ファイナンシャル・プランナーで、マネーとキャリアの専門家集団であるプラチナ・コンシェルジュの國場弥生さんが、前編では一般的な住宅事情について紹介しました。後編では実際に住宅購入を進めるにあたり知っておきたい住宅購入のためのマネープランについてお話しします。
「自分がいくらまでなら無理なく買えるか」といった計算方法や、参考になる先輩の反省の声もお届けします。
>>年収の5倍程度ではない?! あなたが無理なく買える物件価格は?(前編)はこちら
私たちはいくらの家が買える?
家は多くの人にとって「人生でいちばん高い買い物」だといわれるように、何千万円もする大変高価なものです。一般的にはローンを組んで何十年も支払いを続けることになりますから、将来まで見据えて慎重にマネープランを練りましょう。
購入する物件の価格はおおまかには年収の5倍程度が目安といわれますが、働き方や子どもの有無・進路、リタイア時期や退職金を受けとることができるかどうかなど、それぞれのライフスタイルに応じて家にかけられるお金は異なります。ですから、最終的にはほかの誰かではなく「私」「わが家」軸のプランが欠かせません。
また、忘れずに見込んでおきたいのが土地や建物などの物件価格以外に、登記費用や印紙税、住宅ローンの事務手数料や保証料、火災保険料といったさまざまな費用。また、家に合わせて家具やカーテン、電化製品を買い替える費用や引っ越し費用も必要に応じて予算を立てる必要があります。
貯蓄(自己資金)と借入金(住宅ローン)を合わせた金額が、家を買うための資金になりますが、借りられる住宅ローンの金額の上限は今の年収や勤続年数などをもとに金融機関が決めるものです。「この金額まで借りられます」といわれたからといって、安易に上限まで借りてしまうのは危険。「借りられる額=無理なく返せる額」ではないことを意識するようにしましょう。
下の<無理なく買える物件価格計算シート>を使っておおよその金額を出してみましょう。希望の物件価格と、計算した無理なく買える物件価格に大きな差がある場合には、もう少し貯蓄ができるまで待ったり、親からの資金援助の可能性を聞いてみたり、家計の見直しによる節約や働き方の見直しによる収入アップなどを検討してみる手もあります。
図 無理なく買える物件価格計算シート
① 毎月支払える住宅ローンの額(月額)は?
下の式に数字を入れて計算してください。
額は住宅によって異なりますが、ここでは仮に3万円としています
② 借入可能な額(総額)は?
下の早見表から借入可能な額を探してください。
例:①の毎月支払える住宅ローンの額が10万円の場合ローン金利によって3,110万円~2,230万円。金利2%とすると2,710万円
<借入可能額早見表>
毎月支払える住宅ローンの額(万円) | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | ||
金利(%) | 1.0 | 2,490 | 2,800 | 3,110 | 3,420 | 3,730 | 4,040 | 4,350 | 4,660 | 4,970 |
1.5 | 2,320 | 2,610 | 2,900 | 3,190 | 3,480 | 3,770 | 4,060 | 4,350 | 4,640 | |
2.0 | 2,160 | 2,430 | 2,710 | 2,980 | 3,250 | 3,520 | 3,790 | 4,060 | 4,330 | |
2.5 | 2,020 | 2,280 | 2,530 | 2,780 | 3,040 | 3,290 | 3,540 | 3,800 | 4,050 | |
3.0 | 1,900 | 2,130 | 2,370 | 2,610 | 2,850 | 3,080 | 3,320 | 3,560 | 3,800 | |
3.5 | 1,780 | 2,000 | 2,230 | 2,450 | 2,670 | 2,900 | 3,120 | 3,340 | 3,560 |
※元利均等返済(ボーナス返済なし)、返済期間30年として試算しています
③ 無理なく買える物件価格は?
※諸費用など(登記費用やローンの事務手数料など)は住宅やローンの条件などによって異なりますが、ここでは仮に1割としています
教育費や老後資金準備のために金融資産の形成も!
今まさに住宅購入を検討している人には水を差すような話ではありますが、人生全体のマネープランとして考えておくべきは、住宅購入費以外にもいろいろあります。主なものは教育資金や老後資金などですが、晩婚化や晩産化の影響で「住宅ローンと教育費を払いながら老後のための貯蓄をしなれば間に合わない!」といった状況が生まれつつあります。とくに教育のための支出は一般的に子どもが小さいうちは少額ですが、成長するにつれ高額になっていきます。たとえば子どもが大学へ進学した場合には、国公立で80万円程度、私立(文系)で120万円程度を毎年支払うことになりますから、そうした時期を乗り越えられる返済計画を立てておくと安心です。ローンの支払いや繰り上げ返済も大切ですが、バランスの取れたマネープランを作るなら、貯蓄や投資にも目を向けるのが得策といえそうです。
今後の参考までに、実際住宅を購入したけど、ちょっとした手違いで失敗してしまった先輩方の声もご紹介。住宅ローン控除を受けられなくなった話など、事前に知っておいて同じ轍を踏まないように気をつけましょう。
表 住宅購入のマネープラン 反省の声
リタイア時に退職金でローンを完済したが、貯蓄が少なく老後の生活が不安になってしまった |
ローンの返済以外に管理費や修繕積立金、固定資産税がかかることを考慮していなかったため、家計が苦しい。 |
繰り上げ返済をがんばったら返済期間が10年を切り、住宅ローン控除を受けられなくなってしまった |
住宅ローンの支払いと子ども二人の教育費が重なる時期は、家計が赤字でひやひやした |
ボーナス返済を予定していたら、業績悪化で大幅カットになってしまいピンチに |
家を手に入れた喜びはあるけれど、大好きだった海外旅行の費用を捻出できなくなったことは悲しい |
日経BPコンサルティング 金融コンテンツLab.
プラチナ・コンシェルジュ ファイナンシャル・プランナー 國場弥生
日経BPコンサルティング「金融コンテンツLab.」は、難しくなりがちなお金の話題を、わかりやすいコンテンツに仕上げることをテーマとして取材・情報発信にあたっている制作研究機関。月刊誌『日経マネー』編集部の在籍経験の長いベテランスタッフが中心となり、マネー系コンテンツを提供している。 |
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