ここ数年、地震や水害などの自然災害のニュースを見聞きすることが増えました。いつどこで起こるかわからない災害は、決して他人事ではありません。前編では、災害に見舞われたときに役立つお金の知識をご紹介していきます。
被災した時、最初にすべきこと
各種支援を受けるためには罹災証明書が必要
災害発生時、最初にすべきことは安全の確保やけが人の救護、消防への連絡、家族や職場との安否確認などが考えられます。しかし、その後の生活再建に向けての動きとして重要になるのが、罹災証明書の交付を申請することです。罹災証明書とは、災害によって被災した住家の被害状況を市町村が調査し証明するもので、被災者生活再建支援金の支給をはじめとするさまざまな支援を受ける際に必要となります。被災後にはできるだけ早く申請をした方がよいでしょう。
罹災証明書を取得するために必要なもの
では、この罹災証明書の申請に必要なものは何でしょうか。所定の申請書や本人確認証はもちろんですが、罹災証明書を取得するにあたり必ず必要になるものがあります。それが「被害状況がわかる写真」です。これは損害を証明する重要な証拠となりますので、被災後できるだけ早く、片付けを行う前に撮影しておきましょう。なお、罹災証明書の申請には期限がありますので、必要書類と合わせて市町村に確認をした方がよいでしょう。
また、申請後の調査の結果によって支援の内容が決まるため、被害認定基準や調査方法について事前に把握しておくことも大切です。被害認定は「全壊」「大規模半壊」「半壊」に分類され、「災害の被害認定基準」に基づき、市町村が判断します。
災害に係る住家の被害認定基準
全壊 | 半壊 | ||
大規模半壊 | その他 | ||
①損壊基準判定 住家の損壊、焼失、流失した部分の床面積の延床面積に占める損壊割合 |
70%以上 | 50%以上 70%未満 |
20%以上 50%未満 |
②損害基準判定 住家の主要な構成要素の経済的被害の住家全体に占める損害割合 |
50%以上 | 40%以上 50%未満 |
20%以上 40%未満 |
出典:内閣府 防災情報ページ(http://www.bousai.go.jp/taisaku/pdf/gaiyou.pdf)
調査は二段階で行われ、第1次調査は外観目視調査、第2次調査は外観目視調査及び内部立ち入り調査を行います。第1次調査だけでは実情が伝わりにくい場合、申請をすることによって第2次調査が実施されます。申請が必要ということを覚えておきましょう。
被災時に現金を確保する手順
現金を引き出すために必要なこと
災害で預金通帳、キャッシュカード、印鑑などを紛失してしまった場合、預金口座から現金を引き出すにはどのような方法があるでしょう。
財務局と日本銀行では災害が発生した際、災害救助法・適用地域などの被災者に対し「金融上の措置」を講ずるように金融機関に要請します。その要請に基づき、銀行では、本人確認書類(その時点で有効な運転免許証、各種保険証、国民年金手帳、パスポートなど)が手元にあれば、預金の引き出しに応じるなど柔軟な対応を取ることがあります。東日本大震災の例では、特例として取引銀行以外の銀行窓口においても、本人の確認ができれば10万円の預金の払い出しに応じる対応をしました。
現金でもキャッシュレスでも、どちらにも対応する
現金を使わない支払い手段、いわゆるキャッシュレス決済として知られているのはクレジットカードや電子マネーです。最近ではこの2つの情報をスマートフォンに登録することで決済が可能となる、スマートフォン決済サービスの利用も一般的になってきました。被災時にこれらのサービスを速やかに利用できるよう、平時に準備をしておくとよいでしょう。とはいえ、災害時に停電が続けばキャッシュレス決済を利用できないことが想定されます。そのような状況に備えて多少の現金は手元に準備をしておきましょう。
被災時に活躍するSNS
災害時の情報取得・発信はSNSが役に立つ
災害時の情報取得・発信の手段としてSNSを使いこなせるようにしておくことは重要です。例えば、Facebookでは被災時に家族や繋がりのある友人に安否を報告できる便利な機能が備わっています。また、Twitterではオープンに情報を発信することができるため、拡散力が高く、支援や救助の要請を発信するのに適しています。情報の取得も簡単で避難場所の確認や災害情報収集に役立ちます。具体的には、災害情報を発信するアカウントをあらかじめフォローしておくことや、ハッシュタグ「#」機能を使うことで、必要な情報にアクセスすることができます。
このように大変便利なSNSですが、悪質なデマや誤った情報が混在していることを忘れてはいけません。SNSを使用する際には、拡散されている情報のアカウントが公式であるかなど情報の正確性を確認しましょう。
スマートフォンの充電の手段を知っておく
SNSの活用は、スマートフォンや携帯電話が使えることが前提です。そのためにも日頃から携帯用充電器を充電した状態で備えておくようにしましょう。また、災害時には通信キャリア各社が店舗で無料充電サービスを提供することもありますので、近隣の通信キャリア店舗の場所を確認しておくと安心です。
今や私たちの生活に欠かせないスマートフォンや携帯電話。これらが災害時には生命線になりえます。日頃から災害への意識と備えを忘れずに過ごすことが大切です。
日経BPコンサルティング 金融コンテンツLab.
プラチナ・コンシェルジュ 青山ユキ
日経BPコンサルティング「金融コンテンツLab.」(https://consult.nikkeibp.co.jp/financial-contents-lab/)は、難しくなりがちなお金の話題を、わかりやすいコンテンツに仕上げることをテーマとして取材・情報発信にあたっている制作研究機関。月刊誌『日経マネー』編集部の在籍経験の長いベテランスタッフが中心となり、マネー系コンテンツを提供している。 |
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