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岩下直行教授に聞く「FinTech-仮想通貨を巡る現状と今後 ビットコイン分裂とICOの動向を中心に」後編

ビットコイン,FinTech,スケーラビリティ問題

京都大学・公共政策大学院の岩下直行教授にご協力いただいた連載インタビュー企画も本記事で最終回を迎えます。今回は、第3回に引き続き、仮想通貨について、その値動きの推移や、分裂やICO、そして未来の像のお話をうかがいました(このインタビューは2017年8月29日に行われました)。

>>「FinTech-仮想通貨を巡る現状と今後 ビットコイン分裂とICOの動向を中心に」前編はこちら

ビットコインの値動きが激しい

――ビットコインは値動きが激しく、目が離せない状況にありますよね。

岩下氏:そうですね。まずはその性質について正しく理解していただくために、先だって話題になりましたビットコインの分裂について解説します。

ご存じの通り、ビットコインは2つに分裂し、ビットコインキャッシュが生まれました。分裂の理由は簡単にいえば覇権争いです。ビットコインのマイニングをするマイナーとコア開発者との間で意見の不一致がありました。

意見の対立があってもめたのですが、最後に妥協が成立して問題なく収まりそうになったのですが、最後の最後でやっぱり分裂しますという話になりました。

両者の間にどのような不一致があったのでしょうか。2016年末ころから、「スケーラビリティ問題」と呼ばれる問題が深刻化しました。世界中で投機的な取引が増大したために取引量が増えた結果、ビットコインの取引承認時間が急激に長くなり、取引がなかなか承認されなくなったのです。これは、ビットコインが約10分おきに生成する「ブロック」のサイズが上限値に達してしまい、情報があふれてしまったことが原因でした。

これを解決するためには当然ブロックから情報があふれてしまっている状況を何とかしなくてはならず、この問題の解決策は2つありました。

1つはブロックの中身を整理して冗長なデータを削除するという解決策です。セグウィットという技術を採用するとデータ量が減り、従来の2分の1から4分の1のサイズにすることができます。

もう1つは、ブロックサイズそのものをあげるという解決策です。セグウィットを提案したのは「ビットコインコア」と呼ばれる開発者側で、ブロックサイズを引き上げようとしたのが採掘業者(マイナー)側でした。この2つの解決策の間でさまざまな駆け引きがあり結局溝が埋まりませんでした。

ところが溝が埋まらないままに分裂すると、UASF(ユーザー・アクティベイテッド・ソフトフォーク)が起こってしまうかもしれない。そうなるとセグウィット対応のブロックチェーンと未対応のブロックチェーンのどちらが正しいかわからなくなります。どちらかと取引していたら片一方が死んでしまい、全体の取引自体がなかったことになってしまうという問題が起こるかもしれません。

安定したビットコイン取引ができなくなって大暴落を起こす可能性があるので、ギリギリのところで妥協が成立したのです。

その結果、ビットコインは分裂を免れましたと報道されたのですが、その時の妥協というのは、いわゆる折衷案でした。まずはセグウィットを導入し、そのうえで2017年11月にブロックサイズを引き上げるかどうか、もう一度投票で決定しようという案でした。

このような話で落ち着いたはずだったのですが、一部のマイナーが気に入らないと分派して、UAHF(ユーザー・アクティベイテッド・ハードフォーク)という案を支持しています。

ハードフォークというのは、分岐する際にあらかじめルールを決めて、ビットコインとビットコインキャッシュは別モノだと、それぞれにフラグを立てて、平和な分裂になりました。ソフトフォークの道を選んでいたら大暴落の可能性があったのですが、ハードフォークだったので無難に乗り切ったというところです。

新しい資金調達ICOとは

――なるほど。まだまだ不安定な状況といえそうですね。値動きにも影響がありそうですね。

岩下氏:ビットコインの値動きですが、上がったり下がったりしながら、ついに50万円を超えたのですが、シェア自体は急激に低下しています。今年に入ってビットコインのシェアは急激に落ち、40%を切ってしまったため、第2のイーサリアムにニアミスしてしまいました。

また、今年の頭までほぼゼロだったビットコイン以外の仮想通貨のシェアが急激に上がっている。それにはICO、イニシャルコインオファリングの影響があると思っています。

ICOはわずか数時間で数百億円もの資金調達を可能にしました。今年に入ってから多くのICOがイーサリアムによって実施されています。

まず ICOがすごく流行ったので、それに対応するためにイーサリアムを買う必要がありました。そうなると当然、イーサリアムの値段が急騰します。するとイーサリアムが大量の資金を調達し、ICOが儲かるということがわかり、イーサリアムが上がると同時にICOの際に発行される仮想通貨の値段もどんどん上がっていきます。

これは、正のフィードバックがかかってもう止まらないくらいになった(相場が上がった)けれども、さすがにこれはバブルなのではないかとブレーキがかかって一旦下がったのですが、まだ大丈夫だとの思惑から、また上がったのではないかと思います。

結局、ICOが行われたプロジェクトの目的の約半分は、仮想通貨のための交換所のようなものをつくるためと説明していますが、投資や資金調達、ゲームやギャンブルなどお金が絡むところに資金を投資しますからお金をくださいと、すなわち自分たちのところでコインを作るためのお金をくださいといっているのです。

自分たちのところで作ったコインというのは、株でもなければ社債でもない単なるコインで、しかもそのコインに価値があるかどうかよくわからないというのです。

仮想通貨をつくって、それを勝手に売り出して、勝手に上がると思って買い付けるという流れに乗っかっているのです。

これは決して永続的ではありません。ICOというのは、既存の株や社債といった有価証券のようなものを、まったく規制を受けずに勝手に売り出しているようなものです。だから“ICOが素晴らしい”といっている人は、証券会社をいらないといっているのと同じなのです。

仮想通貨はどのような存在になるのか

――仮想通貨は今後、どのような存在になっていくと考えられますか。

岩下氏:ビットコインやイーサリアムというのは、いわゆるパブリック型とよばれるブロックチェーンで、管理者が存在しないタイプのものです。

一方で、プライベート型、コンソーシアム型とよばれるものがあって、現在、金融業界がターゲットとしているのが後者のスタイルです。すなわち管理者がいて、それが単独の機関であればプライベート型、複数であればコンソーシアム型と分類されます。

パブリック型に属するビットコインやイーサリアムは危ないけれども、管理者がいるプライベート型やコンソーシアム型は安全だと考える金融関係者は多いのですが、私はその考え方はあまり好きではありません。

本当の仮想通貨のブロックチェーンの良さというのは、パブリック型にあるような気がしています。ですから、その可能性は追求しながら、うまくプライベート型やコンソーシアム型と合わせて推し進めてほしいと思います。

このような新技術をどのように使うか、それを考えることがむしろ重要だと思います。

新しいものをつくって、どのようにして社会の役に立てていくかということを真剣に考えるべきです。取引の履歴を見ることができるのですから、例えば、ビットコインをそのまま国際援助の分野に役立ててはどうか、とイギリスの政府機関の発表した論文に書かれています。

援助資金が間違ってIS(イスラム国)の手に渡ったということがあれば、それがはっきりわかる。しっかり難民キャンプに資金が到達し、難民が食料を購入するのに使われているいということがわかれば、もしかしたら現金よりも適しているかもしれない。そのような使用法の可能性を見出していくことが大切ではないでしょうか。

岩下直行(いわした・なおゆき)
京都大学・公共政策大学院教授 PwCあらた有限責任監査法人 スペシャルアドバイザー
1984年慶應義塾大学経済学部卒業後、日本銀行入行。1994年7月、日本銀行金融研究所に異動し、以後約15年間、金融分野における情報セキュリティ技術の研究に従事。同研究所・情報技術研究センター長、下関市店長を経て、2011年7月、日立製作所へ出向。その後、2013年7月、日本銀行決済機構局参事役。2014年5月、同金融機構局審議役・金融高度化センター長。2016年4月、新設されたFinTechセンターの初代所長に就任。2017年3月、日本銀行退職。同年、4月より現職。

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