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「AI」― 兜町カタリスト櫻井英明のここだけの株話

「AI」

東証で行われたストボ新春企画「投資のとびら」。
300名程度の参加者に聞いてみたのは・・・。
「100%当たるAIの売買指示があったと仮定してみて、その指示に従って売買しますか?」。
挙手されたのはパラパラと数名。
次に聞いてみたのは、「たとえ完全なAIがあっても、自分の考えで売買しますか?」。
半数以上が手を挙げられました。
株式投資は、本来「儲け」が第一義。
完全に儲かる手法があるならばそれに従う投資家が増える、というのが定説。
しかし、実務は違うということでしょうか。
ただ、「儲かればよい」のではなく、その投資に自分の存在、生き様が欲しいということ。
そして、投資では主人でありたいということ。
これが投資家さんの思考です。
市場は拝金主義が横行しているとみられがちですが、実際は大分違うような気がします。
ある意味ホッとした場面でもありました。
でも、「100%儲かるのなら、それでもいいか。という気もする。」というのが人情かも知れません。
同じ質問を翌週の熊本のセミナーでしてみました。
参加者は100名程度。
「AIが完全に儲かるなら、その指示に従う。」という投資家さんが10名程度。
「いやだ」という投資家さんが、やはり半数以上という結果。
ここでも「言いなりは嫌だ。投資には自分の希望を投映したい。」という反応。
そういえば・・・。
大昔に、証券外務員資格試験のために新人研修で教わったこと。
「株価の未来は不透明。だから、セールストークには『株のことですから、わかりませんけど』を付け加えなさい」。
これは「断定的判断の提供の禁止」の部分でしたが、本当にAIの投資法が完全になったら、どうなるのかというのは興味深いところです。
ただ、本当に完全な投資手法があると仮定すると、株価は売り買いどちらか一方通行になって、売り買いの株数が合致しないはず。
そんな世界では市場が成立するのかどうか。
これも興味深い近未来なのかも知れません。

「楽しむ」

「自分にとって楽しいこと、それを楽しめばいい。
楽しいこと。それが競馬だったらこの上ない喜び。
あくせくするのではなく、自分の好きな馬の単勝や複勝で楽しむ」。
山口瞳氏と赤木駿介氏の「日本競馬論序説」(新潮文庫)にそんな一節もあったような記憶があります。
パドックで全馬を見渡す。
後脚の運びに躍動感があり、その動きを妨げないように前脚がスッと前に出ている馬を探す。
前評判やオッズに左右されない、自分だけの勝負馬を見つける。
1レースは1,000円まで。
すべて外れても1日の損失は最大12,000円。
「負けたとしても達成感が残る」とされます。
競馬の核に据えているものは、お金ではないということ。
サラブレッドそのものの美しさや躍動感、レースの迫力に惚れ込むということ。
調教師、騎手、馬、その馬の世話をする厩務員が主役という思考法でした。
「競馬=ギャンブルとしてみていては、必ず身を滅ぼす。
データやバイブルに惑わされて、本質を見失う」。
これは、株の世界にも通じること。
「自分にとって楽しいこと、それを楽しめばいい。
楽しいこと。それが相場だったらこの上ない喜び」。
この域に達するには、相当な時間が必要でしょう。
でも、これって大切なこと。

「あらゆる可能性を排除しない」

数値というのは、断片的でなく複合的に見なくてはいけません。
お医者さんだって、きっと予断と偏見を持たずに診察するから病気を発見できるのでしょう。
最近よく目にするのは、「空売り比率の連続」という活字。
おまけのように付け加わるのは「空売りは買い戻して利益を確定させるため、いずれ買いが発生する」。
例えば、東証発表の日次の数字で空売り金額は概ね1兆円程度。
しかし、信用売残は7,000億円程度と、2016年8月以来の低水準まで行きました。
借株による空売りは考慮しなければならないでしょうが、どうも辻褄があいません。
空売りが多いのなら信用売残は増えなくてはいけないはず。
でも信用売残は減少していました。
つまり・・・。
日計りの空売りが多く、将来の買い戻し要因にはならない可能性は当然高いでしょう。
教科書的には、「空売りは将来の買い戻し要因」というのは間違ってはいません。
試験に出れば「正しい」が正解でしょう。
しかし、教科書だけで相場をはかると実務では間違うことも多いもの。
これは、お医者さんもたぶん一緒。
生身の人間や生身の相場を相手にしている以上、あらゆる可能性は排除すべきではないのです。
思い込みと錯覚は、大きな見落としに繋がってくるから注意が必要。
相場にも丁寧な診察が必要ということ。
極論すれば、「市場全体を見回し、あらゆる可能性を排除せず、総合的な判断をしなければならない。
そのためには、市場の息吹を感じ、市場参加者の息遣いと眼差しを感じること」。
これも結構難しいことですが・・・。

買いにしても売りにしても、半年後の未来予想図を描きましょう。
これがはじめの一歩。
そして、二歩目は「会社をよく知ろう」。
どこにあって、どんな会社で、何をしている会社ですか。
沿革や経営者はどんな感じですか。
これを知らずして投資はできません。
業績は良いですか。
売上と利益はどんな感じですか。
来期も伸びそうですか。
その会社の業態は社会が必要としていますか。
株価は上昇基調ですか、下落基調ですか。
上がったらいくらで売るか目標設定をしましょう。
まずは2割上昇、次は5割上昇でしょうか。
下がったときはどうしますか。
安いので買い増しますか。
戦いに負けたとして損切りますか。
損切るならいくらまで我慢しますか。
この繰り返しの経験から「記憶と自分のクセ」が生まれてきます。

 

櫻井 英明(さくらい えいめい)
ストックウェザー「兜町カタリスト」編集長

日興証券での機関投資家の運用トレーダー、「株式新聞Weekly編集長」などを経て、2008年7月からストックウェザー「兜町カタリスト」編集長。
幅広い情報チャネルとマーケット分析、最新経済動向を株式市場の観点から分析した独特の未来予測に定評があり、個人投資家からの人気も高い。

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