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「サカナの気持ちになって」― 兜町カタリスト櫻井英明のここだけの株話

「サカナの気持ちになって」

株は上がり続けませんし、下がり続けません。
相場に「絶対」はありませんが、これは「絶対」です。
タイミングというのは釣りも株も一緒のようなもの。
釣り糸を垂れると「チョンチョン、ツンツン」と餌の様子を探るアタリ。
ここで引き揚げては、魚は逃げてしまいます。
「魚の気持ちになって考えなさい」と、ベテランの船頭さん。
「餌は食べたいけれど警戒感は一杯。少し調べてみていけるとなったら真剣に食べるよ」。
株だって一緒です。
警戒感はあるから上がってすぐはちょっと待て。
でも、ほかの投資家さんが群がってくると「やっぱり美味しいんだ。食べよ」。
これが天井なんていうのも良くあること。
逆に、売り場探しでも「まだ上がるかな」なんて期待と警戒の交錯。
みんなが利食うサマを見て「やっぱり売っておこう」。
そこからの上昇スピードの速さは絶品です。
サカナの気持ちになって相場を考えてみることが大切なこと。
相場に釣られない極意かも知れません。
経験則では、25日線から5%かい離で1回株価は止まり、10%で反転。
200日線から45%かい離すると、ほぼ反転。
空売り比率が50%になると反転上昇。
そんな数字を集めていくと、だんだん限界は見えてくるでしょう。
限界があるからこそ、相場は継続するのです。
そして、それぞれの限界があるからこそ、相場は成立するのです。

「通説の歴史」

過去20年という時間軸に限って考えると「円高株安」。
でも、昭和バブルまでは「円高株高」でした。
景気停滞で内需が悪化し輸出に頼らざるを得ませんでしたから、為替がクローズアップされただけのこと。
しかも、FXの個人取引が可能になったのが確か1998年頃。
そういう意味での「為替の重要視」が登場してきたと言えなくもないでしょう。
「通貨が売られて滅びる国はあるが、通貨が買われて滅びる国はない」です。
通貨危機で登場するのは、常に「自国通貨安」であることを忘れてはいけません。
「増資で売り」というのも今では通説になっています。
1株あたり利益が希薄化するというのがその根拠です。
しかし、バブル期までは「ファイナンス銘柄」といって持てはやされたもの。
そんな過去など、あっという間に消えてしまいました。
将来に対する成長計画に則って資金需要があるのだから、本来は悪くないはずです。
今日や明日だけを見ているのならば確かに「増資は悪材料」。
しかし、借金の返済などの理由でなく「設備投資」などの理由での増資で考えてみると、その後下落した株よりも上昇した株の方が多いハズ。
「円高株安、増資株安」という発想が薄れてくれば、東京市場もさらに元気になれるような気がします。

「買えば下がり、売れば上がる」

「買えば下がり、売れば上がる」というのも実は株式投資の法則。
これには理由があります。
フツーの場合、買うときも売るときも成り行きではなく、指値で投資をすることは多いのでしょう。
売りの場合は現値よりも上、買いの場合は現値よりも下。
ということは、売りの場合は上昇トレンドでなければ売れず、買いの場合は下落トレンドでなければ買えません。
つまり、トレンドが逆を向いているのに売れたり買えたりしてしまうのですから「買えば下がる、売れば上がる」。
運が悪い訳ではありません。
逆説的な動きになっていますが当然の結果なんです。
自分の相場観不足ではありません。
だから、そんなことでめげていてはいけません。

相場で重要なことの一つは、定点観測。
意外と面倒くさいことですが、これなくしては相場観はなかなか育成されません。
一見、豪放磊落に見えるギャンブラーのような投資家だって、これは行っています。
小さなうねりから大きな動きの予兆を肌で感じることができる唯一の方法でしょう。
日足の動き、時間帯、移動平均線、雲やボリンジャーなんかの機械的な観測。
見ることで肌が感じてきます。
「アレ?」という違和感こそが重要です。
定点観測で追わない限り「アレ?」は来ません。
陰極まれば陽。
このリズムこそ体感しておきたいところです。
株は買えば下がるもの、売れば上がるもの。
そう決めてしまえば何の心配もないでしょう。
これを防ぐためには、成り行きが良いというのは前の部分でも言いました。
最高のベストショットなんて、めったにありません。
林に入っても、ラフに阻まれても、それでも最善のプレーをするのは株も一緒。
その先はどうすると常に考えましょう。
「常に考えること。常に相場に関連付けて考え抜くこと。
そうすることで、相場の本質に近づけるような気がしてくるものだ」。
前向きな思考法で相場に対峙していれば、いつかはラッキーもやってきます。
「株価を買わず株を買う、株価を売らず株を売る」。
こんな思考法が求められているのです。

 

櫻井 英明(さくらい えいめい)
ストックウェザー「兜町カタリスト」編集長

日興証券での機関投資家の運用トレーダー、「株式新聞Weekly編集長」などを経て、2008年7月からストックウェザー「兜町カタリスト」編集長。
幅広い情報チャネルとマーケット分析、最新経済動向を株式市場の観点から分析した独特の未来予測に定評があり、個人投資家からの人気も高い。

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