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「ゲン担ぎ」― 兜町カタリスト櫻井英明のここだけの株話

「ゲン担ぎ」

ある上場企業からお送りいただいた創業150周年の品物。
なかに入っていたのが虎屋の羊羹。
ある水曜日に、そのままストックボイスに持っていったあとの後場寄り前のランチタイム。
黒字に金のトラの重箱に入っていたので「底には小判が?」なんて声もありました。
ストックボイスのオフィスで、前後場のキャスターが4人。
揃って食したのが黒砂糖の効いた虎屋の羊羹。
美味だった。
その日の前場の日経平均株価は61円安。
「もし、後場プラ転したら、毎週虎屋の羊羹ですか?」なんて言っていたのが後場寄り前。
東証Arrowsスタジオに向かう途中、兜町日証館の入り口にある渋沢栄一翁の「赤石」を何気なく相方と撫でました。
第一国立銀行(現 みずほ銀行)、東京株式取引所(現 東京証券取引所)などの創立者として知られる、渋沢栄一翁の兜町邸宅に置かれていた由緒ある赤石。
これが昨年から鎮座しています。
ただ、石を触るなんてことで株価が上がる訳は当然ありません。
しかし、引けてみれば36円高。
羊羹がクローズアップされて「毎週羊羹?」と思いましたが、実は赤石を触ったことを思い出しました。
前場11銭安だった火曜日に気合を入れてストックボイス伝説「昼カレーの株高」に挑んだら、大引けは24円高で3日続伸。
単なるアノマリーに過ぎませんが、アノマリーは日々勝手に増えてくるものです。

ジンクスとかゲン担ぎ、吉兆を見出したい人は全国津々浦々にいます。
ある個人投資家さんは、「季節外れの桜の開花が相次いで、全国で350件と報道されました。
何年前の出来事かは忘れましたが、相場が悪くもたもたしているとき。
確か茅場町の霊岸橋のたもとの桜が咲いていました。
相場がそれから反転したような記憶があります。
今回も吉兆と見たいところです」。
なんでも株に結びつける人は多いですが、それこそ「サクラサク」の気持ちを味わいたい一心が伺えます。
「鎧橋のたもとでは、季節外れの向日葵も咲いていたました。相場の転換期では しばしば見られる現象です」。
そういう兜町人の声もあります。
あるいは・・・。
短い髪をわざわざ切りに行った投資家さん。
「下げた日の大引け後に理髪店に行くと反発する」というのがこの方のアノマリー。
あるいは、晩御飯に「とんかつとカキフライをあわせた」という投資家さん。
前場下げた日は「カツ丼」というのは結構有名なセオリー。
これを「牛丼」に代替する人もおられます。
ただ、「牛丼」の場合は「マーケットのブルである牛を食べてしまってはブルが減るから良くない」というプロもおられます。
それぞれの思いと願いと行動が凝縮されたのが株式市場という感じですね。

2019年のGWは10連休となるようです。
日本は休みすぎだろうという気もしますが、まあ数十年に一度のことだからと許しましょう。
しかし、4月27日(土)から振替休日の5月6日(月)までの10連休。
振替休日の翌日に再開ということは、5月7日(火)は10日間の休み明けの火曜前場と即座に予測できます。
ということは・・・。
過去10日分の朝刊を消化して解説しなければなりません。
振替休日の月曜が年に8回くらいありますから、3連休明けの火曜日に4日分の出来事を解説するという仕事は、因果なことに頻繁に起こること。
これも結構大変な作業ですが、10日分となると気が遠くなってきます。
GWとはいえ、世界動いているもの。
遭遇したくない火曜前場になるだろうというのが正直なところ。
とはいえ、10連休というのは、記憶では過去遭遇したことはありません。
その昔、12月28日が大納会で半場だった頃は、12月28日(土曜日)から1月5日(日曜日)までの9連休というのはあったハズ。
しかし、これも土曜が休みになった平成以降、かつ大納会が12月30日なる前のせいぜい1回か2回のこと。
10連休明けというのは、1949年の戦後の東証再開以来で初のことという可能性は大きいでしょう。
となると、おそらく数十年に1回あるかないかの歴史的イベントに遭遇するということ。
相場は世相を反映するものですから、そういう意味では良いめぐり合わせなのかも知れません。
せいぜい「吉兆」くらいに考えた方が良いのでしょうか。

「下がったときに」

「大きく下がったときこそ顧客に電話をかけまくる」。
これが古の証券マンの姿勢でした。
ただ、問題はありました。
それは・・・。
当時は希望的観測にバイアスがかかり、ただ「落ち着きと希望と明るい未来予想図」を提供していただけでした。
本来必要とされるのは、冷静な市場分析のはず。
とはいえ、これは当時の支店の営業マンレベルではなかなか難しいもの。
しかし、必要なことであることは間違いありません。
「営業マンもお客さんと同じように沈んでいてどうするんだ」。
そう叱咤激励する支店長もたくさんいました。
結果的に、バブル崩壊を除けば、希望的観測が当たってきたのが歴史。
それはそれで長い時間軸では間違いではなかったのかも知れません。
ブラックマンデーよりも前の1980年代前半のある秋。
まだ、日経平均株価が1万円未満だった時代に、日本株が大きく下げたときがありました。
その日の経済紙の夕刊のトップ見出しは、「SAMA日本株買いへ」。
サウジアラビア通貨庁が日本株を大々的に買う見通しと報道されました。
翌日の日経平均株価は、前日の下落幅を超える大幅反発。
「株は下げなきゃ上がれない」の典型的な事例でした。
だから「下げたときほど多くの会話」という習慣は、引き継がれてきたのでしょうか。
バブル崩壊とともに「営業マンとは話したくない」と言う投資家さんは増えてきました。
しかし、最近は「こういうときこそ相談したいのだけど・・・」という声がまた聞かれるようになってきました。
実は、証券マンの優位性は日々相場が移ろうこと。
昨日と同じ今日はないということです。
極論すれば、日々刻々移ろうのですから、いつも話題は新鮮。
日に何回も電話できるのは証券マンの特権でもありました。
「さっき買いましょうと言った株を今度は売りましょう」。
そう揶揄されることもありましたが・・・。

 

櫻井 英明(さくらい えいめい)
ストックウェザー「兜町カタリスト」編集長

日興証券での機関投資家の運用トレーダー、「株式新聞Weekly編集長」などを経て、2008年7月からストックウェザー「兜町カタリスト」編集長。
幅広い情報チャネルとマーケット分析、最新経済動向を株式市場の観点から分析した独特の未来予測に定評があり、個人投資家からの人気も高い。

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