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「双子の赤字」― 兜町カタリスト櫻井英明のここだけの株話

「双子の赤字」

そういえば・・・、
1980年代のアメリカに存在していた「双子の赤字」という懐かしい言葉が登場してました。
「双子の赤字」は、米国の財政赤字と貿易赤字の2つの共存のこと。
共栄ではありません。
ちなみに、2017年のモノの貿易赤字は、7962億ドルと9年ぶりの悪化水準。
一方、財政赤字は減税の影響もあり、2020年には1兆ドルを超える赤字見通し。
「双子の赤字は、米国経済のバランスが欠けていることを示している。市場にゆがみをもたらす」と、教科書的解釈。
1980年代のレーガン政権時代に起こったのが「双子の赤字」。
もたらしたのは1985年の「プラザ合意」での円高。
それに伴うカネあまりでのバブル。
うなだれた米国と胸を張る日本という構図でした。
この「双子の赤字」が解消されたのは1998年。
クリントン大統領の90年代には均衡に向かいましたが、ブッシュ・ジュニア大統領政権時代にも一時悪化したというのが歴史です。
面白いことに、レーガン政権の「双子の赤字」の時代に日本株はバブルを迎え、米国の経常収支の赤字が拡大した98年~2001年はITバブルの時代。
アメリカの赤字が増えると東京市場が元気になるという方程式はありませんが、そんな歴史が甦ります。
「大変だ」の声は、実は「こちらは大丈夫だ。こっちの水は甘いぞ」になるのかも知れません。
古くて新しい言葉が「米国の双子の赤字」なのかも知れません。

「黄金比率」

先日、ある専門家氏からの質問。
「櫻井さんも黄金比率は使われますよね」。
「いえ、まったく」とお答えしたら・・・。
「え?」と絶句され「どうしてですか」。
「原理原則がいまいち理解出来ないので」。
「でも、自然界でアチコチにある比率ですし、美しい形ですよ」。
それでも「でも使わないと思います」。
日頃使っている人にとっては、意外な返事だったのでしょう。
そもそも、黄金比率はデザインの世界からきた比率。
「ものを美しく見せるため」というのが大義名分です。
結果的に、ピラミッド、ミロのヴィーナス、パルテノン神殿などがその黄金比率で完成しているもの。
モナ・リザ、サグラダ・ファミリア、凱旋門、アップルのロゴ、ツイッターの鳥なども、そうだとされます。
美しさという点では、比類はないのでしょう。
でも、罫線が美しく見えると株が上がるという訳でもないでしょうが、価格の「支持帯」と「抵抗帯」を予測するテクニカル分析ツールとされています。
ちなみに、この黄金比率というのは、フィボナッチ級数とも呼ばれています。
1:1.618の比率。
だから61.8%とか、38.2%とかいう数値で、上昇・下落の極地を罫線で表現するのでしょう。
相場のネタはドコにでも存在しているのですから、自分が納得して信用するなら、それはそれでいいのでしょう。
面白いのは、第二黄金比率があること。
近似値は1:2.618ですが、話題になることはありません。
さらに、市場関係者は、ほぼ黄金比率しか言及しませんが、実は「白銀比率」というのも存在します。
数値では1:1.414。
これは、A版やB判など用紙のサイズ、風呂敷、法隆寺、菱川師宣「見返り美人図」など。
別名「大和比」ともいうそうです。
法隆寺、キティちゃん、ドラえもん、グーグルのロゴなどが該当するといわれています。
そして、第二白銀比率は1:2.141。
これも注目はされません。
欧米では螺旋から発生した「黄金比率」、日本では正方形から発生した「白銀比率」が好まれるというのが定説。
ちなみに、「青銅比率」は1:2.303。
「白金比率」は1:1.732。
どうして黄金比だけが突出して登場するのかは不思議なこと。
自分の好みのものを使えばよいとすれば、いろいろな数値を最適化して使えるようになります。

ちなみに、黄金比は「装飾」、白銀比は「実用」。
同様に「華美」と「簡素」。
「動」と「静」。
「拡大」と「相似」。
これは、西洋と東洋の違いなのかも知れません。

「未体験ゾーン」

株式市場に一度足を踏み入れると、未体験ゾーンに魅せられてしまう人は多いようです。
良い例が、バブル直前の1987年のNTT株の公募売出しで初めて株式投資に触れた主婦層。
あれから約30年。
「儲けた記憶」が忘れられず、ずーっと株式投資を続けてきた方が多いようです。
つまり、好むと好まざるとを問わず、株式市場というのはそれだけ魅力的ということでしょう。
上がる株が必ずあります。
下がる株も必ずあります。
下げを避けながら、それでも下げに見舞われ、でも上げの場面で儲けていく姿勢。
4,000近くある銘柄の中から自分の株を見つけ、それを糧に戦うのは指揮官の気持ちになれるかも知れません。
ある高名な作家は、朝から夕方まで短波ラジオを聞きながら日々戦ったという伝説があります。そこまでしなくてもよいとは思いますが、株式市場にどっぷりと浸ると風景が変わってくるでしょう。
何を見ても株に結びつけてか投げるクセがついてくるからです。
あの外食チェーンが流行っている、スーパーであれが売れているといった身近なことから始まって、国の政策の動向、海外情勢の読み、企業業績の行方など日々考えることは満載。豊富な情報を読みながら自分の戦略・戦術を策定する日々の連続は、間違いなく素晴らしいと思います。

 

櫻井 英明(さくらい えいめい)
ストックウェザー「兜町カタリスト」編集長

日興証券での機関投資家の運用トレーダー、「株式新聞Weekly編集長」などを経て、2008年7月からストックウェザー「兜町カタリスト」編集長。
幅広い情報チャネルとマーケット分析、最新経済動向を株式市場の観点から分析した独特の未来予測に定評があり、個人投資家からの人気も高い。

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