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終盤戦に突入する米大統領選挙

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(写真=PIXTA)

9月26日に第1回目の大統領候補による討論会が開催され、11月8日の投票日に向けて、米大統領選挙がいよいよ終盤戦に突入していきます。

討論会は、大統領候補によるものが3回、副大統領候補によるものが1回開催されます。有権者からの関心も高く、全米にテレビで生中継されるため、その優劣が選挙情勢にただちに影響することになります。

大統領選挙は接戦の様相を呈しています。9月25日時点の支持率をみると、民主党のヒラリー・クリントン候補が共和党のドナルド・トランプ候補をリードしているものの、その差は2.5ポイントまで縮小してきています。

また、大統領選挙は州ごとに有権者がどの候補に投票するかを明らかにしている選挙人を選び、各州の選挙人が候補者に投票する形式をとっており、選挙人538人のうち、270人を獲得すれば勝利となります。大半の州では勝者が選挙人を総取りする方式を採用しているため、全米の支持率もさることながら、州ごとの情勢が重要となってきます。

こうした点を加味した米政治専門サイトのリアル・クリア・ポリティクスによる選挙人の獲得予測(9月25日時点)をみても、トランプ候補の獲得が有力視される選挙人が165人に対して、クリントン候補は198人とリードが縮小しています。

クリントン候補には国務長官時代のメール問題、夫妻で運営する財団への便宜供与問題に加えて、健康問題が浮上していることもあり、選挙戦の行方は予断を許さない状況といえるでしょう。

両候補の主な政策の内容をみると、まずクリントン候補は富裕層への課税強化、最低賃金の引き上げ等を通じて、格差や不公平を是正する一方、インフラや製造業、科学技術、クリーンエネルギーへの投資等によって成長を促進する政策を掲げています。また、海外への租税回避を抑制し、雇用創出や賃金上昇につながらない貿易協定には反対の姿勢を示しています。

一方、トランプ候補は、①税制改革、②規制緩和、③貿易政策、④エネルギー政策を経済政策の4つの柱として主張しており、所得税の最高税率や連邦法人税率の引き下げ、ビジネスや雇用創出を阻害する規制の緩和等、伝統的な共和党の施策を盛り込んでいます。一方で、環太平洋経済連携協定(TPP)撤退や北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を主張する等、保護主義的な色彩が強い点は、伝統的な共和党の施策と異なります。

ただ、いずれの候補が当選したとしても、政策の実現には議会との協力が不可欠であるため、大統領選挙と同時に実施される議会選挙の動向も重要となります。仮に大統領と上下両院の多数党が異なる場合、または上院、下院でそれぞれ違う政党が多数を占めるねじれ構造のもとでは、大統領が掲げる政策の進展が期待しづらくなります。

現時点では、下院は共和党が多数を維持する公算が大きい一方、上院は民主党が多数を奪回する可能性も報じられる接戦となっており、議会のねじれによる政策の停滞には注意が必要な状況です。

大統領選の展開が金融市場に及ぼす影響を考えますと、クリントン候補が勝利すれば、政策的にオバマ政権と近いこともあり、米国の政策をめぐる不透明感が後退することが好感され、米国株の上昇やドルの堅調な推移が見込まれます。

一方、トランプ候補が勝利した場合、政策の大幅変更が不安視され、米国株やドルに売り圧力が強まる展開が想定されます。加えて、議会の協力を得られなければ政策の実現は困難であるため、トランプ氏が大統領就任後に共和党主流派と政策の折り合いをつけ、現実的な政策を示すことができるかが注目されます。