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先物上場で流動性向上が期待されるマザーズ市場

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(写真=PIXTA)

・ 7月19日に東証マザーズ指数先物が上場、マザーズ市場は個人が主力で値動きが大きいのが特徴
・ 先物売りによるヘッジや裁定取引が可能になり、投資家層の拡大につながるとの期待がある
・ 東証マザーズ指数構成の時価総額上位銘柄をスクリーニング

マザーズ市場は個人の売買シェアが約7割、値動きも大きい

 7月19日に東証マザーズ指数先物(以下、マザーズ先物)が大阪取引所に上場しました。新興企業向け株式市場を対象とする上場先物商品は国内で初めてです。マザーズ市場は、高い成長可能性を有する新興企業に資金調達の機会を与えるとともに、投資家に成長企業への新たな投資機会を提供することを目的に、1999年11月に開設されました。7月20日時点で235社(うち外国会社1社)が上場し、時価総額は約3.4兆円となっています。

 マザーズ市場の特徴としては、東証1部市場と比べて中小型株の比率が高く、個人投資家の短期もしくは投機的な売買が入りやすいことから、株価指数の振れが相対的に大きいことが挙げられます。マザーズ市場の総売買代金の約7割は個人投資家が占めており、海外投資家が同6割ほどの東証1部市場と大きく異なります。日経平均株価とマザーズ指数の全379営業日(2015年1月5日~2016年7月20日)における日中値幅の変動率の推移をみると、マザーズ指数の変動率の方が大きかったのは300営業日(79%)でした。(2015年1月以降の日中値幅の変動率の平均をみると、日経平均株価が1.44%なのに対し、マザーズ指数は2.34%、2016年1月以降では日経平均株価が1.92%、マザーズ指数が3.52%(いずれも7月20日時点))。大型株が全般にこう着している局面では、値動きの軽いマザーズ市場の銘柄等が個人投資家の関心を集めやすい傾向にあります。

時価総額上位銘柄ほど先物の影響を受けやすいとみられる

 マザーズ先物の登場により、先物売りを活用したリスクヘッジや裁定取引が可能となることで、マザーズ市場の流動性向上と投資家層の拡大につながると期待されています。東証マザーズ上場銘柄には空売りできる貸借銘柄が少ないものの、先物を売って現物の価格変動リスクを軽減できれば、機関投資家等の大口投資家も市場に参入しやすくなり、取引量が増えるとの見方があります。また、マザーズ先物の取引に厚みが増して流動性が高まれば、裁定業者の現物と先物を組み合わせた売買が増加する可能性もあるでしょう。一方、マザーズ先物で短期もしくは投機的な売買が活発となれば、マザーズ市場の相場変動が一段と大きくなり、思わぬ損失拡大となってしまうリスクを指摘する声もあります。

 個別銘柄では、裁定取引にともなう売買が増える可能性等から、指数の構成ウエートの高い銘柄ほどマザーズ先物の影響を受けやすいとみられます。マザーズ指数構成銘柄の時価総額上位には、CYBERDYNE(7779)、ミクシィ(2121)、そーせいグループ(4565)等があり、上位3銘柄だけで時価総額シェアの約3割を占めています。
 
表1(注)マザーズ時価総額上位15社。データは7月19日時点。アカツキ(3932)は2016年3月17日上場のため年初来株価変化率は算出せず
 公表データより作成

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