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人生100年時代に、長期的な資産形成は投資を味方に (前編)

(写真=iStock by Getty Images)

「人生100年時代の賢いお金とのつきあい方」でも触れた通り、投資は人生100年時代のマネープランにマストな手段。「投資はギャンブルなのでは?」「元本割れが怖い」などと抵抗感を抱く人もいるかもしれませんが、人生100年時代に取り組んでほしい投資とは、長期的な資産形成を目的とするリスクを抑えたものです。それがどんな方法で、どう取り組めばいいのか、ファイナンシャルプランナーの深野康彦さんにお聞きします。

マネープランに投資を組み込むことは不可欠

人によりますが、30代から40代にかけて、結婚、出産・育児、住宅購入とお金がかかるライフイベントがたくさん控えています。これらの費用を準備しつつ、60~70代までにある程度の老後資金を確保するには、預貯金のような元本保証商品だけでは難しいかもしれません。

というのは、ご存じの通り預貯金金利は定期預金でも0.01%とゼロに近いから。これでは時間をかけてもほとんど増えません。「増えないどころか、物価上昇による貨幣価値の目減りを防げないおそれがあります」と深野さん。預貯金金利が物価上昇率を上回れば、預貯金だけでもお金の価値は目減りしません。「しかし、現在の日本銀行は物価上昇率が2%に達するまでゼロ金利政策を続けると見込まれるので、預貯金金利も超低金利のままです」。物価上昇率2%の達成後も、預貯金金利はあまり上昇しないとみられます。高金利政策は国債の利払いを増やして国の財政を悪化させるからです。

一方、株式などの投資商品は物価上昇に強い傾向があります。「マネープランの一部に投資を組み入れてしっかり運用すれば、貨幣価値の目減りを防ぐ役割が期待できます」。さらに物価上昇率を上回る利回りで運用できれば、実質的にもお金を増やすことができ、必要な資金の準備や豊かさの実感につながっていくでしょう。

投資=ギャンブルという勘違い

そうはいっても「投資はギャンブル」だとか、「元本割れするのはイヤだ」という人も少なくないでしょう。「確かに短期的な値動きをとらえて、大きな儲けを狙うギャンブルのような投資もあります。ですが、皆さんに取り組んでほしいのは、長期的な資産形成を目的とするリスクを抑えた投資です」。

リスクを抑えた投資とは、負けにくい(=損をしにくい)投資のこと。「長期投資であれば、これが実現しやすくなると考えられます」。株式投資をして短期的にリーマンショックのような株価の暴落に見舞われたとしましょう。そこで慌てて売ってしまうと大きく損を確定しますが、売らずに保有し続ければ、長期的にはいずれ世界経済の拡大を背景に株価は上昇し、利益が得られる可能性があります。「銘柄によっては、保有中に配当による利益も得られます。長期的に配当を得ることで、仮に購入当初から株価が下がったとしても、トータルで見たときには元本割れが防げるようになります」。

例えば、ある銘柄を株価が1,000円のときに買い、それが900円に下がったとしても、100円の配当を得ていれば「株価900円+配当100円=1,000円」なのでトータルの損益は±0円に、配当を200円受け取っていればトータルの損益は+100円になります。「つまり、リスクが高そうな株式投資などでも、時間を味方にした長期投資であれば損をしにくく、資産を増やしやすくなるのです」。

安定的な資産形成が期待できる「長期・積立・分散」投資

長期投資のなかでも、初心者にも取り組みやすいのが投資信託での積み立て(積立投資)だと深野さんはアドバイスします。これは、選んだ投資信託を毎月1万円ずつなどと、定期的に一定額ずつ買い付けていく手法です。「毎月購入するので、投資のタイミングを図らずに済み、いつ始めてもOKです」。

投資信託を定期的に一定額ずつ購入することで、安値のときには多くの口数を買い、高値のときには少ない口数を買うことになります。「自分の判断でこれを続けるのは難しいことですが、積立投資なら購入のアクセルとブレーキを自動的に踏んでくれます。長期的に続けると、全体で見たときに1口当たりの平均的な購入単価を低く抑える効果が期待できるので、利益が得やすくなり、高値をつかんで失敗ということが防げます」。

値動きのリスクを抑えた負けにくい投資をするには、上記のように購入のタイミングを分散するとともに、一つの銘柄に偏らずに複数の銘柄に分散投資することもポイントになると深野さん。「値上がりする銘柄を当て続けることはまず不可能なので、値動きのリスクを抑えるには複数の銘柄への分散投資が有効です。さらに、株式であれば日本株だけでなく日本以外の先進国や新興国の株式など地域の分散をすると効果が増します」。株式のほか、債券や不動産なども投資信託の投資対象になるので、幅広い分散投資が可能になります。

図表1 投信積立の3つのメリット

投信積立の3つのメリット
① 投資のタイミングを考える必要がない
→いつでも始められる
② 毎月一定額ずつ購入する
→継続することで平均購入単価が抑えられる(高値水準での購入を抑制)
③ 月1,000円から始められる
→少額から幅広い分散投資が可能に

「長期・積立・分散」投資が、いかに負けにくい投資であるのかの実績を示したのが図表2です。保有期間20年になると元本割れの可能性が非常に低くなる傾向にあるので、安定的な運用が期待できます。「ですから、投信積立は数十年後に果実を得るというイメージで、長く続けることが重要です。日本人は預貯金や生命保険などで積み立てに慣れ親しんでいるはず。そのDNAを活かして、投資についても積み立てを活用して資産形成しましょう」。

図表2 「長期・積立・分散」投資の効果

「長期・分散・積立」投資の効果
資産・地域を分散して積立投資を行った場合の運用成果の実績【保有期間別(5年、20年)】(※1)

※1 1985年以降の各年に、毎月同額ずつ国内外の株式・債券の買い付けを行ったもの。各年の買い付け後、保有期間が経過した時点での時価をもとに運用結果および年率を算出している。ただし過去の実績をもとにした算出結果であり、将来の投資成果を予測・保証するものではない。
出所:金融庁資料より

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【後編】「人生100年時代に、長期的な資産形成は投資を味方に」はこちら

日経BPコンサルティング 金融コンテンツLab. 
ライター 萬 真知子

日経BPコンサルティング「金融コンテンツLab.」(https://consult.nikkeibp.co.jp/financial-contents-lab/)は、難しくなりがちなお金の話題を、わかりやすいコンテンツに仕上げることをテーマとして取材・情報発信にあたっている制作研究機関。月刊誌『日経マネー』編集部の在籍経験の長いベテランスタッフが中心となり、マネー系コンテンツを提供している。

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