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金融業界でも注目度が高まるIoT

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(写真=PIXTA)

 IoT(Internet of Things:モノのインターネット)市場が急速に拡大しています。IT専門調査会社IDC Japanの発表では、2015年のIoT市場規模は前年比15.2%増の6兆2,232億円となりました。2020年までも年平均16.9%で成長するとの予測です。なお日本の百貨店売上高合計は6兆1,742億円なので、すでにIoTは百貨店を超える業界規模になっています。

これまでインターネットへの接続はPCやスマホ、タブレットといった人が使うデバイスでした。IoT化が進むことで、自動車や工場設備、医療機器などあらゆるものがネット接続されるようになります。モニタリングすることで安全性や効率性を高めたり、蓄積されたビッグデータを活用することで商品やサービスの質を向上させたりすることが可能になります。

 急速に成長するIoTは、金融での活用も進んできています。本題に入る前に、IoTとは何か、そしてIoTの活用事例を見ていきましょう。

IoTとは何か? その利用方法は?

 IoTとは、日本語訳「モノのインターネット」が示すように、あらゆるものがインターネットに接続して相互に通信し、さらにそこから得たデータを解析して、モノが自動的に相互制御を行うことや、人に情報を与えるようになる状態のことです。

 たとえば、今回の伊勢志摩サミットにトヨタ、日産、ホンダが提供した自動運転技術の特徴は、「自動車がインターネットに接続」「自動車がサーバに歩行者や他の車といった情報を送信」「情報をサーバが解析し、速度やハンドルさばきについて自動車に指示」「サーバの指示に応じて、速度やハンドルを制御」といったように、IoTの概念をフルに活用しています。

金融でのIoT活用例

 金融におけるIoTの活用例を見ていきましょう。最近の金融のトレンドとしてFinTech(フィンテック)という言葉があります。フィンテックはFinance(ファイナンス)とTechnology(テクノロジー)を合わせた造語で、PayPalやSquareといったモバイル決済やfreeeといったクラウド会計、またはビットコインも代表的な商品・サービス事例として挙げられています。

 金融におけるIoTも、ありとあらゆるモノをネットワークでつなげ、より便利にしようという考え方にもとづいており、フィンテックの一つのあり方といえます。

最近では、経産省の委託を受けた日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)が主導しているIoT推進ラボは、先進的なIoTプロジェクトを選んでいます。第1回の選考会議でグランプリを受賞したLiquidという企業は、「Liquid pay」と呼ばれる指紋での生体認証決済を行うサービスを提供しています。

 このサービスは現在、長崎県のハウステンボスで指紋決済のテスト運用を行っているほか、2016年6月から東京・池袋周辺でのホテルチェックイン時に、指紋認証をパスポートによる本人確認の代わりに使うサービスをKDDIと共同で始めるとのことです。

 「Liquid pay」のサービスでは、「指紋をキーにインターネットに接続」「指紋データと生体認証検索エンジンの間での相互通信」「人工知能を用いた生体認証検索エンジンが指紋データを解析することで、従来数百秒かかる認証を0.05秒で実現」「認証結果に応じて、決済、ATMの認証、チェックインを行う」といったように、IoTの技術がフル活用されています。

金融でのIoT活用の課題

 このように金融でも活用が進むIoTですが、普及に向けた課題があります。

 まずは法規制の問題です。たとえば旅館業法では、外国人の宿泊においてパスポートの提示による本人確認が定められています。指紋とパスポートのICチップの照合がパスポートの提示による本人確認に該当すると解釈されるなど、指紋での本人確認が実現しつつあります。ただ金融業界では、テロへの資金提供などを防ぐために、本人確認に関する法律が定められており、この法律と抵触しないことが必要となります。

 セキュリティーの問題もあります。指紋認証では他人の指紋を誤って本人のものとして受け入れることを他人誤認率といいますが、iPhoneのTouch IDでは5万分の1の他人誤認率があると公表されるなど、完全なものではありません。ビットコイン交換所などでハッキングされ、電子通貨が窃盗にあうリスクも考えられます。

 今後、IoTが本格的に普及するためには、法制度やセキュリティーの問題をクリアする必要があるといえるでしょう。

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