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東京五輪まであと2年。場所にとらわれない働き方は日本で定着するか?

(写真=PIXTA)

働き方改革の加速や、東京五輪開催中の交通混雑の緩和をねらい、政府がテレワークの導入を積極推進。2020年に導入企業を12年度比3倍にすることを目指しています。テレワークの拡大は情報漏えい対策の強化など、システム構築・情報サービス企業に追い風です。

労働人口の確保や業務効率改善に寄与

情報通信技術(ICT)を活用し、時間や場所にとらわれず柔軟に働く「テレワーク」を推進する官民の動きが活発となっています。テレワークには、自宅で作業する在宅勤務、顧客先や移動中などに携帯端末で仕事をするモバイルワーク、サテライトオフィスなどを就業場所とする施設利用型勤務があります。

労働人口の確保と労働生産性の向上が社会的な課題となるなか、テレワークは育児・介護で働く時間や場所に制約がある人や、労働意欲のあるシニアの就労を促す有効な手段となり得ます。また、柔軟な働き方によって、働き手が計画的・集中的に仕事を行うようになれば、業務効率の改善につながる点もテレワークの効果として期待されています。

そのほか、企業にとっては、オフィス維持費や通勤費の削減、非常災害時の事業継続確保、有能・多様な人材を採用しやすくなるといったこともメリット。通勤者が減ることによる交通混雑緩和および環境負荷低減の効果なども注目されています。

東京五輪開催時の交通混雑緩和をねらう

政府は、2018年6月に公表した成長戦略「未来投資戦略2018」などにおいて、テレワークを強力に推進していく姿勢を示しています。主な施策としては、テレワーク促進の国民運動化があります。具体的には、20年の東京五輪の開会式当日に当たる7月24日とその前後数日を「テレワーク・デイズ」と定め、参加する企業・団体・自治体が一斉に在宅勤務やモバイルワークなどを行うイベントを20年まで毎年開催。18年は7月23日~27日に設定され、全国1,400近くの企業などがテレワークの実施・トライアルに参加したもようです。

こうした取り組みは、企業などにテレワークの浸透を図り、官民挙げた働き方改革を一段と加速させる目的に加え、2年後の東京五輪期間中に予想される首都圏の交通機関の混雑緩和につなげたいねらいがあります。12年に開催されたロンドン五輪では、移動に支障が出る懸念からテレワークの活用が呼びかけられ、市内の企業の約8割が導入した結果、交通混雑を回避できたといわれています。

働き方改革の動きに加え、災害時の事業継続計画(BCP)の一環として必要との認識などから、大企業を中心にテレワーク導入に対する意識も高まりつつあります。

総務省の通信利用動向調査によると、17年時点でテレワークを導入している企業の割合は13.9%。さらに、従業員数300人以上の企業に限ると同割合は23.0%に達します。政府は20年にテレワーク導入企業を12年度比で3倍に増やす目標を掲げています。

情報漏えい対策などシステム環境の整備が重要に

高速通信回線や携帯端末の普及をはじめ、テレワークのための技術水準はすでに十分なレベルに達しており、今後、企業側の働き方に対する意識の変化が一段と進めば在宅勤務やモバイルワークなどがさらに広がることが期待されます。

テレワークの導入拡大はICT関連サービスの需要増につながります。例えば、テレワークは会社の外で仕事をすることから、セキュリティ・情報漏えい対策の強化に加え、勤怠管理システム、複数の人の間で情報共有やメッセージ交換を円滑に行うためのグループウエアなど、システム環境の整備が重要となります。情報システムを導入する際に最適なシステムになるようコーディネートするシステムインテグレータなど、システム構築・情報サービス関連企業にとって追い風となるでしょう。

また、施設利用型のテレワークが浸透してくれば、オフィススペースを提供するビジネスも注目されるものと考えられます。これらビジネスには、例えば鉄道事業者やカラオケボックス運営会社など、異業種からの参入も目立っています。

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