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「この時期は」― 兜町カタリスト櫻井英明のここだけの株話

「この時期は」

「株価」というものの根源は企業の行動結果および行動予測。
したがって「株価」を取り扱っているという性質上、どうしても取材というものが必要になります。
数千に及ぶ企業を逐一フォローするのは不可能。
それでも時間を積み重ねることによって、かなりの数。
決算発表の時期のこの時期。
決算説明会やらアナリスト説明会やらの召集通知が怒涛のように押し寄せることになります。
全部に出席することは難しいですが、それでも可能な限りに出席するようにしてはいます。
ただ、この一般的な説明会というのが、結構形式的でつまらないもの。
出席者の大半は当然ながら事前に決算を掌握してから出席するもの。
「わざわざ添付資料に決算短信をいれなくてもほとんど文句はでませんよ」。
一度ある企業のIR担当者に申し上げたらビックリしたような顔。
誤解や錯覚、思い込みというのは、どこにでもあるものですが・・・。
それにしても・・・。
企業取材をする人はようやく増えてきました。
以前は個別銘柄の分析をする市場関係者は、決算短信とチャート頼みというケースが散見されました。
「街に出よう」とは言いませんが、少なくとも「現場の声を少しは聞きに行こう」に変化してきたような気がします。
現場の雰囲気、現場のムードが反映されていないと市場はますます無機質になっていくような気がしてなりません。
決算数字は過去の結果。
重要なのは、そこに至ったプロセス。
結果である業績と結果であるチャートだけでは、その先に進めないでしょう。
紙を見る上で重要なのは「行間を読む」こと。
たった1行のために企業の財務経理やIRの担当者は血のにじむような努力をしているのです。
「行間を読むなんて無理」と思われるかも知れません。
でも、何年も続けてウォッチしていると、ある日、行間から新たな言葉が浮かび上がってくる可能性はあります。
いろいろな意味で、市場関係者の責務は「日々行商」。
例年この時期は、重い背嚢に夢と希望を詰めて企業訪問というピクニックに出かけることにしています。

「売買高は売り買いいっしょ」

「買いが多いから株価は上がる、売りが多いから株価は下がる」。
フツーはそのような解釈で理解されます。
しかし、よく考えてみれば毎日売りも買いも同じ株数同じ金額が売買されているのが株式市場。
その証拠に、例えば東証の1日の売買高の10億株というのは、売り10億株、買い10億株のこと。
よく5億株の売りと、5億株の買いで、都合10億株と理解される方がおられますが、これは錯覚。
板の端末を見てみれば、売りと買いが1,000株約定すると、出来高は1,000株増加します。
市場での売りと買いは常に等しい量ということです。
つまり、絶対量は変わらないのですが、相場の上へのベクトルを見込んで上値を買う人がいるかどうか。
あるいは、下へのベクトルの見通しを持って下値を売る人がいるかどうか。
この違いが株価の上下変動になるということ。
観念的ですが、これが相場の現実なのです。

「自分の取引では買えば下がるし、売れば上がる」。
これもよく聞かれます。
少しでも安く買おうとして下の指値で買えてしまうということは、株価のトレンドが下向きだから。
逆に、少しでも高く売ろうとして上の指値で売れてしまうということは、株価のトレンドが上向きだから。
だから、下げトレンドで買えてしまい、上げトレンドで売れてしまうのです。
当然、買えれば下がるし、売れれば上がることになります。
これを悔やんでも仕方のないこと。
相場はもともと非合理的な場所。
どんなに業績がよくても買われない銘柄がありますし、どんなに業績が悪くても買われる銘柄があります。
そして、3日上がったからもう下がるだろうと思うとまだ上がるし、5日下げたからもう上がるだろうと思うとまだ下がることもあります。
このリズムを会得できればよいのでしょうが、なかなか難しいもの。
業績や罫線を頼りにするよりも、短期的にはリズム感を育てることの方が儲けやすい場所かも知れません。

個人的に思う「株病の兆し」。
半分以上該当することは滅多にないでしょう。

「株病」の兆。

(1)仕事中でも必ず株価のチェックを行う。
(2)売買が出来ないとイライラする。
(3)値動きの少ない銘柄はつまらない。
(4)「次はこの銘柄らしい」と聞くと、とりあえず買ってしまう。
(5)借金して売買している。
(6)全財産を株に向けている。
(7)「株で損したら、取り戻すのはもちろん株だ」と当然のように思う。
(8)お店で思わず「成り行き買いで」と言ってしまう。
(9)ゴルフのハーフを終えて「前場は45」と言ってしまう。
(10)約束を取り消すときに「マルにしてください」と言ってしまう。
(11)嫌いな人が会社から帰宅のために退社すると「アク抜けだ」と言ってしまう。
(12)飲み屋で「寄り付きはナマ中、大引けは茶漬け」と注文する。
(13)寝言で「ストップ高」とつぶやく。
(14)嘘の話を「風説」と言ってしまう。
(15)「クジラ」は「極洋」、「トランプ」は「任天堂」と思って何の疑問も抱かない。
(16)企業名を目にすると自然に銘柄コードが脳裏に浮かぶ。
(17)エベレストを眺め、「行って来いの形ですなぁ」と言ってしまう。
(18)南アルプスの稜線が「バブルの頃の日経平均のチャート」に見えてしまう。
(19)谷底を見つめ「あそこで買えたら」と嘆いてしまう。
(20)相撲の番付を「格付け」と口走ってしまう。
(21)ブラックコーヒーを頼む時に、つい「・・マンデー」、「・・・フライデー」と頭に浮かんでしまう。
(22)「今日のトピックス」というニュースを聞いてつい「幾ら」と言ってしまう。
(23)競馬で馬群が第3コーナーに差し掛かるところで「さぁ大引けです」と言ってしまう。

 

櫻井 英明(さくらい えいめい)
ストックウェザー「兜町カタリスト」編集長

日興証券での機関投資家の運用トレーダー、「株式新聞Weekly編集長」などを経て、2008年7月からストックウェザー「兜町カタリスト」編集長。
幅広い情報チャネルとマーケット分析、最新経済動向を株式市場の観点から分析した独特の未来予測に定評があり、個人投資家からの人気も高い。

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