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アメリカの再利上げはいつ? ドル円相場のカギを握るFRBの利上げ動向

(写真=PIXTA)

世界の市場参加者の注目を集める、半期に一度の「議会証言」

2月14日、アメリカの中央銀行にあたる連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は、半期に一度の議会証言にのぞみました。この議会証言は1978年に定められた完全雇用均衡成長法(通称、ハンフリー・ホーキンス法)によってFRBが半期に一度、議会に報告書を提出するとともに、議長が金融政策に関して説明をすることが義務付けられているものです。ハンフリー・ホーキンス法自体はすでに失効しているのですが、慣習として報告書の提出と議長の議会証言は続けられています。経済大国アメリカの金融政策についてFRBの議長が直接説明を行う場として世界の市場参加者の注目を集めるイベントとなっています。

2月14日の上院議会証言で、イエレンFRB議長は「あまりに長く緩和の解除を待ちすぎる(利上げの実施を先延ばししすぎる)ことは賢明ではない。やがて急激な利上げが必要となり、金融市場の混乱と米国経済の後退をもたらす可能性がある」「今後の会合(upcoming meetings)で、雇用や物価が連邦公開市場委員会(FOMC)の見通しに沿っているかを評価し、見通し通りであればさらなる金利の調整(利上げ)が適切になるだろう」と述べました。

利上げ・利下げ、金融政策はFOMCで決定される

FRBが(利上げ、利下げなどの)金融政策を決定する会合をFOMCと呼びますが、このFOMCは2017年は、3月14日〜15日、5月2日〜3日、6月13日〜14日、7月25日〜26日、9月19日〜20日、10月31日〜11月1日、12月12日〜13日の7回予定されています。upcoming meetingsという表現は、「目先開催される(いくつかの)会合」といった印象で、市場では「早ければ3月の会合でも利上げを実施する可能性があるかもしれない」として、証言直後の先物市場では3月利上げを織り込む動意が強まりました。同様に為替市場のドル円相場もドル買いがみられることとなりました。

利上げのタイミングはいつになる?

ただ、3月というタイミングでは、トランプ新政権のさまざまな政策がまだ明確化しないとみられることや、一部の経済指標をもう少し見極める必要があると思われること、さらにはイギリスが欧州連合(EU)に離脱の宣言を行うのが3月とされていること、などから利上げの実施は3月でなく6月になる可能性の方が少し高いのではないかとみられます。

本当に3月の利上げが見送られた場合には一時的な失望を招く可能性がありますが、全体としては利上げをする方針に変更がないと考えられるので、失望からドルが売られたとしても一時的にとどまるでしょう。

イエレンFRB議長は1月18日にも講演を行っていますが、このなかで「2019年末にかけて政策金利を緩やかなペースで3%程度に引き上げる方針がFRB内でおおむね共有されている」と述べています。これは現状0.50%~0.75%となっている政策金利から見て、一回の利上げを0.25%とすると9回程度利上げすることになります。2019年末までは約3年ありますから、単純に考えて年約3回のペースで利上げをする可能性があると考えられます。

金利差は広がる? 真逆をいく日米の金利政策

このようにアメリカの中央銀行であるFRBは目先3月から今後数年先にかけて、政策金利の引き上げに対して前向きな状況です。一方、日銀はといえば、2月15日に黒田日銀総裁は衆院財務金融委員会で答弁を行い、「必要となればさらに金利を下げることも十分に考えられる」と発言しています。日米の政策金利の方向性はまさに真逆といった状況で、今後、金利差は広がりそうです。為替市場では息の長いドル高円安要因となる可能性があるでしょう。

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