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企業倒産件数は26年ぶりの「低水準」だけど、本当に景気は良くなっているの?

Businessman
(写真=PIXTA)

東京商工リサーチの調べによると2016年(1~12月)の企業の倒産件数は、前年比で4.2%の減少の8,446件となり、2009年から8年連続で改善し、バブル期以来の低水準(1990年同期で6,468件)となりました。

上場企業の倒産件数も、2016年は、年間、年度ともに「ゼロ」、発生していないのです。年度としては、1990年度以来26年ぶりのゼロ発生です。

しかし、借入金の返済条件の変更をしても倒産に至ってしまった企業や休廃業・解散してしまった企業は増えているようです。倒産件数が減少したからといって一概に景気が良くなっているとはいえないようです。

倒産件数が減った業種、増えた業種

前年と比較して、農・林・漁・鉱業、建設業、製造業、卸売業、小売業、運輸業、情報通信業の7業種で倒産件数が減少しており、建設業では8年連続で減少しています。
この7業種のうち、情報通信業を除いた6業種では、過去20年間で倒産件数は過去最少となっています。

逆に倒産件数が増えたのは金融・保険業、不動産業、サービス業他で、サービス業のうち老人福祉・介護事業、飲食業などで倒産が目立っているようです。老人福祉・介護事業については、人手不足や介護報酬の引き下げなどが影響していると見られています。

倒産件数がなぜ減少したかについては、金融緩和が続くなか、金融機関が企業への融資返済の繰り延べに応じたり、場合によっては財務状況が改善した企業への追加融資をしていることなどを挙げています(東京商工リサーチ)。

返済は猶予してもらったけれど・・・ 「返済猶予後倒産」は増加

2016年、貸付けの条件を緩和してもらったり返済期限を延期してもらったにもかかわらず、倒産してしまう「返済猶予後倒産」(※)が3年ぶりに増加に転じました(帝国データバンク)。返済猶予後倒産の2016年の件数は413件で、前年比4.8%の増加となっています。
(※ 負債1,000万円以上)

中小企業の倒産を防ぐことを主目的として2009年12月に施行された「中小企業金融円滑化法」が2013年3月末で終了した後も、金融庁は中小企業の資金繰りをできる限り助けるよう金融機関に要請しているようです。

しかし、返済を猶予してもらったとしても経営改善を図ることは難しいものです。帝国データバンクの調査では、今後も返済猶予倒産が増加すると予想しています。

倒産ではないけれど・・・休廃業・解散の件数は倒産の3倍

一方、倒産のような、債務不履行に陥ったり資金繰りがショートして事業の継続が難しくなるなどの理由以外で事業をストップする中小企業が増加しています。

東京商工リサーチが2017年の年初に公表した2016年の休廃業・解散の件数は2万9,583件で、同年の倒産件数の3倍ほどに達しています。休廃業・解散件数は2年連続で減少しているのですが、それでも2008年のリーマンショック以降は毎年2万5,000件を超える高水準にあります。同期間の倒産が1万5,000件強から約8,500件に大きく減少したのとは対照的です。

ではなぜ企業は休廃業・解散してしまうのでしょうか。それには先行きの不透明感や高齢化による事業承継に関わる問題や、人員不足などの要因があるようです。

中小企業の先行きは依然マイナス

企業の景況感を調べる日銀短観(2017年4月3日公表)を見ると、中小企業の業況判断DI(実績)では、製造業(+5%ポイント)、非製造業(+4%ポイント)ともに前回(2016年12月)よりも改善(それぞれ+1%ポイント、+2%ポイント)しています。

しかし、先行きについては、2013年以降の17四半期のうち中小企業が先行きを楽観視したのは非製造業で3回、製造業に至ってはわずか1度だけと、暗い見通しが続いています。

事業改善計画を立てていない、立てていても金融機関頼みであったり、計画を実行できないような企業が、マイナス金利に代表される金融緩和により生き延びているとすれば、倒産の減少が景気の実態を映しているとはいえないのかもしれません。現状を的確に把握するには、ひとつの数字だけで判断するのではなく、企業の業績はもちろん、日銀短観のほか、小売統計や景気ウォッチャー調査(街角景気)など、日本経済を広くカバーするさまざまなデータを見ていく必要があるでしょう。

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