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物流の効率化が加速、宅配ロッカーの普及に向けた取り組みなどに注目

(写真=Golden Sikorka/Shutterstock.com)

物流業界の人手不足が深刻な状況に

宅配便最大手のヤマト運輸が荷受けの総量を抑制するための宅配料金値上げや配達の細かい時間帯指定サービスの見直し、従業員の労働環境改善などを相次ぎ打ち出したことをきっかけに、物流業界の人手不足の深刻化が改めてクローズアップされています。背景には、インターネット通販の普及による宅配物の増加と、労働環境悪化を受けた人材確保難があります。

国土交通省によると、2016年の宅配便貨物の取扱個数は前年比6.4%増の約38億6,900万個と、6年連続で過去最高を更新。

一方、求職者1人当たりにどれだけ求人があるかを示す有効求人倍率は、トラックなどの運転職で2倍を超えています。トラックドライバーについては3割超が50歳以上であるなど、高齢化が進んでいることも課題です。鉄道貨物協会では、2020年度に約10万人のトラックドライバーが不足すると予測しています。

改正物流総合効率化法が施行、モーダルシフトや共同配送を後押し

こうしたなか、政府は物流効率化を後押しする環境整備を推進しています。具体的には、複数の物流企業や荷主が連携して輸送の合理化に取り組むことを促す目的で、2016年10月に「改正物流総合効率化法」を施行しています。

この法律は、トラックから鉄道や船舶などの大量輸送手段に切り替える「モーダルシフト」や、複数企業が1台のトラックを利用する「共同配送」といった取り組みに対して、税制上の特例や低利融資、計画策定経費の補助、事業開始に必要となる行政手続きの一括化といった支援措置を実施するものです。

政府は、鉄道や船舶による貨物輸送を2020年度に2012年度比で1割超増やすことを目標に掲げています。

宅配ロッカー設置に政府が補助

一方、インターネット通販拡大による荷物の小口・多頻度化や単身・共働き世帯の増加にともない再配達となる宅配物が増え、配送員のさらなる労務負担となっています。そのため、自宅以外で荷物を受け取れる宅配ロッカーの普及に向けた政府や企業の取り組みも目立ってきています。

国土交通省では、再配達に回る宅配物は現状で約2割に達し、宅配事業に携わる従業員の約1割に当たる年間9万人の労働力が再配達に費やされていると試算しています。

主な動きでは、この4月に政府が1ヵ所当たり通常150万~200万円程度かかるとされる宅配ロッカーの設置費用の半額を補助する制度を新設しました。

補助対象は物流企業、ロッカーの設置者および管理者で、競合他社も使用できるようにすることが条件です。2017年度にまず約500ヵ所への補助を見込んでいます。

宅配便大手では、配送員の負担軽減とサービス効率化に向け、すでにヤマト運輸が2022年までに宅配ロッカーを全国の駅や商業施設などに5,000ヵ所設置する計画を公表。日本郵便も現在、首都圏の郵便局などに置いている宅配ロッカーを2020年までに全国1,000ヵ所に広げる方針で、政府の補助制度は支援要因といえるでしょう。

両社は、2016年6月からJR東日本の駅への設置を始めています。住宅への設置でも、現状で普及率が1%未満とみられる戸建てに宅配ロッカーを標準装備として取り付けて売り出す住宅メーカーの動きがあります。

人工知能(AI)で物流を効率化

さらに、将来的に人工知能(AI)などの技術で物流を大幅に効率化しようとの取り組みも進んでいます。例えば、政府の「人工知能技術戦略会議」は、トラックの自動走行や小型無人機(ドローン)などを活用して、2030年頃までにモノの輸送・配送を完全無人化する技術を確立する目標を示しています。

3PL事業や宅配ロッカーの製造・販売などを手掛ける企業に注目

物流の効率化で注目される企業では、荷主に対して商品の受発注・在庫管理、情報化まで包括的な物流改革を提案し、一括して物流業務を受託するサード・パーティー・ロジスティクス(3PL)事業を手掛ける企業があげられます。同事業は多くの物流企業が力を入れています。

また、駅や商業施設、住宅などに設置される宅配ロッカーの製造・販売を行う企業や、トラックの自動走行実現化に向けた政府の実証実験に参画する企業などにも目が向けられるでしょう。

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