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「シェール革命」とは何だったのか

シェール革命

 アメリカは「シェール革命」によって石油産出国の中東やロシアを脅かす存在になると言われましたが、原油価格の暴落で、2015年に多くの石油会社が赤字になってしまいました。最近は「シェール革命」なる言葉を聞く機会も減ったようですが、これは一体何だったのでしょうか。

シェール革命が起きたのは掘削の技術が進んだため

 「シェール」(Shale)とは、「頁岩」(けつがん)と呼ばれる、泥が固まってできた岩石の中でもはがれやすい性質をもった岩石のことです。頁岩からなる層(シェール層)から採れる天然ガスや原油が「シェールガス」であり「シェールオイル」です。シェール層がアメリカや中国などに多く存在しており、この層が資源の宝庫であることは以前から指摘されていました。

 数万年から数億年という長い時間をかけてつくられたシェール層は、地下2,000メートルより深くにあり、掘削が難しく莫大な費用が掛かるため、経済的観点から諦められていました。しかし2006年以降、技術開発が進んだことで生産につなげられるようになりました。

 この結果、2001年以降減少傾向にあった米国の天然ガス生産量は06年から増加に転じ、米国の天然ガス輸入依存度および国内価格が低下するなどエネルギー事情に大きな影響を与えました。これが「シェール革命」と呼ばれるもので、オバマ大統領も2期目就任当初、エネルギー政策を優先課題としてシェールをその中心に置きました。

 そこまで注目されていたにもかかわらず、以前ほど「シェール革命」という単語を耳にする機会が減ったように思えます。そこには、原油価格が大きく下がったことが影響しています。原油価格の下落の要因として考えられるのは、シェール革命によって原油の供給が多くなったことや、OPEC(石油輸出国機構)が減産を見送ったこと、中国での成長の鈍化や欧州の経済不安など世界全体での経済先行き懸念などです。

 中でもOPECが減産を見送った背景には、世界最大の産油国であるサウジアラビアの思惑があると言われています。シェールオイルが増産され続ける中で、産油量を減らしてしまうとアメリカにシェアを奪われる――そう考えての「シェール革命つぶし」だったと指摘されています。

 いずれにせよ、2014年夏には1バレル=100ドル以上もあった原油価格も、2016年2月の底値は1バレル=26.05ドルにまで大幅に下落しました。その後持ち直したものの、今でも1バレル50ドルに満たない水準です(2016年6月13日現在)。

 この原油価格の暴落で、アメリカのシェール大手企業は黒字から一転赤字、中小の会社は破たんに追い込まれることになりました。報道によれば、2016年初から4月中旬までの北米エネルギー企業の倒産は前年同期比3倍の21社で、その大半がシェール関連企業だそうです。日本の商社などもシェールガス・オイルの事業に参入しており、かなり大きな損失を被っているようです。

シェールはこれからどうなるのか

 減産を余儀なくされているものの、それでもシェールガス・オイルの産出は続いています。各シェール関連企業は、掘削にかかるコストを減らそうと技術開発に力を入れたり、また、産出しやすい(低コストで産出できる)地域で掘削を続けています。

 シェール革命によって、暮らしに欠かすことのできない石油が安価に得られるようになりました。反面、環境汚染や原油価格の低迷など思わぬ影響も出ています。今もアメリカでは、シェールに関する新たな技術開発が進んでいるようです。革命はまだ終わっていないのかもしれません。 

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