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トランプ政権、現実路線に舵を切るか?

(写真=UTBP/Shutterstock.com)


就任2ヵ月を経て、トランプ大統領は相次ぎ大統領令を発令してきましたが、そろそろ景気刺激策にも着手するとの期待感が金融市場では高まっています。一方、政権内部では安全保障担当の大統領補佐官が辞任し、対ロシア政策や大統領側近の権力拡大等に対する懸念が浮き彫りとなりました。

ただ、新補佐官の起用を通じてトランプ政権が現実路線に向かうことへの期待もあり、当面は新補佐官の手腕が注目されることになりそうです。

トランプ政権が発足して2ヵ月が経過

2017年1月20日にトランプ政権が発足して2ヵ月が経過しました。この間にトランプ大統領は医療保険制度改革法(オバマケア)や金融規制改革法(ドッド・フランク法)の見直しを表明したほか、イスラム圏7ヵ国からの入国制限や難民の受け入れを停止する大統領令などに署名しました。他にもメキシコ国境沿いの壁の建設や、輸入品に関税を課す国境税の導入示唆と続き、金融市場では保護主義への懸念が強まる場面もみられました。

しかし、トランプ大統領は2月9日に「今後2~3週間以内に税制で目を見張る発表がある」と述べ、金融市場では大統領選挙時の公約でもあった法人税減税などの景気刺激策にようやく着手する、との期待が高まりました。

安保担当補佐官の辞任が政権内部の対立を浮き彫りに

一方で、政権内部の人事には混乱がみられます。1月末に入国制限に反対して司法長官代行が更迭されましたが、2月14日には国家安全保障問題担当のフリン大統領補佐官が政権発足前にロシア側と同国への経済制裁の解除について協議したとされる問題の責任を取って辞任しました。

同氏はトランプ大統領の側近の1人であり、外交・安保政策を担う中心的なメンバーとされていたため、政権発足1ヵ月に満たない時期の辞任は政権にとって痛手になるとの見方が強まりました。

米国とロシアの外交関係は2014年にウクライナで騒乱が生じた際にロシアがウクライナ南部のクリミア半島を編入したことで急速に悪化しましたが、トランプ大統領はロシアとの関係改善を模索するなど、融和的な姿勢を示していたため、安全保障担当補佐官の辞任が政権内の共和党主流派と非主流派の対立を浮き彫りにすることにもつながりました。

トランプ政権では、共和党全国委員長から政権入りしたプリーバス首席補佐官や、ペンス副大統領といった共和党主流派と呼ばれる勢力に対して、大統領選挙で対策委員長を務めトランプ氏を勝利に導いたバノン首席戦略官・上級顧問や選対本部長だったコンウェイ上級顧問は、非主流派とされています。

バノン首席戦略官は移民や難民の入国制限を決めた大統領令の作成にかかわったとされ、トランプ政権における影響力の大きい人物として認識されつつありますが、白人至上主義を掲げる人物や右翼的なニュースサイトの運営者としても知られています。

バノン氏は1月28日に大統領直属の諮問機関であり、国家の最高意思決定機関の1つでもある国家安全保障会議(NSC)の常任メンバーに抜てきされましたが、一方で情報機関を統括する国家情報長官や、軍人のトップである統合参謀本部議長はこれまでの常任メンバーから非常任メンバーへと格下げされました。

結果的に外交や安保分野の経験の乏しいバノン氏が重用される形となったため、共和党からはトランプ政権の人事に対して危惧する声があがるようになりました。

後任の補佐官起用をきっかけにトランプ政権が現実路線に舵を切るか

しかし、2月20日にフリン大統領補佐官の後任に陸軍中将だったマクマスター氏が起用されると、同氏が対ロシア強硬派と目されていたこともあり、トランプ政権の親ロシア姿勢が変更されるとの見方が出てきました。

スパイサー大統領報道官は2月21日に「新補佐官がバノン首席戦略官をNSCから外すよう望んだ場合、大統領は真剣に考えるだろう」と述べています。仮にそうなれば、人々はトランプ政権がこれまでのポピュリズム路線から現実路線へと舵を切り替えたと受け止めるかもしれません。

一方で政権に批判的な発言をしたNSC幹部が解任されたとの報道もあり、当面はマクマスター氏が国家安全保障担当補佐官としてトランプ政権のシリア政策やイスラム過激派に対する政策の見直し作業に加え、ロシア問題などでバノン首席戦略官らとのやり取りを通じて、いかにして自らの役割を果たそうとするのかが注目されます。

前任のフリン大統領補佐官は独断専行が多いとの批判や、マティス国防長官との対立が指摘されていましたが、新補佐官はマティス国防長官やダンフォード統合参謀本部議長、上院軍事委員会のマケイン委員長を味方につけることができるとみられています。

議会で審議プロセスが明らかとなる税制改正などの法案と違い、NSCは米国の国防機密に直結する会議ですので内容が公(おおやけ)になることはないでしょうが、マクマスター大統領補佐官が国家安全保障担当としてトランプ大統領やバノン首席戦略官などの側近が決めた方針に対してどこまで修正する力を発揮できるのかが注目されます。

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