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日欧EPAが大枠合意

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(写真=bluebay/Shutterstock.com)

世界のGDP、貿易総額で3割前後を占める広域経済圏へ

日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA:Economic Partnership Agreement)交渉が7月6日に大枠合意に達しました。EPAは、関税の撤廃・削減や外資規制の緩和といった通商障壁の除去を目指す自由貿易協定(FTA:Free Trade Agreement)の要素を基礎としながら、例えば投資の促進、知的財産保護や競争政策などに関するルールづくりをはじめ、より幅広い分野を対象に協力するものです。

日本とEUのEPAが発効すれば、世界的に巨大な貿易協定となります。2015年時点で日本とEUを合わせた国内総生産(GDP)は世界の3割弱、人口は1割弱、貿易総額は3割超です。GDPや貿易総額で世界の約3割を占める東アジア地域包括的経済連携(RCEP:日本、中国、インドやASEAN10ヵ国などが参加して現在交渉中)などと並んで、日欧EPAは「メガFTA」として注目されています。

世界で広がる保護主義的な動きへの懸念が交渉妥結を後押し

日欧のEPA交渉は2013年4月に開始。15年と16年にそれぞれ年内での妥結が目指されましたが、農産品や自動車の関税の取り扱いなどをめぐる隔たりを埋められなかったことに加え、当時は日本政府が環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉や国会承認を優先していた事情もあり、いずれも先送りされました。それが、今年に入って合意への機運が高まった背景には、英国のEU離脱決定やトランプ米大統領のTPP離脱表明など、世界で保護主義的な動きが広がっていることへの懸念があります。日欧はEPA交渉を妥結させることで、両国・地域が推進する自由貿易への求心力を再び強めたいとの思惑があったとみられます。

日本は自動車などの関税撤廃で輸出競争力を高めるねらい

日欧EPAにおける日本側の大きな関心事は、自動車や電気製品などの鉱工業品の関税を撤廃・削減し、輸出競争力を高めることです。例えば、日本の対EU輸出(2016年で8.0兆円)に占める自動車や自動車部品の割合はおよそ2割。EUは日本製自動車に最高10%、自動車部品に3%~4%前後の輸入関税を課していますが、これが撤廃されれば欧州での日本車市場が拡大することが期待されます。実際、11年にEUとの間でFTAを発効させた韓国は、同国製自動車の関税が段階的に引き下げられ、16年にゼロとなったことで、対欧輸出台数やEU内のシェアを拡大させています。

日欧の自動車分野をめぐる交渉では、EUが日本製自動車部品の9割超の品目を協定が発効すれば直ちに関税を撤廃することで合意されました。TPPの場合、米国が日本の自動車部品にかける関税の即時撤廃率は8割超でした。また、日本製自動車の関税については、協定発効から7年かけて段階的に撤廃する方向で決着。従来、EUは同期間を10年超と主張していました。

EU産食品の関税撤廃・削減は日本の消費者へのメリット大

一方、EU側の関心が高いのは、日本がEUから輸入する農産品や食品に課す関税の撤廃・削減です。日本はEU産農産品の輸出先で米国、中国、スイスに次ぐ4位。農産品輸出に力を入れるEUにとって、日本市場へのアクセス改善は重要といえます。

日欧EPAが発効すれば、日本にもなじみの深いEU産のワイン、パスタ類、チーズなどの乳製品、ビスケットやチョコレートなどの菓子類をはじめとする加工食品の価格が関税の引き下げ分だけ安くなり、消費者へのメリットとなる可能性があります。豚肉も「イベリコ豚」に代表されるEU産の日本への輸入は多く、価格低下で消費にプラス影響がおよぶと期待されます。半面、日本の畜産農家や酪農生産者、競合する乳製品や菓子類などを手掛ける食品メーカーにとっては、価格競争に巻き込まれる懸念が指摘されています。

日欧EPAの農産品・食品分野の交渉では、日本が30%前後の関税をかけているEU産チーズの扱いが最大の焦点となりました。EU側はブランド力が強く生産量で世界の半分のシェアを持つチーズの関税撤廃に最後まで強くこだわりました、結局、カマンベールなどの品目に低関税の輸入枠を設け、枠内の税率を15年かけてゼロにする方向で決着し、日本の酪農産業への影響に一定の配慮がされました。そのほか、1リットル当たり最大125円のEU産ワインの関税は協定発効と同時に即時撤廃、低価格品で1キログラム当たり482円の豚肉や1キログラム当たり30円のパスタ類などの関税も、段階的な撤廃・削減で合意されました。一方、日本からEUへの輸出では、緑茶や日本酒にかかっている関税が即時撤廃される方向で、政府が成長戦略に掲げる農産品の輸出拡大に寄与することが期待されます。

日欧EPAで恩恵を受ける企業は

日欧EPAで恩恵を受けると考えられる日本企業では、関税引き下げや通商ルール見直しで貿易活動が拡大すると見込まれるなか、物品の売買仲介を手掛ける商社や、海運、倉庫といった国際的な物流にかかわる企業群が挙げられます。また、関税の撤廃・削減が輸出の追い風になることや、現地でよりビジネスがしやすくなるとの観点から、自動車や電気・精密機器、機械といった外需セクターの企業も注目されます。

さらに、ワインや乳製品、菓子類などのEU産食品の価格低下は競合商品を持つ日本の食品メーカーにはマイナスですが、EUからの輸入食材の調達にはプラスであり、例えば、フランス料理やイタリア料理を提供する外食店チェーンには恩恵となる可能性があります。日本食材のEU展開がしやすくなることで、日本酒や緑茶などを手掛ける企業のビジネスチャンス拡大も期待されます。

そのほか、日本に輸出されている食品、バッグや靴といった革製品などの関税が撤廃・削減されることで、ブランド品や食品を手掛ける欧州企業に追い風となることも想定されます。

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