「投資と投機」
株は投資なのか投機なのか。
結論のない命題です。
塩漬けが多いのが投資家、利食いが多いのが投機家。
そんな言い方もあります。
「投資とは、詳細な分析に基づいたもの。
元本の安全性を守りつつ、かつ適正な収益を得るような行動を指す。
そして、この条件を満たさない売買を、投機的行動であるという」。
間違ってはいません。
しかし、詳細な分析はどこまでが詳細?
元本の安全性を守ることが本当にできるのか?
そして、適正な収益とは?
お題目としては納得できても、実務ではなかなか納得できません。
「投機家は利益を上げることに専念する」。
利益を上げることに傾かない投資家っていうのは存在するのでしょうか。
「企業の成長を促しつつ、自分にも利益が出ることを理想とするのが投資。
自己の利益のみを追求するのが投機。
短期的で自分の儲けのみ追及というのが投機の典型」。
そんな綺麗事で市場というのは泳ぎ渡れるものなのでしょうか。
そもそも・・・。
「投機筋の商い」という言葉は市場から消えません。
市場は投資という一部の錯覚と、投機という実務的心理の交錯の場なんだと考えています。
市場関係者の多くは世界経済動向を語ります。
しかし、本当に必要なのは世界経済の分析なのでしょうか。
それよりも大切なのは企業業績の分析、あるいは株価の分析でしょう。
かねて何度も揶揄してきた「床屋政談」。
「だから何」という生産性のない語り合い。
「中東が大変だ」、「アメリカはだめになる」、「中国の逆襲だ」。
それって自分の生活や仕事に関わってくるのか、来ないのか。
投資にも関係しそうな気にはなりますが、それよりも個別企業の業績の集積の方が優先されるべきでしょう。
為替の市場参加者が話題にコト欠いて「経済指標とスケジュール」に走るのと一緒なのかどうか。
見極めることが必要なのは、経済指標やイベントでなく、株価の行方なのかどうか。
この辺が180度違っているから相場は見えなくなってきます。
株価は決して誤差の範囲で動くものではありません。
上や下へのトレンドは瞬時刹那にそれなりの理由があるものです。
「手間」
相場で勝ち抜いていく秘訣というのは、あるようでないかも知れません。
でも、少しでも負けない努力というのは求められます。
仕事でいえば、「メールが来たら、とりあえず返事を返す」「メールは必ず自分が送信をして終わりにする」というのが「ひと手間」です。
ひと手間かけるということは、面倒くさいことを面倒くさがらずにやること。
「すぐに礼状を書く」とか、「返事に気の効いたコメントを付け加える」も、そうでしょう。
同じ納期に同じものを納品するなら、たとえ半日でも早く納品するのが「ひと手間かける」ということです。
ホウレンソウだって出汁をきかせて鰹節をかける、刺し身のワサビはスリおろし、冷奴には生姜を添えるみたいなものでしょうか。
株式市場では数多くの事象が目の前を通り過ぎています。
そして、それはイベントであろうと経済指標であろうと、あるいはテクニカルや需給の数字であろうと、誰もが平等に接することができるものです。
これら目の前を通過している事柄に異変や違いを感じることができれば良いのです。
あれ、25日線から5%もプラスかい離だ、空売り比率は40%を割った、裁定買い残が3兆円に乗せた。
取り組み倍率が6倍になったなどなど、いろいろなことをチェックすることで相場の反転を予測することができるようになるかも知れません。
そのために必要なのは「お目覚めチェック」と言ってきました。
朝起きたら、寄り付き前にいろいろな数字をチェックして、動きを頭の中に入れましょう、ということです。
でも、これって「夕暮れチェック」でも構わないでしょう。
欧米株式の動向とか、シカゴ225先物の終値などは朝にならないとできません。
しかし、移動平均からのかい離や信用評価損率、PERやPBRなどは黄昏時からチェック可能です。
しかも、朝と違って時間の余裕がありますから、過去との比較も可能でしょう。
晩餐の前に夕暮れチェック。
夜遅くのNY株式の動向を眺めるよりは有効かも知れません。
櫻井 英明(さくらい えいめい)
ストックウェザー「兜町カタリスト」編集長
日興証券での機関投資家の運用トレーダー、「株式新聞Weekly編集長」などを経て、2008年7月からストックウェザー「兜町カタリスト」編集長。
幅広い情報チャネルとマーケット分析、最新経済動向を株式市場の観点から分析した独特の未来予測に定評があり、個人投資家からの人気も高い。
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