「節分天井」
「節分天井、彼岸底」というアノマリー。
2月の初めが株価の天井で、そこから3月後半にかけて株価が下がっていくということ。
しかし、これは米相場から来ているので当たらないことが多いです。
過去の動きからは、「2月は月足陽線になりやすい。商いは閑散」というのもあります。
節分から彼岸までは「花見ラリー」。
配当権利取りの買いが増えるからという、もっともらしい理由もあります。
「前年10月が下落していると、2月は軟調」というアノマリーもあります。
こういうアノマリーが好きな人は多いみたいですね。
夏には「七夕天井、彼岸底」というアノマリーがあります。
7月7日の七夕近辺で株価は天井を付け、その後下落。
大阪で天神祭が開かれる時期(7月下旬)に株価が底を打つというアノマリー。
「節分天井」ほどは知られてはいないようです。
更に細かいのは「戎天井」。
大阪の今宮戎神社で、1月10日頃に行われる「十日戎」の頃に株価は天井を付けるというアノマリー。
相場は「天」と「底」という言葉が好きみたいです。
「天井三日、底百日」という実感のこもった格言もあります。
一方で、「天井売らず、底買わず」。
「天井や底は、上がっている最中や下がっている最中には判断できないもの。
反転を確認して、あそこが天井だったとわかるもの」。
これも頭でわかって体で理解しにくい格言。
「大回り三年、小回り三月」となると、途方もなく長い時間軸に思えてきます。
「心理」
株価は何で決まるかという質問は結構、難しいです。
経済指標だ、需給だ、過去の値動きだ、業績だ、など、さまざまな意見が出てきます。
ただ、最後の最後は「心理」が決めると考えています。
投資家さんは皆、市場では、それぞれが主人公。
その主人公たちが、最終的に投資の決定要因とするのは「売れば損はない」「買えば儲かる」といった心理。
これ以外にはない筈。
その心理の決定要因として存在する脇役が、諸々の指標や報道ということになるのでしょう。
だから、市場で勝ち抜くコツは「比較多数が傾く心理を読む切ること」。
株価はさまざまな指標を基にして、多くの人が投資判断をします。
その最終決断である投資行動をどちらに取るのかを読む技術は、必ずしも経済や株式投資の知識だけではないでしょう。
日本のバブル崩壊過程を思い起こしてみましょう。
不動産は投げ売り状態、株価は暴落、預貯金金利はほぼゼロ、未来は真っ暗だった1990年代。
少し前まで日本の都心の不動産は争って買われました。
人の心理は不思議なもので、あふれたり値下がりしたりすると、求めることをしません。
でも、物不足になったり値上がりし始めたりすると、たちまち、ないものねだりに変化します。
その触媒は、多種多様な格好をしているのです。
要は、大多数の心理がどこへ向かうかを敏感に察知することが必要ということ。
難しくはありません。
自分がどう考えるか、人がどう考えるかを検討し、どんなシナリオがあれば、心理が傾くのかを準備。
そして、それが現実化したタイミングが、投資の絶好時になるはずです。
「泰然」
人類は悪い方向へ進まないというのが相場観の大前提。
もし、相場が悪化して株価が下落するとしたら、それは次のステップのための準備。
そんな思考法は間違っていないでしょう。
そうでなければ、地球そのものあるいは人類社会は進化しません。
「人類は、さまざまの事柄を解決する」。
そういう壮大な相場観も必要です。
「今日とか明日だけ」を考える、というか「今日とか明日だけ」を見るから、
しばしば相場予測は間違います。
あるいは、先のことを見ていても、その結果をなかなか深く考えない傾向。
経済指標の発表スケジュールには詳しくても、中身は吟味しない傾向。
しかも、その経済指標そのものの信頼性は薄いときています。
中国のGDPや米雇用統計などが代表例でしょうか。
しばしば、改定値は速報値と大きく変わります。
そこに相場動向の根拠を持ってくるから見間違えるのでしょう。
そうではなく、リズムを感じることのほうが大切だと思います。
あるいは、信用取引や裁定取引の動向などのキャッシュの動きの方が重要でしょう。
市場指標の公表数字だけを見つめること。
市場指標は経済指標ほど、いい加減ではない筈。
そして、たとえ週間遅れの数字でも、そこに真実はある筈です。
個々人、各機関投資家の動いた軌跡が市場の売買動向や指標。
何を考え、この結果になったのか。
そして、これからどう考えるのか。
日夜これを考えることで、相場観は磨かれてくるに違いありません。
そもそも・・・。
市場関係者とか投資家さんというのは職人さんのようなもの。
アチラコチラに右顧左眄するのではなく泰然自若。
自信と誇りと情熱をもって相場に対峙しなくてはなりません。
頑固に相場を見続けること。
終わりのない旅を日々続けること。
誰も見つけていない法則やシナリオを描き続けること。
これは結構キツイことです。
しかし、原料や製法にこだわるのが職人さん。
あるいは、技術や製品にこだわり続けるのが職人さん。
ある意味で完璧なこだわりの世界。
そんなことは考えたこともない、という人も多いことでしょう。
そんな域に達するまでは、途方もない時間がかかるのも事実。
そして、それでAIに勝てるとも思えないのですが、どうしてもそう思ってしまいます。
櫻井 英明(さくらい えいめい)
ストックウェザー「兜町カタリスト」編集長
日興証券での機関投資家の運用トレーダー、「株式新聞Weekly編集長」などを経て、2008年7月からストックウェザー「兜町カタリスト」編集長。
幅広い情報チャネルとマーケット分析、最新経済動向を株式市場の観点から分析した独特の未来予測に定評があり、個人投資家からの人気も高い。
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