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トルコで何が起きているのか?

Toruko
(写真=PIXTA)

首相辞任で懸念が強まるトルコの政治 

 トルコは、2002年から続けてきた堅実な財政政策と大々的に行ったマクロ経済戦略が成功し、長らく経済成長を続けていました。

 2012年に政府が経済の過熱抑制策を取り入れたため、経済成長は一旦、減速しました。しかし、この政策により過熱気味だった国内経済が落ち着き、経常収支、物価上昇などの経済指標が改善しました。また、減速したとはいえ約4%と高い成長を続けているため、今後はBRICsに続く経済成長の発展が見込める新興国として期待されています。

 トルコの政治体制は、大統領と内閣(閣僚会議)による共和制です。現在のトルコ共和国大統領は2014年8月に就任したエルドアン氏で、内閣はユルドゥルム首相と5人の副首相、外相で構成されています。

 5月まではダウトオール氏が首相を務めていましたが、ダウトオール氏とエルドアン大統領との間には、閣僚や中央銀行総裁の人事などで意見の食い違いがありました。そんな中、エルドアン大統領がすすめる大統領の権限強化につながる新憲法制定についてダウトオール首相が難色を示したため、エルドアン大統領がダウトオール氏を首相辞任に追い込んだとされています。

 新首相となったユルドゥルム氏は、エルドアン大統領の長年の側近です。調整役の立場が強く、トルコではこの新内閣の体制によって大統領が一段と権限を強化し、強権的な統治につながるのではないかという不安が高まっているそうです。

 エルドアン大統領がすすめている新憲法の制定は、現行の議院内閣制を廃して大統領制とし、儀礼的な立場だった大統領に行政権を含めた権限を集中させるものですが、すでに一部のメディアでは事実上の大統領制がつくられたと報じられています。

トルコ経済の構成、収入源は?

 トルコの2015年度のGDP(名目)は7,199億ドルで、1人当たりのGDPは9,261ドルです。経済成長率は約4%ですが、物価上昇率は8.8%で失業率は10.3%と高い水準にあります。

 トルコの主な産業はサービス業、工業、農業で、サービス業は57.4%と全体の約6割を占めています。主な輸出品は自動車や部品、機械類、貴金属、ニットなどの衣類で、輸入しているのは鉱物性燃料や機械、電気機器などです。

 トルコ経済の状態は、内需主導での息の長い景気回復を辿っており、その過程の中で海外からの資金流入が加速したため、外資準備高も着実に積み上がっているものの経常赤字の継続や対外債務の増加、政治リスクといった、ソブリンリスク評価における懸念材料もみられます。
 
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日本との関係は?

 トルコは親日派で、日本に対してとても友好的な国で知られています。日本とトルコの友好関係は、120年にもおよぶ歴史があります。その友好関係を象徴するような話として1890年の「エルトゥールル号事件」(エルトゥールル号がトルコへの帰路の途中、紀州・串本沖で沈没し、大半の乗務員が亡くなりました。しかし、日本人によって救助された69名の人たちはその後、日本の巡洋艦によってトルコに帰国できました。)と1985年3月のイラク・イラン戦争において、テヘランで孤立した邦人を助けるためにトルコ政府がトルコ航空の特別機を派遣してくれた出来事があります。

日本との貿易では、日本への輸出(3.34億ドル、2015年)はたばこや魚介類・野菜・果実等の加工製品が多く、日本からの輸入(31.4億ドル、2015年)では自動車や自動車部品、建設機械が占めています。

トルコは地理的に欧州市場などに近接しているため、日本企業にとっても生産拠点を設置しやすい国だといえるでしょう。日本からトルコへの直接投資額は3.61億ドル(2015年)となっています。

トルコはEUに入れないの? 入らないの?

 トルコは欧州との協調関係を基本としており、NATOやOECDなどに加盟していますが、EUには加盟していません。

 1999年にEU加盟国候補に決定し、2005年から加盟するための交渉が始まっています。交渉がはじまってしばらくは停滞気味になっていたのですが、2015年からふたたび交渉を開始しています。

 EUに加盟するには、さまざまな分野での法律の一致や、EU加盟による移民の流入などの問題などがあります。しかし、トルコ国内はEU加盟に全面的に賛成というわけではなく、慎重な見方も出てきています。加盟までには、まだまだ時間がかかりそうな様子です。

トルコが抱える問題 難民、テロ

 アフリカや中東の治安が安定しないことに加え、IS(イスラム国)の大規模なテロ攻撃などで、トルコから欧州に入ろうとする難民が増加しました。増え続ける難民対策として、2016年3月、トルコはEUと難民の流入抑制で協力する枠組みをつくり、250万人以上のシリア難民を受け入れ、密航抑制に力を入れました。これによってトルコ経由の難民流入は激減していますが、難民はさらに危険なルートで欧州に入ろうとしています。

 しかし、2016年7月に起きたクーデター未遂事件後、トルコ政府は黒幕として断定した在米イスラム教指導者ギュレン師を支持する勢力への粛清の動きを強めています。

これまでに教員、警察官、裁判官、公務員などを中心に数万人が停職となったり、拘束されたりしました。

こうしたトルコ政府の粛清の動きに対して、欧州からは人権抑圧として批判の声があがっており、難民問題でみられた協力体制にひびが入り、今後欧州との関係が冷え込むのではないかとの懸念が生じています。

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