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予算案は財政規律を維持、インドルピーは上昇傾向

Rupee
(写真=PIXTA)

● 新興国-インド
 ・ 2016 年度予算案は州議会選挙を意識して農民支援策を拡充
 ・ 補助金削減などで財政赤字 GDP 比を改善、財政規律(歳入歳出のバランスが取れた状態)を維持している
 ・ ルピーは投資家のリスクオン(リスクの高い資産に資金を充てること)や予算案を評価して堅調

2016 年度予算案は州議会選挙を意識して農民支援策を拡充

 インド政府は2016年度(16年4月~17年3月)予算案を発表しました。歳出は19兆7,806億ルピー(約32兆6,000億円=発表時のレート、GDP比13.1%)、前年度比+10.8%と、3年ぶりに2ケタの伸びとなっています。財務相が農民の所得を5年で倍増させることを掲げ、灌漑(かんがい)設備向け投資増加、農産物保険プログラムの改革、農民向け信用の大幅増加などを盛り込んだことが大きいようです。インフラ投資は道路や鉄道を中心に2.2兆ルピーの投資を行う予定です。補助金は石油製品を中心に抑制しています。

 歳入については、16年度名目GDP成長率が前年比+11.0%となり、税収が前年比+11.2%と2年ぶりに2ケタの伸びとなります。加えて、政府保有の国営企業株の売却や携帯電話の電波入札にともなう収入増も見込んでいます。

財政赤字GDP比は改善目指す、財政規律を維持

 こうしたことにより、国の歳入と歳出の差である財政収支のGDP比は▲3.5%と2015年度の▲3.9%から改善し、17~18年度は▲3.0%を見込んでいます。公的債務残高GDP比は16年度の47.1%から18年度には44.4%と低下傾向が続くとしています。公務員の大幅給与引き上げ勧告(23.5%引き上げ)については、歳出のうち経常支出の伸びが抑制されていることから今回は十分反映されていない可能性がありますが、16年4~5月の州議会選挙などを意識して農民向け支援を拡充した一方、補助金などを抑制し財政規律を維持し市場の信認にも応えた形です。

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予算案の内容を受け4月会合以降、利下げ観測がくすぶる

 モディ政権が予算案において財政規律を維持したことから、ラジャン中銀総裁が景気に配慮して利下げを行うか注目されていました。中銀総裁は「追加緩和を行うかどうかは予算案の内容にかかっている」と事前に示唆していました。特に、インフラ不足などを改善するために積極的に投資することや、財政規律を維持することが重要としていたのです。

 こうした点がおおむねクリアされたことから、4月5日の中銀会合では政策金利は6.75%から6.5%に引き下げられました。

インドルピーは投資家のリスクオンや予算案の内容を評価して反発

 インドルピーは2016年2月末にかけて1ドル68.7ルピー台までルピー安となり、13年8月の史上最安値(68.8ルピー)に接近しました。

 ですが、欧州中央銀行(ECB)の追加緩和や米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げペースがさらに遅くなりそうなこと、原油価格の反発などを受けて海外投資家のリスク姿勢が改善していることに加え、16年度予算案において財政規律が維持され、中銀の利下げ観測や景気回復期待により株式市場が上昇傾向になったことなどを市場は評価したとみられ、4月序盤にかけて66ルピー台前半まで上昇しました。

州議会選挙を控え徐々に上値重いか、中銀のルピー売り介入のリスクに留意

 今後のルピー相場については、海外投資家のリスクオンがしばらく続く可能性はありますが、4~5月の州議会選挙の結果を見極める動きなどから、徐々に上がりづらくなる可能性もあります。

 今回の選挙は与党の基盤がもともと弱い州が多いため、予算案における農民支援策を受けてどの程度劣勢を挽回できるか注目されます。ファンダメンタルズをみると、自動車販売や鉱工業生産など、改善一服するものも出てきています。2015年末にかけての内外金融市場の不安定な動きに加え、銀行の不良債権問題、輸出の弱含みなどが重しとなっています。

 加えて、ルピー高が一段と進む場面では輸出の競争力を維持し、外貨準備の積み増すことを目的に、中銀がルピー売り介入をする可能性もあり、ルピーは上がりづらくなるとみています。

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