Home / 経済を知る / 「首都圏で新築マンションが売れていない?」といわれる理由

「首都圏で新築マンションが売れていない?」といわれる理由

(写真=Andrey Armyagov/Shutterstock.com)

首都圏新築マンションの最新の現状

不動産経済研究所(東京・新宿)が2月20日に発表した2016年のマンション市場動向調査によると、全国主要都市で販売された新築マンションの発売戸数は前年に比べて1.4%減の76,993戸になりました。その中でも、首都圏の減少は大きく、前年比11.6%減でした。また、2016年度の首都圏における中古マンションの成約件数は37,446件(公益財団法人東日本不動産流通機構調べ)と、新築マンションの供給数35,772戸(不動産経済研究所調べ)を上回る結果となりました。

国土交通省発表の「主要都市の高度利用地地価動向報告」(平成28年第4四半期)によると、2016年以降の円高・株安の影響を受け、首都圏マンション、なかでも湾岸エリアを中心に、個人富裕層による億単位の物件の需要が減退しているそうです。

日銀のマイナス金利政策によって、住宅ローンの金利も過去最低水準が続いていますが、住宅購入のきっかけとしては力不足なようです。

何故、新築マンションが売れないのか

新築マンションが売れないおおきな要因は、販売価格の高騰でしょう。

過去の首都圏マンションの平均価格を振り返ってみますと、アベノミクスの効果で、株価上昇と円安が進み、それと歩みを同じにして、2013年に3年ぶりに上昇して4,929万円となりました。2015年には5,518万円にまで上昇し、「億ション」の発売戸数も1,688戸となりました。2015年の11月には、6,300万円超まで上昇し、2016年に入っても勢いは止まらず、9月まで5,500万円を下回る月はありませんでした。(国土交通省、不動産経済研究所調べ)

このような状況ですと、自分が住む、住宅用のマンションが欲しい人が向かう先は中古マンションになるのではないでしょうか。

中古住宅の購入を後押しする支援事業がはじまる

一方で、国も新築中心の住宅政策から中古物件を活用する方に舵を切っています。2015年に総務省統計局が調査した空き家等の住宅に関する調査では、空き家が全国で820万戸という衝撃的な数字が出ており、空き家は年々増加しています。2014年11月には「空き家等対策の推進にかかる特別措置法」が成立するなど、政府も空き家の活用には注目しています。

直近では、2016年10月に「住宅ストック循環支援事業」がスタートしました。中古住宅購入時の、住宅現況調査や住宅のエコリフォーム、建て替えの費用について、国がその費用の一部を、1件当たり最大で50万円を補助する制度です。補助金は40歳未満の購入者を対象とし、若年層の住居費負担の軽減や既存の住宅市場の拡大などを目的としています。

中古物件は購入後、水回りや床下、天井裏などの改修が必要となることがあり、その見えない費用が不安要素となり購入を敬遠する傾向がありますが、この不安を払拭するため、「住宅ストック循環支援事業」では専門家が物件の劣化状況や欠陥の有無を判断する住宅診断、いわゆる「ホームインスペクション」を補助金給付の条件にしました。これによって中古住宅でも安心して購入することができるようになるのはもちろん、良質な住宅のストックにつながっていくことにもなります。

新築マンションの販売価格上昇が続く中、中古住宅の購入を後押しする支援事業もスタートし、新築から中古へのトレンドは、今後ますます加速していくかもしれません。

【おすすめ記事】
マンションの価格が高そうなイメージのある駅とは?
企業倒産件数は26年ぶりの「低水準」だけど、本当に景気は良くなっているの?
東京オリンピックの経済効果は? その後の落ち込みはどうなる?
変わりつつある世界の景況感
欧州政治不安が後退、市場の関心は次第に米国の景気や政策動向に向かう