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人類の叡智・・・・。― 兜町カタリスト櫻井英明のここだけの株話

「叡智」

自然の驚異は当然計り知れないものですが、今、7年余りの時間を経て思うのは人的ネガ要素については「人類の叡智、英知というのはやはり地球規模では発揮されるものらしい」ということ。
北朝鮮もイタリアも、そして諸々の地政学的リスクは悪材料視されましたが決定的局面の寸前で回避。
個別案件では別かもしれませんが、地球規模であるいは世界資本市場規模で考えれば寸前の回避ばかり。
リーマンショックだって決定的悪材料にはならず、その後 株価は回復しました。
むしろ、資本の世代間等の移動を当然のように促進したという解釈が可能でしょう。
つまり、下げたときは買い場というのはお題目ではなく歴史が証明しているということになります。
それも局地戦ではなく総力戦の時にこそ威力を発揮するもの。
2000年、2003年、2008年、2011年などの動きが良い例です。
本来、時間の経過とともに市場は拡大するもの。
そのスピードの速さ遅さが微分的に暴落とバブルの交錯となります。
しかし、いずれにしても過去の安値を下回り続けることなく、過去の上値を更新してきたのが市場の歴史でした。
この滔々(とうとう)たる時間と、価格の流れを見誤るのは切に時間軸とタイミングの個人差の集積に他ならないでしょう。
「あらゆる市場で人類は叡智を発揮するもの 」。
アダム・スミスの国富論の「神の見えざる手」の市場原理とは違った意味で結構重要なポイントと考えられます。

「場電と板」

あれこれと市場は移り変わりながらもバブル崩壊から30年。
変わったものはたくさんあります。
例えば、海外投資家の株式保有比率。
1989年4.2%→2017年30.1%。
あるいは海外投資家の売買シェア。
1989年12.1%→2017年69.3% 。
いずれも大きな伸びとなっています。
7割の売買シェアを持つ投資家が3割の株しか持っていないというのも現実。
でも、その7割の商いが市場を左右しがちなのも現実。
「ヘッジファンドを巻き込んだ外資系証券はアルゴリズムを導入。
そして投資家さんの委託注文は電話などの声からコンピュータなどの電子になり証券業は装置産業化した」。
これが歴史です。
「買い物で○○株を成り行きで5万買い」。
支店の場電をサッと取り上げて、颯爽と株式部経由で場に注文を出す先輩の姿を眩しく見上げた頃が思い起こされます。
「かっこいいなあ。いつかはああなりたいな」。
当時は出来値が戻ってわかるまで約15分もかかっていました。
ややこしいのは「板寄せ」。
商いが集中して場立ちが集まって右往左往のおしくら饅頭。
ピーと笛がなったら、商い整理。
再開まで板を合わせる時間のまだらこしさ。
そんな牧歌的オーダーは今は昔の話となってしましました。

新しい時代は、新たな姿の市場が必要であることは間違いありません。
「市場と企業の活性化に日本のマネーを日本の運用者が動かす姿が不可欠」。
これは理想の道。
しかし、「欲望」を素直に表現する 海外勢と、「欲望を学問に転嫁」する東京の差は歴然。
経済紙が「日の丸トレーダー」なんて勇ましい言葉を使って自慰的表現をしている間は無理でしょうが・・・。

「壁」

ある老練熟練な市場関係者のコメント。
「ベルリンの壁が崩壊した後、最も大変な目に会ったのが日本でした」。
思い起こしてみれば・・・。
1989年、年明け1月に昭和天皇が崩御。
時代は平成に。
天安門事件が起きて、ベルリンの壁が崩壊。
社会主義国が次々と倒れ冷戦が終結。
翌年は湾岸戦争。
そしてドイツ念願の再統一。
さらに一年後にはソ連の崩壊。
株価的には1989年末がバブルの絶頂。
その後の円高や金融ビッグバン、国際会計基準導入などで世界の風に晒され耐えた日本。
歴史の皮肉の 反復はないとは思いますが・・・。
世界で起きたことは多分「アメリカの東西冷戦勝利、そして東側の数多くの閉鎖性からの脱却」。
「ルールは不変」というのが日本的思考法。
しかし、「ルールは可変で自分の都合の良いように変えられる」というのが西洋的思考法。
これは今後も問われ続けるのでしょう。

 

櫻井 英明(さくらい えいめい)
ストックウェザー「兜町カタリスト」編集長

日興証券での機関投資家の運用トレーダー、「株式新聞Weekly編集長」などを経て、2008年7月からストックウェザー「兜町カタリスト」編集長。
幅広い情報チャネルとマーケット分析、最新経済動向を株式市場の観点から分析した独特の未来予測に定評があり、個人投資家からの人気も高い。

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