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投資の腕を上げるための心得 ―兜町カタリスト櫻井英明のここだけの株話

こんにちは、兜町カタリスト・ストックVOICEキャスターの櫻井英明です。
40年近く株式市場の現場でその動きを眺めてきました。
そんな視点から株式市場で気がついたことや多少のウンチクをお伝えしていこうと考えています。
よろしくお願いします。

「断層」

2月初旬は悲鳴も聞こえそうな世界同時大幅下落となりました。
日経平均株価は1949年の東証再開以来20回目の4ケタ安となりました。
「NY株の上昇にはなかなか連動できないことも多いのに、下落にはしっかり連動する」という形。
ザラバでは一時、歴代第3位の1,603円安まで下落しました。
古い市場関係者の脳裏に浮かんだのは1987年10月のブラックマンデー。
ニューヨークダウの大幅安を受けての売り一色で市場は真っ青な色に。
日経平均株価の下落幅にして1日で3,836円。
終値ベースで21,910円でしたから今と似たような水準でした。
アメリカは貿易と財政の「双子の赤字」の塗炭の苦しみ。
製造業の競争力低下が課題だったところでの下落。
東京市場はそれまでの資源やバイオなどの材料株相場がほぼ終焉。その後にやってくる大相場の序章の段階でした。
朝から売り気配で値がつかずという風景は異様だった記憶があります。

「桐一葉落ちて天下の秋(とき)を知る」という有名な言葉は、すでにありましたが「一葉」どころではなく売り物ばかり。
復活までに数ヵ月を要しましたが、それでもその後は「ブラックマンデーなんてなかった」というような大相場の到来。
そう考えると、「歴史は繰り返す」なんて言葉に期待したいところもあります。
老練な市場関係者は「下げこそ上げの最大の栄養分」と言います。
「変化、転換は相場の栄養分。相場が崩れるときは、それまでの相場の前提が変わったとき。前提の変化に合わせる局面=断層ができる」。
しかし、断層もいつの日にかは全部一緒の土壌になってしまうもの。
時間軸を変えて市場を眺めるというのも必要でしょう。
「打てそうなときだけ打席に立つ。流れトレンドが来たら打席に立つ」。
こういう市場関係者もおられます。

先日の実況で「漁師は潮を見る」と言いました。
「株式投資は、いつ売買しても利益になるわけではない。相場のリズムや流れを見て波に乗らなければならない」。
簡単だけれど難しいこと。
「打てそうな時だけ打席に立ってバットを振る」なんてことができたら株式市場では相当な強さになると思います。
もっとも「振らなきゃヒットは生まれない」と言う言葉もありますが・・・。

「高名の木登りだって」

日経平均株価が2万円を回復した昨年6月以降、先行き警戒感が高まったのは3回目になります。
過去2回は克服してきました。
今回は「三度目の正直」なのでしょうか。
あるいは「二度あることは三度ある」なのでしょうか。
「二度あることは三度ある」は偶然の産物。
「三度目の正直」は必然という考え方もあります。

確率論の世界では「ベイズの定理(事象Aが起きた後での事象Bの起きる確率)」というのがあります。
「二度あることは三度ある」は75%の確率で発生。
逆に「三度目の正直」は25%の確率で発生するとされています。
実は確率論や数学、あるいは心理学など株式市場とは一見関係なさそうな分野のことが株式市場では応用して使われます。
吉田兼好法師の「徒然草」。
学校などで習うひとつが「高名の木登り」。

これも実は株式投資に役立つことがあります。
高いところから降りてきて、もうすぐ地上というところまで降りてきた人に名人が初めてかけた言葉は「気をつけよ」。
その理由は「高く危ないところでは自分で注意しています。失敗は簡単ところになって起こるものです」。
例えば、株価の低迷時には相当気をつけてウリカイのタイミングや銘柄を選ぶのに、株価が上昇してくると「安易な売買」や「雑な銘柄選択」をしがちなもの。
あるいは持ち株の売りこそ神経質に行いたいもの。
そういう意味では戒めとして心に残しておきたい一節になります。

株式投資で重要なのは「ケア」あるいは「注意」。
それぞれの指標や動きを気にかけること。
株価材料は、平等に目の前を通り過ぎていきますが、其の意味に気がつくか気が付かないかの差は大きいもの。
この日々の材料吟味に指標のチエックという作業が加わります。
225採用銘柄のPER(株価収益率)や予想株式益回り。
移動平均線からの乖離。火曜発表の信用残、水曜発表の裁定残などの推移と比較。
単純な作業に過ぎませんが日々各種の数字を追いかけることで、見えてくるものがある筈です。

かつての証券界に生息していた先輩たちも鉛筆で罫線を引いてそこから得るものがきっとあったことでしょう。
今はパソコンで罫線は自由自在に操作できますから相当な時間の節約になります。
さらに言えば、「わからないことはわからない」として人に聞いたりして調べることも重要。
「わかったふりしていつまでもわからない」が最悪です。
実際、企業取材の現場では自分が納得いかない時はトコトン聞いてくることにしています。
結構突っ込んで聞くことで見えてくるものもあるような気がしてなりません。アッサリは格好良いのですが、貪欲なしつこさの方が株式相場では役に立ちます。
森羅万象が自分にも市場にも通じることになってくることでしょう。

そう考えると、株式市場というのは、こよなく楽しく面白い知的活動の場に変貌してくるに違いありません。もちろん、この楽しみの境地に至るまでには相当な時間の鍛錬が必要かも知れません。

 

櫻井 英明(さくらい えいめい)
ストックウェザー「兜町カタリスト」編集長

日興証券での機関投資家の運用トレーダー、「株式新聞Weekly編集長」などを経て、2008年7月からストックウェザー「兜町カタリスト」編集長。
幅広い情報チャネルとマーケット分析、最新経済動向を株式市場の観点から分析した独特の未来予測に定評があり、個人投資家からの人気も高い。

 

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