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「お告げ」― 兜町カタリスト櫻井英明のここだけの株話

「お告げ」

私が金融法人担当のエクイティトレーダーをしていたのが1990年代後半。
当時、年末になるとトレーディングルームには「お告げ」なる1枚の紙が出回っていました。
作者不明の1枚の紙に記されていたのは、例えば、「平成十年相場予見」。
五七調の言葉と翌年の見通しでした。
特に根拠のない紙でしたが、金融法人のディーラーさんたちは何故かこれを欲しがりました。
「今年はもう来た?」。
12月の朝は、そんな言葉で始まっていた記憶があります。
ところが、この「お告げ」の紙は21世紀を迎える頃から歳末に出回らなくなりました。
寂しさを感じながら十年以上経ってみると、ふと懐かしさが。
でも、どこにもないので数年前から自分で作ってみることにしました。
大体11月の最終週には出来あがります。
作ってみてわかったのは、いい加減には作れないということ。
月の満ち欠けやイベントカレンダー、過去の相場の展開や十干十二支などチェックするものが結構あります。
そして、それを言葉に落とすのがまた厄介なこと。
最初に出来上がったのは2015年の11月でした。
でも、これって自分で作ってみると、結構役に立つことがあります。
それは、イベントやスケジュールがしっかり頭に入ること。
この先1週間ではなく、この先1年を頭にいれるのですから、結構な時間軸になります。
そして、ブツブツと途切れた相場観でなく、1年という流れで相場を見ることができるようになります。
しかも、過去の事例や値動きまでが頭に入ってきます。
新月・満月と株価の関係や月ごとの特色やアノマリー。
2年もやると、もうすっかりベテランになれるかも知れません。

★「平成丁酉(ひのととり)二十九年相場予見」

夕暮れ時の街明かり
そんな気持ちと裏腹に
丁酉の年の拡大路線
新常態の時到来
海に宇宙に伸び盛り

矛盾の先に光明あり
つき合いにくい銘柄も
そこに金が溶けている
外の力を梃子にして
小が大飲む下剋上

睦月  小動き
如月  持ち合い
弥生  下押す
卯月  小反発
皐月  乱高下
水無月 急落
文月  軟弱
葉月  往来
長月  上放れ
神無月 急伸
霜月  続投
師走  堅調 

★「平成戊戌(つちのえいぬ)三十年相場予見」

動き始めた相場の流れ
うちそと材料数あれど
戊戌の笑い駒
三つの変化が重なって
勢い増した輝きか

万物育成し保護されて
四季の変化の時到来
土に根をはり育つ株
拾う勇気と捨てる勇気
重なり合って伸びていく

1月 小動き
2月 上昇
3月 軟調
4月 小反発
5月 続伸
6月 下押す
7月 乱高下
8月 上放れ
9月 続伸
10月 一服
11月 足踏み
12月 堅調

★「平成己亥(つちのとい)三十一年、称元の年の相場予見」

上へ下へと繁茂の株価
絶好調の落とし穴
明るい太陽暗闇新月
多くの糸がもつれ合い
盛の相場も時には中庸

今だけ、カネだけ、自分だけ
買っているのは株・株価?
土を通って清流は
幽玄境地で濁流に
夜霧の空から次世代へ
孤高の樹木は真っ直ぐに立つ

「60年前」

世相も相場も60年を1周期とする考え方があります。
十二支と十干の最小公倍数が60ですから、あながち見当はずれでもないでしょう。
では、60年前の1959年に起こったことを見てみます。

皇太子結婚、パレードをテレビ中継
「週刊少年マガジン」「週刊少年サンデー」の同時創刊
西部劇ブーム
緑のおばさん登場
個人タクシーが登場
日本初のコンテナ専用列車「たから号」運転開始
細身シルエット流行
スキーブーム
Vネックの流行
ばら等の花柄とチェック柄流行
バンドエイド登場
種なしスイカ登場
テトラパック牛乳登場
ライスチョコレート登場
ベビーラーメン登場

60年後にはアニメとか、新しい食品が話題になるかも知れませんね。

その昔の京都二条河原の落書は「この頃都に流行るもの」。
これを「この頃市場に流行るもの」と言い換えてみるとこんな感じでしょうか。

「この頃市場に流行るもの」

この頃市場に流行るもの
売出し公募にアンワインド
トランプ政策アジアを睨み
夜討 早取引 経済指標は通過する
信用期日はどこ行った
俄指数に迷い者
安堵 収益 虚軍
本領離れて仮想通貨 
正念場に来た消費税
追従 讒人 禅律僧 
下克上するマーケット
(詠み人知らず)

マーケットは移ろう心理の戦の場。
過去の需給や現在進行形としての業績動向、そして紙芝居の罫線などは所詮昨日までのもの。
ほとんど言及されることはありませんが、本当に大切なのはきっと心理のべクトル。
明日がまぶしく輝いているのか暗く沈んでいるのか。
ということは、世相がどちらを向いているのかに大きく左右されるということ。
ところが、この世相というものは簡単には説明できないものですから誰も話題にはしないのでしょう。
誰が買ったとか売ったとか、どの業者がああだこうだ、裁定残が心配だ、消費税が上がるから、年末までの益出し売り。
それに付随して、もしも為替が円高に戻ったら、あるいは原材料高が圧迫感とか。
未来を語る悪材料は、いつも過去を消してくれる好材料を凌駕しているようです。

 

櫻井 英明(さくらい えいめい)
ストックウェザー「兜町カタリスト」編集長

日興証券での機関投資家の運用トレーダー、「株式新聞Weekly編集長」などを経て、2008年7月からストックウェザー「兜町カタリスト」編集長。
幅広い情報チャネルとマーケット分析、最新経済動向を株式市場の観点から分析した独特の未来予測に定評があり、個人投資家からの人気も高い。

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