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ヒラリー・クリントン氏、初の女性米国大統領になるか?

Hillary Clinton
(写真=PIXTA)

 2016年6月7日、サウスダコタ、ニュージャージー、ニューメキシコ、カリフォルニア各州の予備選挙で勝利したヒラリー・クリントン氏が、民主党の米国大統領選候補指名を確実なものとしました。

 共和党はドナルド・トランプ氏を指名することが確実なため、ヒラリー・クリントン氏とトランプ氏の一騎打ちとなります。

 もしヒラリーが当選すれば、アメリカ史上初の女性大統領が誕生します。ヒラリーがどのような人物で、どのような政策を掲げているのかについて解説します。

華やかな経歴を持つヒラリー・クリントン氏

 ヒラリーは1947年10月、イリノイ州シカゴで生まれました。小さい頃から政治に興味を持ち、名門女子大のウェルズリー大学(マサチューセッツ州)在学中には、下院共和党議員総会でインターンとして働きました。同大学を優秀な成績で卒業後は、イェール大学のロー・スクールへと進学して法律を学び弁護士資格を取得、全米で最も優秀な弁護士100人にも選出されています。

 1975年には、イェール大学で出会ったビル・クリントン氏と結婚しました。夫ビルが1993年に大統領に就任したため、ヒラリーはアメリカ合衆国のファーストレディーとなりました。この時、国主導型の健康保険制度導入を試みましたが、生命保険会社、製薬会社などの強い反発に遭い失敗しています。

 その後、ヒラリーは民主党の大統領予備選に出馬するもオバマ大統領に敗北、2008年にはオバマ大統領から国務長官に指名されました。外交的にはアメリカの強い軍事力によって、世界の秩序を安定させる方針を主張しています。

夫のビルが大統領の時、「わたしは家庭でクッキーを焼いて、満足しているような女性ではありません」と発言し、全米の多くの女性から批判を浴びましたが、ビルとの間には1人の娘がおり、孫も2人います。

ヒラリーが大統領になった場合、どのような経済政策がとられる可能性が高いのでしょうか。

富裕層ではなく中間層を支援

 ヒラリーの政策は、政府が経済に積極的に介入する点が特徴です。まずヒラリーが掲げているのが「税負担の公平化」です。

 ウォールストリートの大企業や超富裕層が法の抜け穴を利用し、本来負担すべき税金を支払っていないことを問題視しています。大統領に就任した際には、利益や雇用を海外に流失させる大企業を優遇するような法の抜け穴をつぶし、富裕層向けの税金優遇措置を是正するとしています。

 法の抜け穴をつぶして確保した財源を、ヒラリーは富裕層ではなく中間層への支援に振り分けると主張しています。

 具体的には、大学進学・卒業支援を充実させるとしています。アメリカでは4,000万人もの学生が学資ローンを抱えており、その総額は1兆ドルにも上ります。中には10%以上の高金利のローンを抱えている学生もいます。多くの人が質の高い教育を受けられるようにするため、学費を抑えて進学をしやすくするだけでなく、すでにある借金を低金利なものに借り換えられるようにして、借金返済の負担を緩和する考えのようです。

賃金上昇のために中小企業優遇とインフラ投資を促進

 ヒラリーはまた、中間層の所得を向上させる施策を主張しています。そのために中小企業の優遇税制の導入や、インフラ投資を行うことで仕事を生み出そうと考えています。

 具体的には、インフラ投資「機関」を設立して公共の資金を①空港、港、橋などへ投資、②ブロードバンド・ネットワークの構築、③再生可能エネルギー分野へ投資などを提案しています。

 また、世帯所得を上げるために女性の労働力をフル活用することを主張しています。有給での産休や育休を充実させ、公平なスケジュールや公平な給与を実現させるとしています。

日本の輸出産業は厳しい戦いを強いられる可能性大

 最後に、もしヒラリーが当選した場合、日本へどのような影響があるのでしょうか。

 国務長官時代には環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に賛成の立場をとってきたヒラリーですが、大統領選では反対の立場を主張しています。理由はTPPがアメリカ国民の雇用創出や賃金上昇、国家安全保障の強化につながるのであれば賛成するが、現時点ではその条件を満たしていないからとしています。

 また、日本が円安誘導をしていると批判しており、日本の自動車などの輸出産業は、ヒラリーが当選すれば厳しい状況になることが懸念されています。

 米国大統領選は日本以外にもさまざまな国に大きな影響を与えるため、世界中がその行方を見守っています。

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