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フィンテック クラウド会計ソフトでできること

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(写真=PIXTA)

 法人や個人事業主の“通信簿”といえるのが、財務諸表です。銀行へ借り入れを申し込む際には、たいてい提出を求められますし、税務申告にも欠かせません。この財務・会計業務は簿記など専門的な知識が必要なため、手間がかかるものです。税理士や会計士に依頼したり、担当者を雇ったりすることもできますが、当然お金がかかります。

 そこで最近、なるべくコストを抑えたい中小企業や個人事業主の間で人気を集めているのが「クラウド会計ソフト」です。

そもそもクラウド会計ソフトとは

 「クラウド」型になる前から、会計ソフトというものは存在していました。しかし以前の会計ソフトはライセンスを購入し、パソコンにインストールして使うパッケージタイプが主流でした。このタイプの欠点として、インストールしたパソコンを使わないと作業ができない、税制の変更など法令改正があった場合の対応に時間がかかる――などが挙げられます。また、パソコンが壊れて、データを失ってしまう恐れもありました。

 そこで生まれたのが、クラウド会計ソフトです。会計ソフトのパッケージを購入しなくてもインターネットにつながる環境であれば外出先から使えますし、複数人での同時利用も可能です。法令改正への対応はクラウド会計ソフトの会社側が行ってくれます。パソコンが壊れてもデータはインターネット上に保存されているため、別のパソコンやスマホで対応できるというメリットがあるのです。

代表的なクラウド会計ソフト2種

● freee(フリー)
 代表的なクラウド会計ソフトといえば、2016年3月時点で60万を超える事業所で使われているというfreeeでしょう。勘定科目(売掛金、前渡金、のれんなど仕訳された費用の科目名)をプルダウンで選んで入力する方式で、会計の知識が少なくても簡単に使用することができます。

 無料で使える機能としては、請求書/見積書作成、売掛/買掛金管理、自動消し込み機能や各種レポート(資金繰りレポート、取引先別の売掛/買掛金レポートなど)、確定申告書、会社法に準拠した決算書の作成などがあります。マイナンバー対応、年末調整の機能がある「給与計算freee」というクラウド給与計算ソフトもあります。

● MF クラウド会計
もう一つ有名なソフトに、マネーフォワードの「MFクラウド会計」があります。一番の特徴は、使うほどに賢くなる自動学習機能です。過去に登録した仕訳内容を学習し、似たような内容が入力されると、勘定科目を高い精度で自動提案してくれます。

 またクラウド会計ソフトは銀行口座やカードとの連携機能を備え、取引明細を自動取得してくれるため、銀行取引を手入力する必要がありません。MFクラウド会計には多くの金融機関が対応しています。

単なる帳簿にとどまらず ネット上での与信判断管理へも進出

 クラウド会計ソフト導入の目的の多くは、仕訳入力や財務諸表の作成などを楽に、安く済ませることです。しかしクラウド会計ソフトを導入するメリットは、それにとどまりません。

 中小企業や個人事業主の大きな悩みの一つが資金繰りです。ビジネスの規模が小さい、事業歴が浅いという状況では、金融機関側も融資に慎重になるものです。クラウド会計ソフトのデータは、その会社の詳細が読み取れる情報です。そのため最近では、クラウド会計ソフトのサービス事業者が、ユーザー企業に許諾を得て、その財務データを金融機関に提供するサービスを始めています。金融機関はこのデータを事業資金の融資審査の判断材料のひとつとして活用することができます。ソフトを多くの企業が使えば使うほど、データが増えてリスクを測るための材料が集まり、精度も高まっていくでしょう。

 これまで過去のお金の出入りや今の状態を把握するために使われてきた会計ソフトですが、今後、守備範囲を拡大させていくのかもしれません。

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