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停滞するライドシェアの解禁議論、進むタクシーのサービス向上

(写真=PIXTA)

ライドシェアの規制緩和に反対する一方、その本格解禁に備えて運賃改革などの取り組みを積極化させているタクシー業界。訪日客の急増、高齢者の免許返納の広がりなどで高まる観光や日常生活のための移動ニーズを、サービス向上の推進で取り込めるか注目されます。

ライドシェアの解禁議論進まず

米国や中国などでは定着していますが、日本では一部の地域を除き禁止されている「ライドシェア」(自家用車で乗客を有料で運ぶサービス)。解禁議論が遅々として進まない背景には、米ウーバー・テクノロジーズや中国・滴滴出行(ディディチューシン)などの世界の大手企業が日本でもライドシェアを始めれば需要が奪われかねないと、タクシー業界が反対していることがあるといわれています。一方、今後、ライドシェアが本格解禁された時に備えようと、タクシー業界は最近、運賃改革といったサービス向上への取り組みも積極化させています。

「事前確定運賃」「相乗り運賃」を実験

例えば、利用者のチョイ乗り需要を喚起しようと、2017年1月に東京で「初乗り距離短縮運賃」(初乗り2km730円→1.052km410円)を導入。配車アプリを活用した「事前確定運賃」や「相乗り運賃」(複数人で相乗りすることで運賃負担を軽減できる)といった新たな運賃制度の実証実験も行っています。さらに、対象者・エリアなどを限定した定額運賃(乗り放題)タクシーや、需要に応じた変動迎車料金などの導入も今後検討予定です。
また、高齢者および車いす利用者などの乗り降りや、訪日客が大量の荷物を載せる場合などへの配慮がなされたワゴン型の「JPN TAXI」(ジャパンタクシー)をこのところ街中でよく見かけるようになりました。東京都内では、20年までに全タクシー(個人タクシー除く)の約3分の1に当たる1万台の導入を目指しています。

高まる観光や日常生活のための移動ニーズを取り込めるか

ライドシェアの大きな利点は、スマホの操作だけで近くを走る車を移動手段としてすぐに使えること。日本では都心部でもない限りタクシーの台数が限られ、なかなかそうはいきません。ただ、足元では、タクシー大手の日本交通グループと東京無線協同組合が配車アプリを統合させ、1つのアプリで呼べる車両数を全国で6万台強(総車両数の約4分の1)、東京では1.5倍の1万台以上に増やすなど、利便性を高める取り組みがみられます。
訪日客の急増に加え、高齢者の運転免許自主返納の動きも広がるなか、観光や日常生活のための移動ニーズはますます高まる傾向にあります。タクシーが今後もサービス向上を推進させ、これらニーズを取り込めるか注目されます。

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