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トルコリラが最安値を更新。相次ぐテロ事件…エルドアン大統領“独裁”への懸念も?

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(写真=Harvepino/Shutterstock.com)

FXの高金利通貨ペアとして知られる「トルコリラ」は、2017年初から下落基調を強め、対ドル、対円ともに過去最安値を更新。「非常事態宣言」がさらに3ヵ月延長され政情不安が続くなか、トルコリラの下落はいつまで続くのでしょうか。

トルコといえば1890年のエルトゥールル号事件以来歴史的に日本とは友好関係にあり、親日家が多いことで知られています。日本人にとっては人気の旅行先の1つでしたが、近年はクーデター未遂やテロ事件など不安定な情勢が続いており、トルコの通貨であるトルコリラも下落が続いています。

トルコリラは下落基調を強める動き、対ドル、対円で過去最安値を更新

トルコリラ相場は2017年に入ってから下落基調を強める展開となり、1月11日には対ドル、対円ともに過去最安値を更新しました。

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2016年7月15日のクーデター未遂事件以降、トルコ政府による反政府勢力に対する弾圧の動きや、過激派組織イスラミックステートおよび少数民族クルド系武装組織による相次ぐテロ事件等が嫌気され、トルコの経済ファンダメンタルズ悪化もあいまって、リラの下落基調が強まっています。

16年初から17年1月11日までの新興国通貨の対ドル騰落率をみますと、ブラジルレアルやロシアルーブルが20%超の上昇をみせる一方で、トルコリラは▲23.30%と、トランプ米政権の政策が警戒されているメキシコペソ(▲20.81%)と並び、大幅な下落率となっています。

政情不安は長期化する恐れ。エルドアン大統領“独裁”への懸念も

年明け以降も政情不安が和らぐ兆しはみられていません。

2017年1月1日には、トルコ最大都市イスタンブールの新年を祝うナイトクラブにおいて多数の死者を出すテロ事件が発生しました。相次ぐテロ事件に対抗するため、トルコ議会は1月3日に、16年7月のクーデター未遂事件後に発令された非常事態宣言を1月19日からさらに3ヵ月延長することを可決しました。延長は16年10月に続いて2回目となります。トルコ副首相は「テロ組織すべてが国家から一掃されるまで非常事態は継続される」と述べており、こうした「非常事態」が長期化する恐れがあります。

また、トルコ議会では1月9日より、大統領の権限を強化する憲法改正案の審議が行われています。改正案は一部野党の協力もあり、賛成多数で可決され、春にもその是非を問う国民投票が実施されるとみられています。憲法改正となれば、内閣が廃止され、大統領は法令を発する権限や、副大統領や政府高官を任命・罷免(ひめん)する権限等、非常に強い権限を持ちます。現在においても強権的な手法を取り続けるエルドアン大統領が最大2029年まで大統領として実権を持つ可能性があり、欧米諸国を中心に同氏の独裁化や民主主義の後退を懸念する声が高まっています。

リラ相場の不安定な地合いは継続する見通し

今後のリラ相場をみるうえでは、政情不安が和らぐかどうかがポイントになるとみられます。しかし、クルドとの民族対立は悪化の一途をたどっており、治安に対する不安もくすぶっています。

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カントリーリスクをみるうえで参考となるクレジットデフォルトスワップ(CDS、5年物)※は2014年からの平均値を上回る水準で高止まりしています。

(※クレジットデフォルトスワップとは、国や企業などに破産や債務不履行などが発生したときの保険として主に金融機関同士で取引されるデリバティブ取引の1つです。国や企業の信用力が上がっているのか下がっているのかということは、そのCDSの価格の推移を参考にするとよいでしょう。トルコの例でいえば国家が不安定な状態なために、リスクヘッジの手段であるトルコのCDS5年物の価格が上昇しています。)

トルコ固有のリスクが強く意識されている状況下において、海外からの投資資金の流入は期待しがたく、リラ相場の不安定な地合いは当面の間、継続することが見込まれます。

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