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被災時にも困らない 知っておきたい「お金」の話 (後編)

(写真=iStock by Getty Images)

災害の後、被災者を待っているのは生活の再建です。しかし、個人にできることには限界があります。だからこそ、国や民間企業がどんな支援をしているのかを知っておくことはとても重要です。後編では、生活再建に向けて知っておきたい支援制度をご紹介します。

【前編】 被災時にも困らない 知っておきたい「お金」の話  

生命保険・損害保険の対応

生命保険は特別対応の確認を

一般的な生命保険契約では、天災の場合、災害関係保険金・給付金を支払わない旨を約款上に明記されています。しかし、東日本大震災をはじめとする多くの災害でこの免責条項は適用されませんでした。このように、保険金の支払いが一定の範囲内で収まり影響が限定的である場合には、免責条項があってもそれを適用せず、災害関係保険金・給付金を支払う特別対応をする場合もありますので確認が必要です。

その他にも災害時の特別措置として、生命保険各社は保険料の払込猶予期間の延長、保険金・給付金・契約者貸付金の迅速な支払い、手続きの簡素化などの対応を行っています。もし、被災により契約を証明する手がかりがない場合でも、災害地域生保契約照会センターで契約照会が可能です。

損害保険を速やかに請求するために

損害保険で保険金を請求する際、所定の請求書のほかに罹災証明書や写真の提出を求められることがあります。保険金を速やかに受け取るためにも、被災後、損害状況のわかる写真を撮影し、罹災証明書の申請・取得をできるだけ早く行いましょう。

なお、被災により契約を証明する手がかりがない場合、損害保険については自然災害等損保契約照会センターで契約照会をすることができます。

被災時の労災保険、給与の取り扱い

仕事中の被災は労災保険の適用対象

仕事中に地震や津波に遭いケガをした場合、業務災害として労災保険給付の対象となります。また、仕事中に避難をしてケガをした場合も仕事に付随する行為とみなされ給付の対象です。通勤中の被災によるケガについては通勤災害として給付の対象となりますが、労働者災害補償保険法における通勤の要件を満たすことが必要です。

被災で会社が休業 給料はどうなる?

では、自然災害によって会社が事業を休止・廃止した場合、休業手当は支払われるのでしょうか。天災事変などの不可抗力による事業の休止・廃止は、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由」には該当しないと考えられるため、労働者に休業手当が支払われないことがあります。このような場合、雇用保険に6ヵ月以上加入しているなどの要件を満たしていれば、特別措置として雇用保険の基本手当を受給することができます。

軽減措置が適用される住宅ローン・税金

住宅ローンの返済負担の軽減措置

災害で住宅が全壊・半壊して住むことができなくなっても住宅ローンは残ります。それによって生活再建が困難になることも少なくありません。このような場合、被災者のローンの負担を軽減できるのが「自然災害債務整理ガイドライン」に基づいた債務整理です。

破産手続などの法的倒産手続きの要件に該当しても、債権者と債務者との合意と簡易裁判所での特定調停を経て、ローンの減額や免除を受けることができます。このガイドラインに基づく債務整理では、登録支援専門家による債務整理の無料支援があることや、財産の一部をローンの支払いにあてずに手元に残すことができるのが特徴です。

所得税の軽減措置

税金にも生活再建の支援として軽減措置があります。例えば、災害によって住宅や家財に損害を受けた場合、災害減免法によって所得税を軽減・免除することができます。

該当となるのは、災害があった年の所得金額が1,000万円以下かつ住宅または家財の損害金額(保険金などにより補てんされる金額を除きます。)がそれらの価格の1/2以上であった場合です。所得金額によって軽減される割合は異なり、所得金額が500万円以下であれば所得税は全額免除、500万円を超え750万円以下の場合は所得税額の1/2が軽減、750万円を超え1,000万円以下であれば所得税額の1/4が軽減されます。

生活再建に欠かせない公的マネー支援

知っておきたい主な公的支援制度

公的支援制度のなかでも、生活の基盤である住宅の被害に対する支援は重要です。被災者生活再建支援制度は、自然災害により住宅が全壊するなど著しい被害を受けた世帯に対して支援金を支給する制度で、被災者の経済的負担を軽減します。

支給額は住宅の被害程度に応じて支給する基礎支援金と、住宅の再建方法に応じて支給する加算支援金の合計額となります。

支援金の支給額
支給額は、以下の二つの支援金の合計額となる
(※世帯人数が1人の場合は、各該当欄の金額の3/4の額)

①住宅の被害程度に応じて支給する支援金(基礎支援金)

住宅の被害程度 全壊 解体 長期避難 大規模半壊
支給額 100万円 100万円 100万円 50万円

②住宅の再建方法に応じて支給する支援金(加算支援金)

住宅の再建方法 建設・購入 補修 賃借(公営住宅以外)
支給額 200万円 100万円 50万円

※一旦住宅を賃借した後、自ら居住する住宅を建設・購入(又は補修)する場合は、合計で200(または100)万円

出典:内閣府 防災情報のページより(http://www.bousai.go.jp/taisaku/seikatsusaiken/pdf/140612gaiyou.pdf

生活支援に向けた公的支援制度の活用

生活再建に欠かせないのが公的支援制度です。内閣府が用意している防災情報のページ(http://www.bousai.go.jp/taisaku/hisaisyagyousei/seido.html)なども活用し、いざというときに活用できるように、平時に内容を確認しておきましょう。

日経BPコンサルティング 金融コンテンツLab. 
プラチナ・コンシェルジュ 青山ユキ

日経BPコンサルティング「金融コンテンツLab.」(https://consult.nikkeibp.co.jp/financial-contents-lab/)は、難しくなりがちなお金の話題を、わかりやすいコンテンツに仕上げることをテーマとして取材・情報発信にあたっている制作研究機関。月刊誌『日経マネー』編集部の在籍経験の長いベテランスタッフが中心となり、マネー系コンテンツを提供している。

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