みずほ証券 公式チャンネル 8月のマーケット動向は?
Home / マーケットを知る / 「要諦」― 兜町カタリスト櫻井英明のここだけの株話

「要諦」― 兜町カタリスト櫻井英明のここだけの株話

「要諦」

「株や投資家の世界を初歩から学ばなくてはならない市場関係者が多い」と、老練な市場関係者の言葉。
現場を知らないから、空理空論(くうりくうろん)が走り、相場の常識が歪むことを懸念しているのでしょう。
「行き過ぎもまた相場」や「付いている株価は、常に正しい」というのは、理解するのは難しいでしょう。
株価はどう決まるのかというテクニカルな課題ですら、答えられない場合にも遭遇します。
寄り値を正確に言い当てることは至難の技と化してしまいました。
「常識で考えて変なことは、アルファベットやカタカナで語られてもおかしい」というのが正論。
横文字に誤魔化されると、本来の常識を逸脱した説も正しく見えてくるから厄介です。
重要なのは「要諦を心得る」ということ。
今の材料は何で、相場変動のコアは何なのか。
これが要諦。
しかし、地球を一巡りして、外のものに材料を見つけて高級感を醸し出すから見えなくなってきます。
何とも相場はややこしいものです。
ところで・・・。
知られているようで意外と知られないのが株の約定(やくじょう)方法。
同じ株を同じ値段で売買注文を出しても、約定できる時とできない時があります。
それは「板寄せ」方式と「ザラバ方式」に分かれるからです。
寄り付きと引けは板寄せ方式。
板寄せとは証券取引所の売買成立方法。
相場が始まるときの始値を決める際などに使われる方式です。
かつては、その時点で出されている注文をすべて「板」と呼ばれる注文控えに記載。
まず、成行注文を優先し、次に指値の高い買い注文と指値の安い売り注文を突き合わせて、数量的に合致する値段(約定価格)を決めていく方法。
一方で、寄り後の相場の取引時間中(ザラ場)に、気配値をもとに、そのつど取引を成立させていく方法を「ザラ場寄せ」と言います。
つまり、寄り付きと引けは売り買いの注文を集めて価格優先で付け合わせるということ。
ザラ場では、注文が来た順(時間優先)に、売り指し値は安いもの、買い指し値は高いものを優先して(価格優先)、個別に売買を成立させていきます。
このため、「寄り付き」とは違って指値と同じ株価がついても出来ないことが生じるのです。
その銘柄についての参加者が多く、指し値注文が多いことを「板が厚い」、少ない状況を「板が薄い」、「板がない」などと言います。
板寄せ方式は、「特別気配(とくべつけはい)」が表示された時にも使われます。
特別気配は、決められている範囲を超えて株価が値動きする場合に表示される。
特別気配が表示されると、証券取引所は売買方式をザラバ方式から板寄せ方式に変更。
取引は即時に成立できなくなります。
昔は笛が鳴ったので「笛吹き」。
今は静かに「ト」とか、「特」とか、「S」などと表示されるだけなのが寂しいもの。
この「笛吹き」というもの。
バブルの頃は市場が活況だったので商い中断・板寄せがたびたび起きました。
当時は、立会場で主立った銘柄が取引されていました。
大量の資金を短時間で裁くことのできる大型銘柄にまとまった数量の注文が舞い込むケースがよくありました。
中断・板寄せの際には笛が吹かれました
支店から注文を出すと、不思議とこの「笛吹き」に引っかかったというのが記憶にあります。
当時は、今とは違って、発注から約定まで15分くらいはかかると言われていました。
短波放送とか会社の場電を聞いていると「ピー」と聞こえました。
「あ~板寄せだ」と何度叫んだことでしょうか。
今ではなくなってしまいましたが、営業マンの大半の電話は「今いくらです」と株価を伝えることでした。かかってくる電話も大半は株価の問い合わせ。
お客さんから「アレ買いたい、コレ売りたい」なんて電話は滅多にありませんでした。
そんな牧歌的な当時も多くの人が場味を見ながら商いしていたのでしょうから、これは今と一緒ですね。
板寄せになるまでに注文を出しておけば何の問題もなかったのでしょうが・・。
この決断に至る投資家心理というのも古今東西変わらないのだと思います。

「叩き続ける」

証券会社の支店には結構面白い人が棲息していました。
例えば、「株価端末(のキーボード)を叩き続ける人」。
叩き続けたからといって株価が上がる訳ではないのですが、場中ずーっとキーボードを叩き続けるのがお約束だった先輩。
そして、株価が新値を取ってくると大きな声で「〇〇が☓☓円」と、支店中に聞こえるように叫ぶのです。
たぶんこういう方々はたくさんいた筈。
昭和50年代以前は黒板に株価を書いていたそうですから、この
「叩く」人たちの多くは、それ以降に証券界に入ってきた方々でしょう。
今と違って、支店には株価を見ることができる電子端末は数人の営業マンに1台しかありませんでしたから、毎日がその奪い合い。
そんなクセが付いた人は、今でもエレベーターの階数ボタンを押し続けているのかも知れません。

「意地」

20世紀末まで残っていたのが毎月末の恒例行事としての「初日商い」。
聞いた話では、大昔の株式取引は月末決済の清算取引。
だから、月が変わると新規にスタートするという意味があったそうです。
それが残っていたのが「初日商い」。
先月までのことは一切忘れて(なんて無理でしょうが)、新たにロケットスタートいうモードでした。
しかもこの初日商いは2回ありました。
一回目は、受渡しベースの初日。
もう一回目は、本当の月の初日。
そういう意味では、月末、月初というのは結構たいへんな時期でした。
今では、銘柄を証券会社が推奨することはありませんが、当時は「今月の推奨銘柄」なんていうのがありましたから、推奨銘柄以外の銘柄を自由に営業マンが選択して、お客さんに話をするなんて結構たいへんなことでした。
例えば、「今月はA銘柄」と言っているときに同じ業種の「別のB銘柄」の買い注文をとってきても営業マンはあまり評価されませんでした。
実力があって、気合のある先輩の記憶に残る初日商いの行動。
今でも和やかに脳裏に浮かんできます。
前夜の初日予約で推奨していた銘柄は「鉄鋼株のA銘柄」。
しかし、1株も買いの予約注文が取っていなかった先輩。
翌日、先輩は周りから「どうするんだ」言われ、
「今からお客さんのところ行ってきます」、と言って外出。
13時半過ぎにこの先輩からかかってきた電話は、「櫻井、たぶん信用枠が空いた筈だから〇〇のお客様の口座で、B銘柄(別の銘柄)250万株を成り行きで買い注文出してくれ」。
営業課長経由で注文を受けた場電は、「え?A銘柄じゃなくてB銘柄ですか。
間違っていませんよね」。
と言いながらも「買い物でB銘柄 250万株買う」と電話。
支店長と営業課長の、あのときの顔は実に興味深かった記憶があります。
当時のB銘柄は90円程度の株価。
それでも2億円近い買い建玉になったのですから立派でした。
鉄鋼株の「A銘柄」と「B銘柄」がどう違うのかというと結構微妙でしたが、違う銘柄にしたことはこの先輩の意地だったのでしょう。

 

櫻井 英明(さくらい えいめい)
ストックウェザー「兜町カタリスト」編集長

日興証券での機関投資家の運用トレーダー、「株式新聞Weekly編集長」などを経て、2008年7月からストックウェザー「兜町カタリスト」編集長。
幅広い情報チャネルとマーケット分析、最新経済動向を株式市場の観点から分析した独特の未来予測に定評があり、個人投資家からの人気も高い。

【おすすめ記事】
日経平均株価とTOPIXの違い
ジブリが放映されると株価が動く? ジブリ世代の株式投資術
証券会社の歴史とビジネス
テクニカル分析とファンダメンタルズ分析の違い
株式相場と目利き― 兜町カタリスト櫻井英明のここだけの株話