みずほ証券 公式チャンネル 8月のマーケット動向は?
Home / お金のコラム / 注目される訪日客の酒蔵ツーリズムと日本産酒類の輸出拡大

注目される訪日客の酒蔵ツーリズムと日本産酒類の輸出拡大

(写真=PIXTA)

訪日客が酒蔵で購入すると酒税も免税に

訪日外国人観光客(訪日客)に対する酒類の免税制度が拡充されます。現在は訪日客が免税店で酒を購入すると消費税が免税になりますが、2017年10月からは許可を受けた日本酒の酒蔵やワイナリー、地ビール工場、焼酎を造る蒸留所などで購入した場合、消費税だけでなく酒税も免除となります。

例えば、税込価格2,000円の一升瓶入りの清酒(1.8リットル、アルコール分15%)の免税額は、消費税と酒税を合わせて364円です(酒税216円、消費税148円)。ただし、購入した酒は日本国外に持ち出すのが条件となっており、出国するまで飲むことができません。

酒所を巡って地酒を味わい、その酒を育んだ土地を散策しながら郷土料理や伝統文化を楽しむことは「酒蔵ツーリズム」と呼ばれ、すでに官民一体で普及推進が行われています。今回、訪日客向けに酒税の免税措置を設けるのも、日本産酒類のインバウンド消費を促す目的のほか、全国にある日本酒の酒蔵や地ビール醸造所等に訪日客を誘引することで地方の観光振興を図る狙いがあります。

国内にある酒類製造場は2016年3月末時点で3,150ヵ所です。訪日客数は2016年に初めて年間2,000万人を突破しましたが、政府が掲げる2020年に同4,000万人に増やす目標の達成には、人気の高い大都市だけでなく、地方でも訪日客が観光を楽しめる仕組みづくりが課題となっています。

日本産ウイスキーなどが海外で人気の理由

また、訪日客の酒蔵ツーリズムが拡大すれば日本の酒の認知度向上につながり、近年、大きく伸びている日本産酒類の輸出がさらに増える好循環も期待されます。日本の酒類の輸出金額は、2016年に430億円と過去最高を記録し、10年前(2006年)の140億円と比べて3倍以上に増加しました。このうち、日本酒は156億円と7年連続で過去最高を更新し、ウイスキーは108億円と2006年の10倍超となっています。

こうした輸出好調の背景には、政府が「クールジャパン戦略」の一環として支援策を推進していることに加え、海外の和食ブームがここ数年で一段と広がりをみせていることがあります。2013年12月に和食がユネスコの無形文化遺産に登録されたことも追い風に、海外の日本食レストランは2015年7月時点で約8.9万店と、2013年1月時点の約5.5万店から1.6倍に増加。料理と一緒に楽しむ日本酒等の消費拡大につながっています。

さらに、日本のウイスキーやワインの評価が海外で年々高まっていることも注目されます。欧州を中心に人気が広がるウイスキーは、英国の著名なガイドブック「ウイスキー・バイブル」の2015年版がサントリーの「山崎」を世界最高のウイスキーに選出したことなどがブームを後押ししています。ワインも近年、国際コンクールでの受賞が相次いでいます。

新たな観光需要の掘り起こしに期待

訪日客への免税措置については、2014年10月から消費税免税の対象品目に酒類を含む食品や薬品、化粧品等の消耗品が加わったことが、訪日客数および同旅行消費額の大幅増加につながりました。一方、今回の酒類の免税拡充では、酒の消費拡大に加え、このところ訪日客の関心が高額消費から「コト消費」に移っているとの指摘もあるなか、新たな観光需要の掘り起こしにつながるものと期待されます。

酒蔵ツーリズムの拡大期待や日本の酒の海外人気、足元の輸出好調から注目される銘柄として、国内酒類メーカーが挙げられます。日本酒・焼酎大手は、国内の複数箇所に日本酒の酒蔵等の酒類製造場を持っているだけに、酒蔵ツーリズム客の取り込みが期待されます。また、ビール大手各社も、主力のビールの海外展開に加え、国産のウイスキーやワインでもグループ内に有力な国内企業を抱え、事業を積極化させています。一方、酒蔵ツーリズムへの期待では、鉄道、航空、ホテル等の旅行関連銘柄も注目されます。

【おすすめ記事】
東京五輪の経済効果は?その後の落ち込みはどうなる?
厳しい人口減少時代に突入へ……これからの日本経済はどうなる?
本格的なEV時代が到来する? 次世代自動車の開発競争が加速
キャッシュレス社会へ 電子決済の普及で変わりゆくお金のかたち
2020年に向けて市場規模が急拡大 「VR」「AR」で世界はどう変わる?