しく開発されたコタイ地区にも多くのカジノ企業が進出、今後も開発プロジェクトが進むことが見込まれます。カジノ大手各社は、商業施設を統合型リゾート(IR)内にオープンする等、ファミリー層の取り込みをはかっています。カジノ業界は、これらにより旅行需要の増加から恩恵を受けるとみられます。8月には、ウィン・リゾーツ傘下のウィン・マカオがIR「ウィン・パレス」を開業しました。花をテーマにした同IRは、音楽や光に合わせて揺れ動く噴水「パフォーマンス・レイク」や噴水を上空から見ることができるゴンドラ「スカイキャブ」が特徴。9月には、サンズがIR「ザ・パリジャン・マカオ」を開業しました。同IRは、パリの名所「エッフェル塔」をモデルにしたレプリカ(7階と37階に展望台を設置)や広大なショッピングモール/ビジネスコンベンションセンター等がシンボル。カジノだけでなくさまざまな施設を併設しファミリー層やビジネス層等を呼び込むことで、カジノ以外の収入の拡大が期待されています。さらに2017年以降も新しいIR/高級ホテルの開業が控えており、すでに統合リゾート化に転換したラスベガスのように、マカオも統合リゾート化が進んでいる状況です。

「ウィン・パレス」のパフォーマンス・レイク(左)と「ザ・パリジャン・マカオ」のエッフェル塔(右)

%e5%9b%b33 %e5%9b%b34
写真提供:WYNN RESORTS、Sands China Ltd

インフラ整備により、旅行客数の増加に期待

インフラ面においては香港・広東省珠海市・マカオを結ぶ全長55kmの大型海上橋「港珠澳大橋」が2017年末開通予定(2009年12月着工)。このインフラ整備による経済効果は500億香港ドルとの試算もあります。香港からは国際空港と直結する予定となっており、珠海市および香港からマカオへのアクセスで大幅な時間の短縮が可能となり、利便性の向上につながります。これにより香港を経由した海外からの旅行客数だけでなく、中国本土からも増加が期待されます。

マカオ市場で事業の拡大が期待できる、カジノホテルに注目

足元で、中国では消費者信頼感指数の改善がみられること等から、レジャー・娯楽への支出拡大が見込まれ、中国本土からの旅行客数の回復が期待できます。また、コタイ地区での新規のIR/高級ホテル開業、インフラ整備により海外からの旅行客数の増加も見込まれます。今後、マカオのカジノホテルはその事業も業績も大きく拡大するのではないかと期待されています。

【関連記事】
そもそも「株」ってなんだ? 世の中を豊かにした人間の英知 「株・株式会社」
「円安と円高」についてちゃんと説明できますか? 外貨投資のリターンとリスクとは
金融サービスを変えるフィンテック
大手製造業の社内体制変革に注目――GE、シーメンス、日立
中国不動産、2016年も政府の支援策が続く見通し