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日本発の耐熱素材、SiC繊維に期待

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(写真=Matus Duda/Shutterstock.com)

高い耐熱性を持ち、軽くて強いのが特長

軽量で高い耐熱性を持つ次世代素材として炭化ケイ素(SiC)繊維への注目度が高まっています。SiC繊維は、ケイ素(Si)と炭素(C)を1対1で結合させた化合物を繊維状にした材料です。高温環境にさらされる航空機やロケット、発電設備、自動車といった分野の部材として活用が進むことが期待されています。

通常、SiC繊維はセラミックスと一緒に焼き固めたセラミックス複合材料(CMC)として使われます。セラミックスは衝撃で割れやすいのが弱点ですが、CMCにすることでSiC繊維が補強材の役割を果たし、高耐熱・軽量・高強度の材料となります。

航空機エンジン向け用途に注目

SiC繊維の用途展開で、今のところ最も注目されているのが航空機のエンジン部材向けです。SiC繊維を用いたCMCは、航空機エンジン部品の材料として現在主流のニッケル合金に比べて重さが3分の1、強度が2倍。加えて、燃焼温度がセ氏1,500度を超えるともいわれるエンジン内で耐久性を維持できることから従来のような空気冷却が不要で、燃料ロスを大幅に抑えられます。そのため、航空機エンジンの燃費改善に大きく貢献するとみられています。

航空機エンジン部材にCMCを活用する動きでは、すでに航空機エンジン大手の米ゼネラル・エレクトリック(以下、GE)と仏サフランが共同開発したエンジン「LEAP(リープ)」の高圧タービン部品に採用されています。商業用エンジンにCMCが使われるのはこれが初めてです。LEAPの搭載機には、欧州エアバスの最新小型機A320neoや米ボーイングの最新小型機737MAXなどがあり、2016年には同エンジンを搭載したA320neoが運航を始めています。

また、GEは最新型の航空機エンジン「GE9X」でも、複数の部品の材料をニッケル合金からCMCに置き換えることを決めています。GE9Xは、民間航空機エンジンとして世界最大級の推力を有し、燃費では現行モデルGE90に比べて約10%の改善が目指されています。すでに300機以上の受注があるとみられるボーイングの次期大型機777X(2020年の初号機引き渡しを計画)に搭載される予定です。

近年では、航空機の二酸化炭素(CO2)排出問題に一層の注目が集まるようになっており、国連傘下の国際民間航空機関(ICAO)は昨年秋に開かれた総会で、2020年のCO2排出量を基準にして21年以降増えた分の排出枠の購入を各航空会社に義務づけることを決めました。今後も航空機エンジン分野で燃費改善に貢献する次世代部材の需要が高まると期待されます。また、CMCは発電用タービンなどに活用される計画もあり、航空機エンジン以外への用途の広がりにも注目できます。

日本企業2社のみがSiC繊維を製造

SiC繊維は、1975年に東北大学金属材料研究所の矢島教授らのグループが発明。その後、長年にわたる研究開発によって、現在、SiC繊維を製造できるのは世界でも日本の素材メーカー2社のみとなっています。これら2社は、航空機エンジン向けの需要拡大に合わせ、順次、増産体制を整えていく方針です。航空機では、主翼や胴体などの機体の部材に日本企業が約7割のシェアを持つ炭素繊維プラスチック(CFRP)の採用が進んでいます。株式市場でも、炭素繊維メーカーに加え、今後は日本発の次世代素材であるSiC繊維の製造企業にも目が向かうことが期待されます。

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