みずほ証券 公式チャンネル 8月のマーケット動向は?
Home / お金のコラム / 脳科学者中野信子が語る! 第2回 投資に必要な脳育とは!?(前編)

脳科学者中野信子が語る! 第2回 投資に必要な脳育とは!?(前編)

気鋭の脳科学者・中野信子先生に、脳とお金の関係について教えていただくシリーズ。第2回は、投資を成功に結び付けるヒントをうかがいます。日本人が投資に慎重なのは、なぜか。その慎重さを上手に生かすヒントについて、教えていただきました。

災害の多い日本では、慎重な遺伝子を持つ人が生き残れる

──前回までのお話で、日本人は「新しいチャレンジが苦手」だとうかがいました。投資にチャレンジしたくても、なかなか積極的になれないのはそのためなのでしょうか。

中野:脳の神経細胞にあるドーパミン受容体にかかわる遺伝子の影響で、日本人は「新奇探索性が高い人」が少ないというお話をしました。もう一つ、日本人の遺伝的な特徴として「不安傾向」が非常に高いということがあげられます。

第1回でもお話しましたが、脳内にはセロトニンという神経伝達物質があり、これが十分にあると安心感を覚え、やる気もでます。セロトニンの分泌量を調整しているのは、セロトニン・トランスポーターというたんぱく質。神経繊維の末端から分泌されたセロトニンを、もう一度細胞内に取り込む役割をしています。この数が多いほどセロトニンを使い回せるので、気持ちが安定する。逆に、少なければ不安を感じやすくなります。

セロトニン・トランスポーターの数は遺伝的に決まっているのですが、この数が少ない人の割合が日本人は約97%と、世界的にみても非常に高い。つまり、世界で一番不安になりやすい民族なのです。

──なぜ、日本人は遺伝的にセロトニン・トランスポーターの数が少ないのでしょうか。

中野:一つには、日本が災害の多い国だということがいえると思います。つまり、不安が高く、リスクになりそうなことはなるべく避けて、もしものときに備える人でなければ、生き残れなかった。例えば、水辺の近くに住んだ方が暮らしは便利かもしれませんが、大きな洪水が来ると生活にかかわります。「来年も天候はいいだろう」と楽観して、食糧を全部食べたり売ったりしてしまえば、翌年が日照りになったときが悲劇です。

また、災害の多い国では、共同体で生活することがリスクの軽減につながります。そうして一致団結して、協力しあうことで遺伝子を残してきたといえます。逆に、共同体を危険にさらすような冒険的な行為をする人、他の人の努力にフリーライド(ただ乗り)する人は、排除される傾向にあったでしょう。そうした排除の対象にならないよう、つねに慎重に、目立たないよう、不安を抱えながら周囲と合わせて生きることが、この国では生存に有利だったのです。

慎重派の日本人の投資は、工夫と成長が期待できる

──「不安傾向が高い」という特徴を、例えば投資という分野でうまく活かすにはどうしたらいいですか。

中野:例えば、コップに水が半分あるときに「まだ半分ある」と思うか、「もう半分しかない」と考えるか。「まだある」と思う人の方が楽観的、「もうない」と感じる人は悲観的で不安傾向が高いといえるでしょう。楽観的な人はプラスの面もありながら、現状に満足してそれ以上の努力をしないという点ではデメリットもあります。そうした視点から見ると、悲観的で不安傾向の高い人は「もう半分しかない」と思うからこそ、この状況を何とかしなければと工夫し、成長していけるというメリットを備えているといえます。

投資についていえば、そこそこの成果で満足して情報収集を怠ってしまうより、「○○円損をしてしまったから、次はどうすればいいか」と、地道にコツコツと努力をしたほうが、長期的にみてうまくいくのではないでしょうか。また、不安傾向の高い人は、「勝つ喜び」を脳に覚えさせることがポイントといわれます。まずは安全な範囲で、信頼できる専門家のアドバイスなども受けながら、少しずつ経験を重ねていってはいかがですか。

──セロトニンを増やす方法というのは、ありますか。

中野:セロトニンの原料となるのは、トリプトファンというアミノ酸です。赤身の肉やレバー、マグロなどの魚、乳製品、卵、大豆、落花生、ゴマなどトリプトファンを多く含む食品を食べるといいでしょう。生活は規則正しく、夜はよく眠り、朝はちゃんと起きて日の光を浴びるとセロトニンが体内で合成されるスイッチが入ります。適度な運動で身体を動かすこと、リラックスする時間を大切にすることも大切ですね。

後編では、投資に向かう心構えにも通じるお話をうかがいます。

(プロフィール)
中野信子氏
脳科学者・医学博士

1975年生まれ。東日本国際大学特任教授、横浜市立大学客員准教授。東京大学工学部卒業後、2004年東京大学大学院医学系研究科医科学専攻修士課程修了、2008年東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程終了。2008~2010年まで、フランス原子力庁サクレー研究所で研究員として勤務。『東大卒の女性脳科学者が、金持ち脳のなり方、全部教えます』(経済界)、『脳科学者からみた「祈り」』(潮出版)、『世界で通用する人がいつもやっていること』(アスコム)、『サイコパス』(文藝春秋)、『ヒトはいじめをやめられない』(小学館)など著書多数。 

日経BPコンサルティング 金融コンテンツLab. 
山田真理

日経BPコンサルティング「金融コンテンツLab.」(https://consult.nikkeibp.co.jp/financial-contents-lab/)は、難しくなりがちなお金の話題を、わかりやすいコンテンツに仕上げることをテーマとして取材・情報発信にあたっている制作研究機関。月刊誌『日経マネー』編集部の在籍経験の長いベテランスタッフが中心となり、マネー系コンテンツを提供している。

【おすすめ記事】
都銀、地銀、信金、信組……違いを説明できますか?
お金について詳しくなる「資格」3選
厳しい人口減少時代に突入へ……これからの日本経済はどうなる?
かかった後でも入れる? 「がん保険」が注目されている
教えてFPさん!将来に備えてお金を貯めるコツは家計の仕組み化?