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「花は盛りに」― 兜町カタリスト櫻井英明のここだけの株話

「花は盛りに」

吉田兼好法師の「徒然草」。
第137段は「花は盛りに月は隈なきをのみ見るものかは」。
この続きは「咲きぬべきほどの梢、散りしをれたる庭などこそ見どころ多けれ」。
株式市場も同様で、満開のサクラや雲のかからない満月だけが投資対象という訳ではないのでしょう。
これから咲き誇る蕾、満開に咲いて今は散っているものの、次の芽を育てている銘柄だって十分に投資対象。
でも「花は盛りに」となってしまうのは否定のしようがない投資心理。
咲かない花に水をやり続けることに耐えるのは、かなり難しいことです。

市場関係者の名言。
「世の中には二つのタイプの人がいる。
自信をもって生きている人と、おびえて生きている人である。
自信のある人は、憂鬱からも、不機嫌からも、不必要な懐疑からも自由である。
自信のない人は、自らの弱点の犠牲になる。
いざ、という時に存分に力を発揮する人と、
いざ、という時にひけこむ人がいる。
この決定的な違いは、どこから生まれるのか。
心の弱さは、どう克服すべきなのか」。
相場人として、これは核心をついていると思います。
所詮は「運」があるかないかに最終的には尽きるでしょう。
「運」を呼び込むか突き放されるかは、ココロの持ち方次第なのかも知れません。

「格言八策」

☆「値上がり株より商いの出来る株を買え」。

これはなかなか理解しにくい言葉。
ただ、数十億円程度のトレードを経験すると必ず納得できる言葉です。
1日に5万株しか売買のない銘柄を50万株買うときの辛さ。
自分の買いで株価は上がり、自分の売りで株価が下がる。
こんなことでは投資自体が覚束ないことは必定。
もっとも、上昇してくれば商いを伴うものでもあります。
要は、たとえ小口の商いでも「流動性」の問題には常に注意が必要ということ。

☆「優良株信仰を捨てよ」

「良い株」という定義が非常に曖昧なので、「優良株」という定義も曖昧。
「儲かる株」が「優良株」。
誰が見ても非のつけどころがない銘柄でも、上昇しなければ優良株ではないでしょう。
そして、売り方にとっては悪材料満載の銘柄ほど「優良株」という逆説も成立します。

☆「理屈と人気から離れよ」

専門家氏の滔々(とうとう)とした相場論、あるいは材料話法。
これがしばしば理路整然と間違うのは経験則。
そして、人気沸騰銘柄への商い集中以降の株価推移は「宴の後の悪魔」的動き。
これに乗らない戦法こそ勝利への近道。

☆「貧乏神を呼ぶ過剰売買」

相場で登場して欲しくないのは、当然ながら貧乏神。
過剰売買が必ずしも貧乏神を呼ぶとは限りません。
しかし、よく遭遇するのは「売った銘柄が上がり、買った銘柄が下がる」。
資金枠一杯での投資では、かなり高い可能性でこうなることが多いもの。
必要なのはお金と心の余裕ということです。

☆「株価は企業の将来を映す鏡」

そう言われれば、頭脳では理解するもの。
しかし、体が理解したかどうかは微妙。
「将来を買っている」と言いながら目先の株価動向に一喜一憂するのが常。
だったら、将来を買っているなんて言い訳をせずに目先の動きに期待しているということを馴染ませるべき。
目先株価動向が堅調なときには「将来を買っている」、なんて言葉は決して登場しません。
本来的な意味で「将来を買う」のなら、それはそれでとても大切な動作になります。

☆「相場の極地は手仕舞いにあり」

「相場に勝つのは売り上手」という言葉があります。
確かに買うときには相当な準備をして臨場するのに比べ、売って手仕舞うときはほぼ準備なし。
本来は買い4割、売り6割程度の細心さと用意周到な売りシナリオが望まれます。
買いではなく、売り場面の想定をした方がパフォーマンスは上がるような気がします。
買った途端に塗炭の苦しみ、あるいは買って満足では話になりません。

☆「売り損ないの後悔は苦痛」

「後悔に二つあり」と言われます。
一つは、もう少し待てばまだ利益が乗ったのに、下げの不安から売り急いでしまって儲け損なったときの後悔。
もう一つは、株価が上昇したのに売り惜しみしているうちに、株価が下がりはじめ売り場を失い、あげくの果てに損失まで出してしまったときの後悔。
二つ目の後悔は、利益を出せたはずなのに気がつけば損失。
これは泣くに泣けません。
上昇の極地を待って下げ始めたら即刻売る、というスタンスの方が逸失利益は少ないかも知れません。

☆「一割三割」

株価の決定要因で影響の大きいものは、需要と供給のギャップ。
需給バランスに1割のギャップが出ると、株価の変動幅が3割になるという意味です。
解釈すれば、好材料が出たときに、買いが5%増え、売りが5%減り、需給のギャップが10%になったとき株価は30%押し上がるということ。
少しのバランスの変化が大きな株価インパクトになるということ。
需給ギャップによる大幅な株価上昇を市場全体の動きと思い込んではいけないという教訓です。なかなか難しいですが、冷静な判断こそ転ばぬ先の杖になります。

 

櫻井 英明(さくらい えいめい)
ストックウェザー「兜町カタリスト」編集長

日興証券での機関投資家の運用トレーダー、「株式新聞Weekly編集長」などを経て、2008年7月からストックウェザー「兜町カタリスト」編集長。
幅広い情報チャネルとマーケット分析、最新経済動向を株式市場の観点から分析した独特の未来予測に定評があり、個人投資家からの人気も高い。

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