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いまさら聞けない! 「マイナス金利」ってなんだ?

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(写真=PIXTA)

 「マイナス金利」が導入されてすでに3ヵ月が経ちました。「マイナス金利」という聞きなれない用語を耳にして、どのような影響がでるのか不安を感じた人も少なくないのではないかと思います。ここで、あらためてマイナス金利政策がどのようなもので、私たちの生活にどんな影響があるのかおさえておきましょう。

金融緩和とマイナス金利政策

 金融機関は日本銀行の当座預金にお金を預けています。このお金には一定のルールに従って金利がついているのですが、マイナス金利政策とはこのお金について日銀が逆に金融機関に対して金利負担を求めるものです。

 「お金を預けると金利が取られるなら、誰も預けないのでは」と思わるかもしれませんが、それが正に日銀の狙いです。お金を日銀に預けず貸し出しなどに使ってもらうことが目的の1つなのです。

 これまで金融緩和政策をとってきましたから、市中には多くのお金が供給されています。このお金が日銀の口座に滞留するのではなく、消費者や企業に回るようにする。そうして経済活動が活性化し、デフレが抑制され、ひいては物価が上昇していく――というのがマイナス金利に期待されるシナリオです。

 この日銀当座預金とは、金融機関が一定の金額を預け入れることを義務付けられた日銀の特別口座で、金融機関同士の決済に利用されます。法定準備預金額は無利息なのですが、それを超えて預け入れた部分「超過準備額」に対する金利はその残高によって、0%、0.1%、▲0.1%の利息が適用されます。

 ちなみに海外では、マイナス金利を導入している国・地域がいくつかあります。欧州中央銀行(ECB)は2014年から導入していますし、スイスやデンマーク、スウェーデンなども導入しています。

すでに出ているマイナス金利の影響

 ところで、マイナス金利は、今後の銀行経営に影響を及ぼすのではないか、との懸念がなされています。それまで銀行は、倒産するリスクを考える必要のない「日銀」にお金を預けておけば安心でしたが、マイナス金利後は常に融資を行ったり、有価証券に投資したりと、お金の運用について考える必要が今まで以上にでてきたからです。

 マイナス金利政策の発表後、メガバンク3行の株価は平均約15%下落し、上場している銀行の平均株価である銀行指数も約15%下落しました(2016年4月上旬現在)。これは先に述べた銀行経営への影響が懸念されたことが一因と見られます。

 その一方で不動産業界などは販売が好調となる可能性がでてきました。住宅を購入する場合、消費者の多くは住宅ローンを利用するからです。0%に近い金利で借りられるようになれば金利負担を気にする必要がなくなり、金利が高くなる前に住宅を購入しようという人が増えるかもしれません。延期という話もあるものの、消費増税も予定されています。こうした面も不動産の購入意欲を後押しする可能性があるでしょう。マイナス金利は消費者にとって悪い話ばかりではないということです。

 気がかりなのは、日銀の狙い通り市中にお金が流れるかどうかです。行き場を失った銀行のお金が国債に流れ、その国債を日銀が買い取ることを繰り返していたら、どうなるでしょうか? 銀行のお金はいつまでたっても市中に流れないということにもなりかねません。逆に銀行の企業向け融資が活発化すれば、企業活動も活性化して私たちの暮らし向きにプラスに作用することも考えられます。マイナス金利の影響については、もうしばらく時間をかけて様子を見るべきかもしれません。

 ともあれ、今回導入されたマイナス金利は、しばらく継続することが考えられます。金融機関や企業が方針の転換をすれば、たとえ住宅を買う予定などがなくても、暮らしのあらゆる面で影響を及ぼすことも考えられますので、十分な注意が必要でしょう。

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