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変わりつつある世界の景況感

(写真=beeboys/Shutterstock.com)


リーマンショックから欧州債務危機へ

今から10年前の2007年、米国でサブプライム危機が勃発しました。サブプライム危機とは一種の不動産バブルの崩壊です。当時は住宅市場の活況を受け、金融機関は低所得者向けにも住宅購入資金を積極的に貸し出しました。これがサブプライムローンです。ところが金利の上昇を受けて返済ができなくなる人が続出したことにより、バブルが崩壊(サブプライム危機)しました。バブルが崩壊すると、金融機関の損失が拡大します。これにより、翌年にかけて米国を金融危機が襲い、2008年のリーマンブラザースの破たん、いわゆるリーマンショックへとつながりました。一連の危機が世界経済を揺るがすと、海を越えたアイルランドの大手銀行が危機に陥り、これを救済しようとしたアイルランド政府の財政が悪化。国としての信用が低下して資金調達が難しい状況となり、アイルランドは欧州連合(EU)に対して金融支援を申請しました。すでにギリシャの財政を巡る不安が高まっていたなか、財政と金融システム双方への懸念が拡大し、欧州債務危機へとつながります。その後、ポルトガルも金融支援を申請する事態となり、2013年頃にかけて世界経済に混乱をもたらしました。

中央銀行は金融緩和策で対応

この世界経済の混乱に対応するため、世界中の中央銀行は積極的な金融緩和を行いました。具体的には政策金利の引き下げです。これによって、経済を刺激して景気を持ち上げようとしたのです。しかし、なかなか世界経済が回復しないなか、日米欧など主要国の政策金利は軒並みゼロ近辺まで低下してしまいました。そこで、各国中銀はゼロ金利政策に加えて量的緩和という次の手段を導入します。量的緩和とは、中央銀行がお金の量を増やす政策です。学問的にその効果が証明されたわけではありませんが、経済の血液であるお金の量を増やすことで、血液が体全体に流れる効果を狙うイメージです。ここまで来て、ようやくアメリカの経済が上向き始めました。アメリカの中央銀行である連邦準備理事会(FRB)は景気の拡大を慎重に判断しつつ、2015年12月より金融政策を引き締め(具体的には利上げ)に転じました。一方、日本や欧州はなかなか景気が上向かないなか、量的緩和の拡大をいったん棚上げし、再び金利を引き下げる手段に出ます。ゼロの金利をさらに引き下げるという、いわゆるマイナス金利政策の導入です。

金融政策の効果が日本経済も下支え

この効果もあってか、日本を含む世界経済は徐々に変化しつつあるようです。日本の景気もまだまだ拡大しているという状況とは言い難いのですが、日経平均株価も2万円を回復するなど、少なくとも一時のような悪化傾向には歯止めがかかっているようです。海外でもその傾向が徐々に強まっています。

世界の中央銀行のスタンスが転換点に

この6月に入り、複数の中央銀行から強気の発言が聞かれています。12日にはカナダ中銀の副総裁が「これまでのような金融緩和を維持することが必要か検討する」と発言、翌13日には同ポロズ総裁が「利下げはほぼ打ち止め」とし、金融政策の方向性を転換する可能性を示唆しました。英国中銀では、21日に理事の1人が「今年下半期には利上げを支持する」と発言。28日には同カーニー総裁が「景気刺激策の解除が必要となる公算が大きい」としています。また、欧州中銀のドラギ総裁も27日に「ユーロ圏の回復が強まり、拡大していることを示すあらゆる兆候がある」「デフレ圧力はリフレ圧力に変わった」と発言しました。

今後世界経済は回復傾向を強める可能性も

サブプライム危機の勃発(ぼっぱつ)から10年。さまざまな努力の成果が徐々にあらわれ始めつつあるようです。これまでは米国が世界経済を引っ張ってきましたが、今後は徐々に景気拡大の流れが世界中に広がる可能性が高まっているようです。資産運用を考える場合も世界の景気の流れが大きく変わりつつあることには注意を払う必要があるでしょう。
 

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