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「要諦」― 兜町カタリスト櫻井英明のここだけの株話

「要諦(ようたい・ようてい)・・・物事の肝心なところ」

1990年代半ば。日興証券勤務時代に、都内の支店の営業課長から、
私はエクイティトレーディング室に異動しました。
広いトレーディングルームで法人のオーダーをさばく部門。
「エクトレ」なんて呼んでいましたが、実際は古の株式部。
市場部の「場立ち」育ちの人たちが多く、徒弟制度の延長線みたいな場所。
最初の日に「板と手口教えて」と場電に聞くと、「あとあと」と追い返されました。
営業から来た人間は異邦人みたいなもの。
仕事にならないので外国株式の先輩に引き回しをお願いしたところ、翌日から状況は一変。
彼らは何でも言うことを聞いてくれるようになりました。
感じたのは、彼らは日々の動きの中核を的確に掴む習性や嗅覚を持っているということ。
何が場の中心で、何が場の話題なのかということを的確に指摘するのです。
若い頃から場で生きてくると、多分ああいう感性が養われるのでしょう。
それが何を意味するかは理解していなくとも、種を抽出し反応できる技術。
そういう習性は、何年かトレーディングルームにいる間に自分でも身につきました。
これはある意味、財産でしょうか。
営業部門で「明日は何が起こる」と考えるよりも、もっと場の近くで相場を感じられたからです。
だからという訳ではありませんが、寄り付き前には、その日の相場の「柱」を考えます。
「ポイントは悪材料で売り気配の〇〇が寄るかどうか。そして、1月月次の悪かった▲▲が足を引っ張るかどうか」。
こういう推論を立てるのです。
結果は〇〇は大商い。▲▲は日経平均株価の下落寄与度トップ。
習性や嗅覚が相場の核心を捉えることが時々あります。
しかし、それが何の意味をもっているかはわからないことも多いもの。
体や感覚で感じることはあまり間違えず、頭で考えることはしばしば間違えます。
場の最中に、米中貿易摩擦がどうだとか、ブレグジットがああだとか論じても耳には入りません。
その他製造セクターが、東証33業種の値上がり8位から5位になったからといっても、相場は見えません。
枝葉末節にこだわる一方で、頭を世界経済に向けたりするから、見えなくなるものは多いようです。
株の世界に棲息しているからには、いちばん重要なのは「今、何が起きているのか」。
証券報道の世界も、場の立っている時間は同じでしょう。
「今、場で何が起きているのか」を顧みずに、余計なことを詮索していても意味はありませんし響きません。
そんな思いで日々実況に臨んでいます。
基本は「場の核心は何か」。
数字をいじくり回しても、罫線をひっくり返しても、需給を眺め回しても、結論は出ないでしょう。
そうではなく、「今起きていること」を忠実に見つめることが必要だと考えています。
「値動きと売買高こそすべて」と言ってしまうと言い過ぎかも知れませんが、結論は相場の要点を自分でまとめること。
それこそ、相場観の要諦だと思います。
そんなに難しくはない筈です。

「理外」

今年初の「西向くサクライ」で熊本に向かったら、その日の日経平均株価は上昇。
「この日は株高の特異日アノマリー」なんてことも・・・。
すべて根拠は希薄。
過去の経験則の延長線上でしかありません。
でも、株価はそれなりにそういう動きをすることもあるから不思議なもの。
コレがいわゆる「理外の理」ということでしょう。
「理外の理」とは、「普通の道理や常識では説明のできない不思議な道理」。
あるいは、「普通の道理では判断することの出来ない難しい道理」。
つまり、「理外」は理屈だけでは説明のつかないこと。
常識を超えた理。
「相場は、通常考えられる理屈通り、計算通りには必ずしも動かないという意味」とされます。
昔の証券会社の株式部や市場部などは、「理外の理」の典型みたいなもの。
「調査部」とか「リサーチセンター」などとは相容れそうもない話題ばかりでした。
今でも不思議なのは、「なんで場電出身の人たちは紙鍋が好きなんだろう」ということ。
市場部長とか場電長と食事に行こうとすると、なぜか兜町の端にある紙鍋のお店に連れて行かれました。
この理由は今でもわかりません。
私が所属していた証券会社だけでなく、他社にもこの傾向があったように聞きます。
株と紙鍋。
なんの因果もないのかどうか。
そのうち解明したいと思います。
それにしても・・・。
真面目な経済指標を使った相場予測よりも、「理外の理」みたいな予測の方が好きな人は多い。
確かに、数字だけで予測を結論付けることができないのが株式相場。
「理屈に当たり、相場に外れる」という格言の通りでしょう。
別の格言では、「理と非との中にこもれる理外の理、株の高下の源と知れ」。
自分の経験則による「理外の理」をたくさん持つことができれば、相場は更に楽しく面白くなるに違いありません。
しかめっ面で数字をこね回すから相場は縁遠くなるもの。
罫線だって紙芝居と思えば、ややこしくもないでしょう。
難しく語られる話に本質はないものです。
「理屈は後から貨車でくる」という格言。
動き始めには説明のしようがありませんが、トレンドに追随して材料と解釈が不思議と後から次々と出てくること。
「相場の説明、言い訳は後からついてくることが多い」という意味です。

月曜の朝7時15分からの兜町で「朝活」というのを行っています。
聞いてみたのは、「ホンマルキとハナマルキの違い知ってますか」。
会場はシーン。
「では誠備は?マルキは?」。
誰も知らない世界と化していました。
仕手株なんて既に失われた言葉。
記憶の彼方の世界です。
これは、証券市場の世代交代のシルシでもあるのでしょう。
良いことや悪いことは混在しているのが相場の歴史ですが、歴史は消えつつあるということなのでしょう。
当然ながら「仕手」なんて言葉は市場から消えました。
そのうち「手振り」とか「マル」なんて言葉も消えるのでしょう。
きれいになった市場には、きれいな相場が似合うはずです。
今年年初から、セミナーで全国を回りながら私が質問しているのは・・・。
「あなたは、100%儲かる指示を出すAIに従いますか?」。
「ハイ」と答える人が少しずつ増えてきたような気がします。
「100%なら従ってもいいかも。」という声も会場から聞こえてきます。
でも、「すべての資金をAIに任せますか。
あるいは、半分はAI、残り半分は自分の判断にしますか?」と伺うと・・・。
ほぼ全員が「半分は自分の判断で投資したい」。
これが本音なのでしょう。
相場には、やはり「生き様」が必要ということ。
相場に人生を投映していると考える投資家さんは多いということ。
人の心理というのは、興味深いものです。

 

櫻井 英明(さくらい えいめい)
ストックウェザー「兜町カタリスト」編集長

日興証券での機関投資家の運用トレーダー、「株式新聞Weekly編集長」などを経て、2008年7月からストックウェザー「兜町カタリスト」編集長。
幅広い情報チャネルとマーケット分析、最新経済動向を株式市場の観点から分析した独特の未来予測に定評があり、個人投資家からの人気も高い。

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