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斉藤賢爾先生に聞く「『不思議の国のNEO』から読み解く、未来におけるお金のあり方と私たちの暮らし」後編

前編では、斉藤先生の著書『不思議の国のNEO』を中心に、インターネットがもたらした社会とお金の変遷について解説していただきました。また、ブロックチェーンの観点から、ビットコインについても取り上げていただいています。後編ではさらに、技術の進化と社会の変化がもたらすお金のあり方についてお話をうかがいました。(このインタビューは2017年10月12日に行われました)

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変わり続けるお金の概念

――もともとインターネットは「自律分散型」だといわれていますが、これはどういう意味なのでしょうか?

斉藤氏:自律分散とは言葉の通り、自分たちで律しつつ、それぞれが勝手に行動するということです。インターネットの仕組みはまさに、自律分散的ですよね。あらかじめそのように考えて設計されているのです。

例えば、インターネット上では、基本的に何をやっても自由という考えがあります。この点については議論が絶えませんが、そもそも個人的なネットワークから出発しているので、自由という概念が残り続けています。

そして現代においては、インターネットが私たちの生活になくてはならないものとなっています。スマートフォンがなければ生活できないと考えている人も多いのではないでしょうか。それだけインターネットは普及しています。

もちろんインターネット上でも秩序はあります。みんなが使っているものなので、一定のルールは必要です。しかしあくまでも自由であり、自由であることを止めることはできない。それがインターネットと自律分散の関係性です。

ただし、ビットコインの場合、それがうまくできていませんでした。システムをいじると別なものになってしまう仕組みだったのです。そのため2017年8月に分裂騒動がありましたが、今後も分裂が起きる可能性はあるわけです。

――近年、「信用経済」や「評価経済」という言葉も聞かれますが、インターネットがお金のあり方そのものを変えているとも考えられそうですね。

斉藤氏:過去の事例から考えても、お金のあり方は一様ではありませんでした。日本銀行が誕生したのは1882年ですし、江戸時代には「藩札」が使われていましたよね。そして今、世界ではビットコインが使われています。

また、通販大手のAmazonが手がけている「Amazon Go」は、レジがないスーパーを実現しつつあります。カメラやセンサー、AI(人工知能)によって、人為的な支払いを不要にする仕組みまで完成されようとしているのです。

このような仕組みは、お金という概念そのものを変えようとしています。あるいはシェアリングエコノミーのように、お金ではなく物や行動によって価値を交換するという仕組みが生まれていることも見逃せません。

所有から本質的な価値へ

――これから先、お金の意味合いはどのように変わっていくと思われますか?

斉藤氏:貨幣経済が先鋭化していくなかにおいて、お金を所有するということはどういうことなのかが問われることになります。現実として、お金をたくさんもっている人はそれだけ社会に価値を提供したという見方もありますよね。

それもまた一つの考え方です。しかし一方で、お金をもっている人が偉いのではなく、その人にお金を支払った人の方が偉いという考えもあるわけです。謙虚な姿勢を保つことが大事だというのは、日本人ならではの発想として根強いものです。

このように、お金の考え方は人によって異なります。信用のあり方も、それがもたらす価値というものに対しても同様です。場合によっては、お金をもつことよりも、お金をどう使うかに価値があるという話になるかもしれません。

お金そのものに価値の本質がないと認識されるようになれば、「本当に自分がしたいことは何か」という、より人間的な、あるいは根源的な問いが重視されるようになる可能性もあります。

例えば、絵を描きたいのであれば、人工知能の助けを借りて一人で漫画家業を行うことも可能になるでしょう。技術的な制限はなくなろうとしています。やりたいことがあれば、テクノロジーがアシストしてくれる時代がきているのです。

お金をもっていることに価値を見出すのではなく、お金というもののあり方を考え直し、本質的な価値へと立ち返っていく。自分がやりたいことへストレートに向かっていける社会が、目前に迫っていると思います。

自分にそして次世代に投資する

――お金の意味合いが変わるなかで、私たちが意識しておくべきことはなんでしょうか?

斉藤氏:少なくとも「あいつより稼ぎたい」という発想は不毛なものとなるかもしれません。それよりも、自分がやりたいことにフォーカスして、技能的な側面から自己実現へと向かう方が、より良い人生になるのではないでしょうか。

また、たとえお金の意味合いが変わったとしても、投資の重要性は揺らがないと考えています。お金を増やすという意味ではなく、長期的に継続性のある生産力のために、自分がもっているものを投げだすという意味の投資です。

これまでにもお金のあり方が変わってきたように、その概念は今後も変わっていくかもしれません。だからこそ、変わらないものに投資するべきだと思います。お金よりもずっと長く続くであろうものに。

では、お金よりも長く続くものは何か。自分です。自分にとって、自分よりも長く続くであろう重要なものはほかにありません。ですので、私からのメッセージは「自分に投資しましょう」ということに尽きます。

ただし、残念ながら自分も永遠ではありません。命には限りがあります。そこで、自分よりも長く続く大切なもの、つまり次の世代に投資をすることも大事だと考えます。未来のために、子どもたちや若者に投資することです。

人生100年時代といわれている昨今ですが、これから先、私たちの寿命はさらに伸びるかもしれません。そのときに、お金の心配をするのではなく、自分や次世代の夢に向かって投資することが大切なのではないでしょうか。

斉藤 賢爾
慶應義塾大学SFC研究所上席所員・環境情報学部講師(非常勤)、早稲田大学大学院経営管理研究科講師(非常勤)、一般社団法人ビヨンドブロックチェーン代表理事、一般社団法人アカデミーキャンプ代表理事。
1993年コーネル大学より工学修士(コンピュータ・サイエンス)。2006年慶應義塾大学より博士(政策・メディア)。日立ソフト(現 日立ソリューションズ)、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任講師等を経て現職。
著書に『未来を変える通貨 ビットコイン改革論』(インプレスR&D)、『インターネットで変わる「お金」 ビットコインが教えたこと』(幻冬舎ルネッサンス新書)など。

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