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アメリカで体験する個人情報漏えいのこわさ

(写真=Maksim Kabakou/Shutterstock.com)

ハッカー被害から個人情報が漏えい

会社の帰り、夜のニューヨークの地下鉄の中で、スマートフォンに1通のメールが届きました。「あなたの名義で新たにクレジットカードが作られました。もし心当たりがない場合は直ちにカード会社に連絡してください」とあります。自分が契約しているセキュリティ会社からのアラートです。「あ、またやられたな・・・」。

状況を把握するのに時間はかかりません。自分の個人情報を持っているどこかの企業がハッカー被害に遭い、それらの情報が漏えい。その情報を使って誰かが自分に「なりすまし」、クレジットカードの口座を開設しているのです。

2日間に自分名義のクレジットカードが6枚も作られる

家に帰ってから、そのセキュリティ会社のウェブサイトにログインし、ソーシャル・セキュリティ・ナンバー(社会保障番号)を打ち込んで、自らのクレジット・レポートの履歴を確認。なんと過去2日間に自分名義のクレジットカードが6枚も作られていました。大手百貨店が発行するカードから、宝飾品大手のカードまで、米国各地で自分になりすました複数の人間が一気に自分名義のカードを作り、悪用していたのです。

翌朝、セキュリティ会社のサービスセンターに電話し、担当者に調査を依頼すると、自分の社会保障番号と誕生日、自宅の住所がセットで盗まれているといいます。

確かにそれだけの情報がそろっていれば、米国ではクレジットカードを簡単に作ることができます。そのうち2枚のカードは、数千キロ離れた町の小売店の店頭で、自分になりすました人間が店員の目の前で紙の申込書を書き込んだといいます。「これは組織的に狙われているな・・・」、背筋に冷たいものが走ります。

高まるサイバーセキュリティへの関心

その後、大手小売店のカード等を発行する大手銀行各行に問い合わせ、次々にそれらカードのために作られた口座を閉鎖。ただ、1つの口座だけはどうしても正体がつかめず、種類が特定できないために閉鎖できません。

悪用されないことを願いながら2週間が経った後、自宅の郵便受けに届いたのはホームセンターチェーンからの書簡。「○×建設社長宛」とあります。なんと、自分の名義で会社が新たに設立され、自分が社長に就任し、その会社の経費として使われていたのです。

融資を行っていたのはある大手行。今回の一連の被害で悪用された額は、およそ10,000ドル。警察に2度出頭し、被害届を出し、もめにもめた結果、金銭的な負担は逃れることができましたが、大きな時間的ロス。このご時勢、企業と消費者の間で、サイバーセキュリティに対する関心が高まっているのは、無理もないことでしょう。

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