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「18歳で投票可」選挙権年齢引き下げで何が変わる? 参議院選挙7/10投開票

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(写真=PIXTA)

 国政選挙では2016年夏の参議院議員選挙(6月22日公示、7月10日投開票)より、選挙権が「満20歳以上」から「満18歳以上」に引き下げられます。地方選挙では、公示日は参院選よりも遅かったものの、投開票日は参院選に先立ち7月3日に迎えます。ここで初めての18歳、19歳が投票する選挙がおこなわれることになります。

 これは1945年にそれまでの「満25歳以上」を「満20歳以上」にして以来、約70年ぶりの選挙権の引き下げです。今後の国政選挙だけでなく、地方選挙、最高裁判所裁判官の国民審査なども対象となります。

 海外では18歳で選挙権が認められる国は少なくありません。国立国会図書館の2014年の調査によると、世界191の国・地域のうち、9割近くが下院(日本の衆議院)の選挙権年齢を「18歳以上」と定めています。今回の引き下げも世界の基準に合わせたものと言えます。

有権者は240万人増える計算

 少子高齢化が進む日本は、すでに人口に占める65歳以上の高齢者の割合が21%を超え、“超高齢社会”に突入しています。高齢者層の人口が多いことと投票率の高さから、高齢者層の政治への影響力が強まっているといわれていて、「シルバー民主主義」という呼び方もあるほどです。

 こうした状況の中で、以前から「このままでは、今以上に高齢者のための政策が優先され、社会保障などの問題が先送りされるようになる」と危惧する声がありました。選挙権が得られる年齢の引き下げには、未来の日本をつくる若者たちの声を政治に反映しよう、将来の日本の在り方を決める政治に関与してもらおうという意図もあると考えられます。

 この引き下げによって、有権者は約240万人増える計算になります。これは全有権者の2%に当たります。ごくわずかだとも言えますが、少なくとも、これまで以上に若者の声が政治に反映されるようになるはずです。

 選挙権を得ることで、家族や友人と政治に関する話をする機会、きっかけも生まれるでしょう。早くから将来を考え、社会情勢を見る姿勢が育まれるようになるのではないでしょうか。

 今後の変化として、選挙運動、政治活動におけるインターネットの影響力がより大きくなることが考えられます。18~19歳の多くは、高齢者に比べてLINEやTwitterなどのSNSに慣れています。政党・政治家は、今まで以上にスマートフォンを意識した運動、話題づくり、情報発信に腐心する必要があるでしょう。

被選挙権や成人年齢も引き下げられる?

 今回は選挙権(投票権)が得られる年齢が引き下げられるだけですが、今後は「被選挙権」や「成人年齢」の引き下げについての議論も活発になると考えられます。

 被選挙権とは、投票する権利ではなく立候補する権利のことです。2016年現在、日本では衆議院議員や都道府県議会議員、市区町村長、市区町村議会議員は満25歳以上、参議院議員と都道府県知事は同30歳以上にならないと立候補できません。

 今後、より若い世代の声が政治に反映されるようになれば、満25歳という被選挙権が得られる年齢も引き下げようという声が高まる可能性があるでしょう。

 また成人年齢についての議論も注目されると考えられます。すでに自民党の成年年齢に関する特命委員会が2015年、成人年齢を18歳に引き下げる提言をまとめています。

 海外の状況を見ると、OECD(経済協力機構)加盟30カ国で、20歳を成人としているのは日本だけで、多くは基本的に18歳を成人としています(米国は州によって異なるなど一部例外あり)。こうした点からも、成人年齢の引き下げには説得力がありそうです。

 ちなみに未成年者は、法定代理人(通常は親)の同意がなければ契約を結ぶことはできませんし、契約しても保護者が取り消すことができます。

 成人年齢が20歳から18歳になれば、今後予想される変化として、飲酒や喫煙などができるようになるだけでなく、ローンや賃貸など各種契約行為が行えるようになるでしょう。19歳、20歳といえば社会人になりたてか、大学・専門学校などの学生が多いでしょう。高校を卒業して社会的、経済的に活動範囲が広がり、いろいろな契約を結ぶ必要性を感じているはずで、ニーズはありそうです。

 一方で、成人になることで権利だけでなく義務を負うことにもなります。国民年金への加入義務が生じるかもしれませんし、裁判員に選ばれるかもしれません。また少年法で守られなくなり、報道で匿名でなく実名になる可能性があります。

 今後こうした議論の広がりも予想されますが、まずは7月の参議院選挙で、新たに選挙権を得た18歳、19歳の有権者の投票率が注視されます。

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