世界的なテロやサイバー攻撃対策の強化
ロシア、中国、北朝鮮等の軍事プレゼンスの拡大により、国際社会の緊張が高まっていることに加えて、サイバー攻撃を含むテロの脅威が拡大しています。2015年は世界のテロ発生件数と死傷者数がどちらも12年以来初めて減少に転じました。しかし、フランス等の欧州やアメリカの銃乱射事件、バングラディッシュのダッカ襲撃事件等、発生場所や攻撃目標が拡大しており、安全保障の拡充が喫緊の課題であることに変わりはありません。
米国防予算は緩やかな増加トレンド
2016年2月、オバマ大統領が議会に17会計年度(16年10月~17年9月)の予算教書を提出し、そのなかで国防総省は16会計年度成立予算比0.4%増に相当する総額5,827億ドルの国防予算を要求しました。世界的な情勢不安の深刻化を反映し、16年度と17年度は緩やかなペースでの増加傾向が続いており、新政権下でも軍事費は拡大する可能性が高いと考えられます。
米国防総省は17年度予算について、研究・開発・試験・評価への予算を16年度から28億ドル増やし、718億ドルとしています。科学技術等への投資総額については1,839億ドルと、16年度比で41億ドル減になりますが、そのなかではステルス戦闘機のF-35、空中給油・輸送機のKC-46A、弾道ミサイルのBMDS等に重点投資する見通しです。
米国外市場の高成長期待
防衛業界では米国外の市場も主な成長源として期待されています。米防衛大手5社(ボーイング、ロッキード・マーチン、ノースロップ・グラマン、レイセオン、ゼネラル・ダイナミックス)をあわせた防衛関連売上高は、過去数年間にわたり米国外が伸びをけん引しています。
直近となる2015年は、同大手5社の防衛関連の売上高が14年比横ばいだったのに対して、米国外の防衛関連売上高は同10%増となりました。また、防衛関連売上高全体に占める米国外比率は09年の16%から15年には24%に上昇しました。米防衛大手企業では、米国外の売上高が今後も堅調に伸びるとの見方を示しているところが少なくありません。
米国が中東への戦闘機販売を承認
2016年9月には米政府がカタール、バーレーン、クウェートに対する戦闘機販売を承認しました。承認後は最大40日間をかけて上下院の外交委員会が非公式の審議を行い、さらに30日間の公式審議に進むことになります。
今回の販売には、カタール向けボーイングのF-15E「ストライク・イーグル」、クウェート向けボーイングのF/A-18E/F「スーパー・ホーネット」、バーレーン向けロッキード・マーチンのF-16が含まれると報じられており、受注額は戦闘機だけで最大120億ドル、部品やロジスティック・サポート、弾薬等の軍需品等を含むと200億ドルになるとの見方もあります。
15年12月には、中東、アフリカ、アジアのイスラム圏の34ヵ国がサウジアラビア主導で対テロ「軍事連合」を結成していることもあり、中東向けの戦闘機販売が正式に承認されれば、将来的な業界全体の押し上げ材料になると期待されます。今後の動向について、慎重に注目していきましょう。
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